見出し画像

【創作童話】あなあきホロとひびわれココ④ ヒビと日々

“すれ違い”の果てに、ホロとココは再び出会いました。
けれど、その出会いは“痛み”の中で訪れました。
――これは、想いと行動で“カタチ”を取り戻していくお話です。




その夜。

ココとホロは、オトの部屋にいました。

ホロはココのヒビを抑えるため、穴を小さく保ったまま眠っています。
ココは眠くはありませんが、ホロが寝ているので、ベッドの上――ホロの穴の中から、ただ天井を見上げていました。

「それ、寝てるのかな? 気を失ってるのかな?」
笑いながらオトが言いました。

「そう言わないでよ。なんだか申し訳ない気持ちになる」

「そうだね。でもホロは、自分の意思でそうしたんじゃないかな?」

ココは何も答えません。

「ホロはすごいね。“カタチ”を変えられるなんて、初めて見たよ」
「力むと固くなるのは知ってたけど……」

オトは寝ているホロの体を、そっと手をのせました。

「いいなぁ。ココのヒビが埋まったら、代わってみたい気もするな」
「だめだよ!」

ココは大ケガを忘れて、大声を出しました。

「冗談だよ。"カタチ"に悪い、大声は、ね」

今度は小さな声で、
「オトが入ったら、角が刺さっちゃうでしょ?」
そんなココの言葉に、
オトはクスクスと笑いました。

「ココの欠片は、みんなが探してくれたおかげで、ほとんど埋まったよ。
ヒゲのじいさんに聞いたら、あとは自然に馴染むだろうって」

「うん」

「でも、凹んだところがどうなるかはわからない……。
けどまあ、“カタチ”を失わなくてすんだね」

「んん」と声がして、ホロが目を覚ましました。

「……オト?」

「おはよう」
ホロの穴の中から、ココが声をかけました。

「あ、ココ。大丈夫? あ……おはよう」

「ん、とりあえず二人とも無事そうだね」
オトが言うと、ホロが体を起こそうとしました。

「いやいや、そのままおやすみよ」
オトが言いました。

あらためて天井を見たホロが、
「……この部屋は?」
と聞くと、
「オトの部屋だよ」
とココが答えました。

「オト、ありがとう」
ホロがそう言うと、オトは「おやすみ」とだけ言って、部屋を出ていきました。

静かになると、ココがあらためて言いました。
「ホロ、ありがとう」
「うん、無事でよかった」

「しばらく、お世話になってしまうけど……」
ホロが黙る間も、ココは動けず、ただ天井を見ていました。

「一緒にいられるし、お話もたくさんできそうだね」
ホロがそう言うと、
二人は静かに笑って、眠りにつきました。



翌日から、
ふたつでひとつの生活が始まりました。

初めのうちは、ほとんど寝たきりでした。
ホロが体を固めて動けなかったのと、ココの体がまだ脆かったからです。

けれど数日経つと、
ホロは穴を固めたままでいることに慣れ、
ココの体もカケラが馴染みはじめ、
ホロはココを穴に入れたまま歩けるようになりました。

ちょっとしたことでも、ココはホロに頼まなくてはなりませんでした。
徐々に。ココの口数は減っていきました。

ホロは「気にしなくていい」と言ってくれましたが、ココは謝ってばかりでした。

そんなふたつを見ていたオトの提案で、
外に出るようになりました。

オトに助けられながら、ホロの好きな場所へたくさん行きました。
日向ぼっこをし、花を見に行き、
川の土手で休み、よく話し、よく笑う日々。

そんな日々が、ココのヒビを少しずつ埋めていきました。



その日も、オトとホロとココは野原に向かっていました。

オトがココの体をそっと触りながら言います。
「うん、だいぶよくなったんじゃないかな?」
「ほんとに?」

「よかったね」
ホロが言うと、
「ありがとう! ホロのおかげだよ」

「もう自分で歩けるかな?」
ココが聞くと、オトが答えました。
「少しなら大丈夫じゃないかな?」

「じゃあ、野原に着いたら出てみる?」
ホロが提案すると、ココはオトを見ます。

「少しだけだからね」
「やったー!」

ココが動けないので、
ホロは代わりに小躍りしました。
力んでいたからか、“カタチ”はぴたりと動きませんでした。



野原に着くと、慎重にココをホロの穴から出しました。

ココの体には、まだヒビが残っていました。

ゆっくりと腰を下ろすと、
久しぶりに、太陽を、風を体で感じました。

「ふふふ」

ココが笑うと、ホロもつられて笑いました。
少し離れたところで、
二人を黙って見ていたオトが言いました。

「今日は大声で笑ったりしたらいけないよ?」
「わかってるよ」

ココが答えると、横にいたホロが、
「ふぅーーーー」
と大きく息を吐きました。

久しぶりに力を抜いた体は、たゆーんと緩みます。

「やぁ、気持ちいいね」
「ほんとだね」

ひさしぶりに目を合わせてクスクスと笑いました。
「大丈夫?」
と聞くホロに、ココは笑顔を作って答えました。
「あ、そうだった。静かにね」
そう言うと、
風でほわんと体をゆらしながらも、
ホロは静かに日を浴びていました。

「うーん」
ホロの体を眺めていたオトが、
ツンツンとつつきました。

「わっ……なに?」
「なんか不思議でね」

くすぐったくて困った顔のホロを見て、
オトはイタズラっぽく笑っていました。

ココもつつこうとしましたが、
「ココは動いちゃダメ」

と、オトとホロに同時に言われ、
ココは静かに二人を眺めていました。

「そろそろ帰ろうか」
オトがそう言う頃、
ホロはぐったりしてましたが、ココを優しく穴に入れると、

「フン!」

と力んで、穴を縮めてココをしっかり抑えました。

「ありがと」
「今日は楽しかった?」
「うん!ホロの困った顔が」
「あれはオトが悪い」
「あはは、ごめん、ごめん」

そんな話をしながら帰りました。


【つづく】


🌙 ホロココは毎週土曜日更新

前の話  

次の話  

📘 第一話はこちら  

🗂️ ホロココまとめ  




🕊️ 作者プロフィール
心の余白に、物語を。
少し昔の話、どこにもない国の話を紡いでいます。

物語の見やすさや挿絵には、AIの力を少し借りています。
言葉の奥にある“やさしさ”を、ひとつずつ形に。

いいなと思ったら応援しよう!