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放射線が衛星と今後の宇宙ビジネスに与える影響

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〜8月23日 07:30

今回の衛星ディープダイブでは、本編で触れた宇宙環境の中でも「放射線」について詳しく見ていきます。



そもそも放射線って?

専門的に言うと、放射線は2種類に分かれます。
「電磁波」と「粒子」です。

こう書くと難しそうなのでわかりやすく説明してみます。

「電磁波」とは、わかりやすく言うと光や電波のことです。
放射線は、光よりも周波数が高く、より強いパワーを持っています。
そのため、量が多くなると人体や物、特にプロセッサなどの半導体に悪影響を与えます。
身近な例として、レントゲンやCTスキャンで使われる「X線」があります。
このX線も「電磁波」に分類される放射線で、人体に悪影響がない範囲で医療用に使われてるのです。

次が「粒子」です。
ただ、「粒子」と言ってもホコリや黄砂のようなものではなく、「原子核」や「電子」などを指します。
例えば、原子が非常に大きなパワーを持つと、電子を残して原子核(陽子や重イオン(重い原子核の成分))だけがものすごいスピードで飛び出します。
この非常に大きなパワーを持つ「原子核」が物体に当たると物体の構造を壊したりするなど、悪影響を与えるのです。


放射線が来る元はどこ?

そんな放射線ですが、いったいどこから来ると思いますか?

宇宙環境で考える放射線は、主に「太陽」と「外宇宙」からきています。

太陽からの放射線「太陽風」

太陽は、常に「太陽風」という形で様々な「電磁波」と「粒子」を放出しています。
これは放射線でもあり、地球にも降り注いでいます。
でも安心してください。地球は、地球の磁場や大気で守られていて地表まで届く放射線は大きく減衰しており、人体に悪影響は与えません。

ちなみに、放射線と言うとものすごく怖いイメージを持たれるかもしれませんが、極微量の放射線は実は日々の生活で浴びています。
食べ物や地球自身、大気などからの放射線が主で太陽風含めた宇宙から来る放射線は全体の13%程度と少量です。

ただ、この地球のバリアの外側にある空間、特に高度36,000kmを飛ぶ「静止衛星」は、遮るものがないため直接影響を受けることになります。
一方で、「周回衛星」は地球の磁場(バリアの内側)を回っているため、平時の太陽風による影響は静止衛星ほどではありません。

外宇宙からの超高エネルギー弾「銀河宇宙線」

次に、「外宇宙」から来る放射線です。
ここで言う「外宇宙」とは、太陽系の外から来ていることを指しており、太陽系外から来る放射線を「銀河宇宙線」とよく呼びます。
銀河宇宙線は、総量は少ないもののエネルギーが非常に大きな「粒子」で、ひとたび当たると大きな影響が懸念されます。
そのエネルギーの大きさは、通常の太陽風からくる粒子と比較すると5〜6桁(数十万~数百万倍)違うほどです。

平時の「風」が「津波」へと豹変するとき:太陽高エネルギー粒子(SEP)

一方で、銀河宇宙線と比べると影響が小さそうに見える「太陽風」が大きな脅威になる場合もあります。

太陽の巨大な爆発現象である「太陽フレア」や、大量のプラズマを吐き出す「CME(コロナ質量放出)」が発生すると、宇宙空間は一瞬にして天然の『巨大粒子加速器』へと変貌します。
爆発の衝撃波によって極限まで加速された粒子(太陽高エネルギー粒子:SEP)は、普段の太陽風(1keV(キロ電子ボルト))の数万倍から数百万倍の強さである「数MeV〜数GeV」という、凄まじいエネルギーを持ちます。
これは銀河宇宙線と同程度の強さというすさまじさです。

銀河宇宙線は、比較的量が少なく、エネルギーは大きいものの実際に影響を与える確率が低いという特徴があります。
一方で、「太陽高エネルギー粒子」は太陽からまさしく「津波」のように地球・そして人工衛星へと迫ります。

ここ数年、太陽活動の活発化に伴いこのような大規模な太陽風(太陽嵐と表現されます)の発生が懸念されています。
太陽の「機嫌」一つで脅威の大きさが劇的に変わる。それが、人工衛星が宇宙で直面している、予測不可能な環境のリアルです。

地球のすぐ近くで強い放射線を持つ異常地帯「ヴァン・アレン帯」

さらに、実は地球の近くに放射線が強い領域があります。
それがヴァン・アレン帯と呼ばれるものです。
これは、地球の磁場でドーナツ状に閉じ込められている領域で、高度数千キロから数万キロにわたる領域に位置します。
たとえば静止衛星の場合、静止軌道に至るまでにこのヴァン・アレン帯をどれくらい通るかで、ミッション初期に受ける放射線のダメージ量が大きく変わったりします。


放射線によって何が起こる?目に見えない深刻な影響

宇宙にいると避けられない放射線。
その強さは、衛星の軌道や太陽風の強さ(太陽活動の活発さ)にもよりますが、地表の数百倍から数万倍、時にはそれ以上になることもあります。

では、放射線が人工衛星に与える影響はどれくらいあるのでしょうか?

人工衛星で見られる放射線の影響は主に下記2つで、いずれも半導体や電子部品へ大きく影響します。

・放射線の「総量」が大きくなると、劣化していく
放射線を継続的に大量に受けて、「総量」が大きくなると、放射線を受けた部品などは劣化します。
この影響が特に顕著なのがプロセッサやメインメモリ、FPGAといった半導体です。
その半導体が許容できる量より多い放射線を受けると、半導体は動作しなくなってしまいます。
また、たとえばカメラのセンサーなども放射線の総量に応じてだんだんとノイズが多くなり、最終的には映らなくなったりします。

・ある瞬間に受けている放射線が影響を及ぼす
「総量」としては寿命を迎えるほどではないけど、パワーがつよい放射線などを受けたときに瞬間的に半導体の動作異常が起きたりします。
それが、SEE(シングルイベント現象)です。

SEEは複数の現象に分類されますが、いずれも「データや状態が0から1に、もしくは1から0にと変化してしまう」ことを指します。
本編で出てきた、「シングルイベントアップセット」もSEEのうちの一つです。

データが変化してしまうと、プログラムは誤動作を起こす可能性がありますし、トランジスタのような電流を制御する部品の状態が勝手に変わることで、回路に想定外の大電流が流れ続け、物理的に焼き切れてしまうような致命的なダメージ(破壊現象)が発生することもあります。
いずれも、前回の衛星ディープダイブでも紹介したFDIRの考え方で異常の検知や、異常の発生が波及しないような工夫が必要になります。
例えば「大電流が流れることによる物理的ダメージを防ぐ」ためには電流レギュレータを備えておくなどの対策が施されます。


放射線ってどうやって対策する?目に見えない脅威から身を守る術

このように、放射線は衛星搭載機器に大きな影響を与えます。
特にプロセッサやFPGAといった半導体は衛星の機器でも広く使われてますので影響は避けられません。

では、衛星の設計においては放射線への対策はどのように行っていくのか、ご紹介します。

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