【創作童話】あなあきホロとひびわれココ① 出会いとちがい

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生まれた“カタチ”がすべての国で、
穴のあいたホロと、完璧な“カタチ”のココが出会いました。
――これは、“ちがい”からはじまる、やさしいお話です。
『あなあきホロとひびわれココ』
ここではない不思議な国。
そこでは、いろんな“カタチ”たちが暮らしています。
“マル”、“サンカク”、“シカク”……
めずらしいものだと、“ホシ”や“シズク”もいます。
この国では、生まれたときの“カタチ”こそが誇り。
みんなそれぞれ、自分の“カタチ”をたいせつにしていました。
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ココは、“マル”の中でもとびきり見事な“マル”でした。
ひとつの歪みもなく、コロコロとよく転がります。
“マル”たちの転がり競争では、いつだって一番でした。
ある日、ココは大好きな日向ぼっこをしに、野原へ出かけました。
そこで出会ったのは、大きな丸い体にぽっかり穴のあいた――ホロでした。
ホロの体は、穴が空いているせいで、どこかふにゃふにゃとしていて、“カタチ”が安定していません。
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「こんにちは」
ココが声をかけると、ホロはぐにゃりと体をねじって振り向きました。
「ああ……こんにちは」
「あなたも、“マル”なの?」
「むかしはね。でも、この穴があいてから、“マル”ではなくなったんだ」
ココはホロの隣に、ころんと座りました。
「“マル”のココだよ、よろしくね」
「よろしく。ただの……ただのホロだよ」
それだけ答えると、ホロはココから視線を外し、前を向きました。
少しの沈黙のあと、ココが聞きました。
「あなたは“マル”でしょ?」
ホロは正面を向いたまま言いました。
「この体はやわらかすぎて、“カタチ”とは呼べないよ」
ココが改めてホロの体を見ると、ふにゃふにゃとしていて、確かに“カタチ”と呼ぶには不安定です。
「そう……なのかな」
そう言いながら、ココも正面を向きました。
そうして、ホロもココも、
ただ、無言で遠くを眺めました。
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「やれやれ」と小さく呟いてから、今度はホロから話しかけました。
「日向ぼっこ、好きなの?」
ココは勢いよく振り返り、答えました。
「好きだよ。とても気持ちがいいから」
「……うん、気持ちいいよね」
ココは大きく深呼吸をして言いました。
「初めて来たけど、素敵な場所だね」
「うん。お気に入りなんだ」
ホロは、少し照れくさそうに笑いました。
「そっか」
「そうなんだ」
それからは、同じ無言でも、心地の良い日向ぼっこになりました。
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またしばらくして、今度はココがたずねました。
「ねえ、なんでそんな穴が?」
「知らないの? 大さわぎだったけど……そうか、ココはまだ若いんだね。昔のことだよ」
「そうなんだ。でも、あなたは“マル”だよ」
「そんなことはないさ」
「そんな小さな穴、気にすることないよ」
「この大きな穴が? 君の体より大きいよ」
ムッとしたココが、立ち上がりました。
「そんなに小さくない! ホロ、ちょっと動かないで!」
そう言って、ココはホロの穴に腰を下ろそうとしました。
けれど――
スコーンッ!
ココはホロの体をすりぬけて、うしろに転がりました。
「あれ?」
「だから言ったじゃないか。君は見たことがないくらいきれいな“マル”だけど……とても小さいから」
「小さくない!」
ココはむくれた顔で言いましたが、すぐにくすっと笑いました。
ホロもつられて笑いました。体をたゆたゆとゆがませながら。
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ココが立ち上がるのを、ホロは手をのばして助けました。
「何年ぶりに笑ったかな」
「笑うの、ひさしぶりなの?」
「いつもひとりでいるからね」
「そう……また一緒に日向ぼっこしようよ」
ホロの苦手そうな笑顔に、ココは満面の笑みで返しました。
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翌る日。ホロとココはまた野原で会いました。
「今日もいい天気だね」
「今日もいい天気だね」
互いがそう言うほど天気は良くありませんでしたが、
ホロとココは野原に並んで座り、時間を共にしました。
「ねえ。みんなの所にはいかないの?」
「……あまり行きたくないな」
「なんで? 穴が空いているから?」
ホロはゆっくり立ち上がりながら、
「穴というよりは、カタチかな……ぐにゃぐにゃしてるだろ?」
小さく跳ねて体を揺らします。
「止められないの?」
「力めば止められるよ……フン!」
ホロが力むと、揺れていた体がピタッと止まりました。
「すごい! ほら、あなたは立派な“マル”だよ」
ココは小さく拍手しました。
ホロは何も言わず、じっとしていました。
「……ホロ?」
「………………」
「怒ってるの?」
心配そうにホロの顔をココは覗き込みました。
その時――
プゥー!
と音が鳴りました。
「ぷはぁ! おなら出ちゃった!」
ホロが言うと、しばらく固まっていたココが、
「あはははは」と笑い出し、ホロも楽しくなって笑いました。
しばらくの間、二人は笑い転げていました。
笑いが落ち着いて、ホロが言いました。
「かなり力んでいないと、カタチが保てないんだ」
ココはまだ笑いを引きずりながら言いました。
「ふふ……ふふふ……そうなんだね。ホロは楽しくて優しいのに、気にしなくていいのに」
それでも最後の言葉は笑わずに伝えました。
「ありがとう」
ホロは素直にお礼を言いました。
「良いこと思いついた! また明日ね!」
ココはそう言って帰っていきました。
ホロは、影が長くなるまで、その場所に座っていました。
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【つづく】
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🕊️ 作者プロフィール
心の余白に、物語を。
少し昔の話、どこにもない国の話を紡いでいます。
物語の見やすさや挿絵には、AIの力を少し借りています。
言葉の奥にある“やさしさ”を、ひとつずつ形に。
