#92 Official髭男dism「Universe」が描く躍動と温もり
## **導入:一音目から心を掴む、銀河の始まり**
Official髭男dismの「Universe」を初めて耳にした瞬間、多くの人が感じるのは――あのイントロのピアノが描く“空気の変化”でしょう。🎹
ピアノの鍵盤が軽やかに跳ね、まるで宇宙の入り口に足を踏み入れたような高揚感が生まれる。それは決して派手すぎず、むしろ包み込む温かさと、同時にキラリとした緊張感を併せ持っています。
この曲はただ耳触りがいいポップスではありません。メロディはすっと体に馴染むのに、伴奏のリズムはブラックミュージック特有のハネを持ち、聴くほどに小さな発見が重なる構造。結果として、BGMのように流しているだけでも心が踊り、集中して聴けばアレンジの巧みさに驚かされる。そんな二面性が詰まっています。
---
## **背景:髭男サウンドの進化と「Universe」の位置**
Official髭男dismは、デビュー当初から洋楽的なコード進行やジャズ/ソウル由来の和声感をポップに落とし込むことで注目されてきました。
特に藤原聡のピアノは、和音をただ支えるだけでなく、曲全体の空気を“設計”する役割を果たしています。
「Universe」は2021年、映画『ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』の主題歌として発表されました。
ドラえもん映画は音楽との親和性が高く、「友情」「勇気」「成長」というテーマを毎回描きます。髭男は、そうした普遍的なテーマを自らの音楽的個性と見事に掛け合わせ、「子どもでも口ずさめるメロディ」と「音楽好きが唸るリズム・ハーモニー」を同時に成立させました。
映画の舞台である宇宙=未知の世界。それはまさにこの曲の構造にも表れていて、聴き手は無意識に“旅”をさせられているのです。
---
## **ジャンル間のつながり:ポップス×ブラックミュージックの対話**
この曲の大きな魅力は、表面的にはJ-POPの王道に見えて、その足元ではブラックミュージックのDNAが確実に息づいている点です。
1. **ハネるリズム(スウィング感)**
伴奏のドラム&ベースはストレートな8ビートではなく、シャッフルに近いグルーヴ感を持っています。こうしたリズムはジャズ、R&B、ファンクなどにルーツがあり、重心を少し後ろに置くことで、自然なノリと軽やかさを生みます。
楽器経験者なら、右手と左手、あるいはメロディと伴奏の「タイム感のズレ」に着目すると、この曲の呼吸がより鮮明に感じられるでしょう。
2. **和声の遊び**
メロディは耳を掴みやすい範囲で動く一方、コードにはセブンス、ナインス、時にテンションコードが用いられます。この“色味”が曲に奥行きを与え、ポップでありながらジャズ的な包容力を作り出す。
これはStevie WonderやEarth, Wind & Fireのようなソウル・ポップの名曲にも通じる発想です。
3. **物語性ある構成**
Aメロで優しく始まり、サビで視界が開け、ブリッジで一度立ち止まる――という展開は映画的です。まるでカメラが宇宙船の窓から外の星々を見せ、次に仲間との会話を映し、そして再び広大な宇宙へと飛び立つよう。
音楽と映像の親和性を最大限活用した構成と言えるでしょう。
こうした要素は、髭男が得意とする「聴きやすいけれど、構造は凝っている」手法の集大成であり、ポップスの中でブラックミュージックの旨味を活かす見本ともなっています。
---
## **まとめ:銀河の先にある音楽へ**
「Universe」は、“聴きやすさ”と“深み”が理想的に共存する曲です。
楽器経験がある人は、リズムの置き方やコードの色彩を意識して聴くことで、まるで曲の中を歩いているような感覚が得られるでしょう。耳で楽しみ、分析で楽しみ、そして何度聴いても新しい表情に気づける――そんな持続性こそ、この曲が愛され続ける理由です。
そして、この曲がジャンルの境界を越えていることは、次の音楽探求への扉にもなります。もし「Universe」のグルーヴに心地よさを感じたなら、70〜80年代のソウル/R&Bや、現代のネオソウル(例えばCory WongやEmily Kingなど)も、きっとあなたの耳に新鮮な刺激を与えてくれるはずです。
🌌 **提案**
今夜、ぜひ「Universe」をヘッドホンでじっくりと聴いてみてください。
ピアノの粒立ち、ベースの揺らぎ、ドラムの呼吸を捉えながら、音の銀河を旅する――その体験が、次に見る映画や聴く音楽を、きっと少し違ったものにしてくれるでしょう。
---
