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クラウドワークス漂流記

はじめに


先日こちらの記事で書いた通り、少しでも小銭を稼ぎたいなという思いで、今年の六月からクラウドソーシングを利用し始めました。


私が主に利用させてもらっているプラットフォーム、クラウドワークスのホームページには、より取り見取りのさまざまな案件で人材が募集されています。

自分を売りに出すうえでの二本の柱


さて、一介の大学院生(しかも休学中)が果たして、クライアントたちに提供できるような素晴らしいスキルをもっているものでしょうか。
少なくとも、私にはありませんでした。

そこで私は、大きく分けて二つの方向性から案件を探すことにしました。

ひとつは、データ入力や文字起こしといった、いわゆる単純な事務作業です。
特別なスキルが無くてもできるけれど、単価が安いうえに数をこなすには精神力が必要とされます。
これらはひとえに、時間と労力くらいしか、人様に差し出せるものを自分の中から見いだせなかった、という消極的な理由のもとで選びました。

もうひとつは、与えられたお題でコラムや記事を書く、webライティングです。

閑話休題その1

ここで、少々辛口な発言をしますね。
心の準備はいいですか?

人はなぜ、「自分は文章が書ける側の人間だ」と根拠のない自信を持ったり、「エッセイなら私にでも書けそう」なんてとんだ勘違いをしたりできるんでしょうか。
対して、漫画を読んで「自分でもこのレベルの作品描けそう」と考え、漫画家を目指すひとってそういないと思います。
エッセイに限らず小説もそうですよね。
私も含め、軽率に小説家を志す人があまりにも多くはありませんか?

それは、文法が正しくて内容も理解可能である、というある一定の水準を超えた文章たちについて、その巧拙を判断するのは非常に難しいから、だと思うのです。
例えばイラストであれば、デッサンの狂いや構図の迫力など、目で見て直感的に判断することができます。
言うなれば、作品のうまさと、それを見た時に感じる「快・不快」という心理的反応が近い距離にあるのだと思います。(現代アートなどの域に入ると、また話が変わりますが)
一方、文章というものは、うまさと「快・不快」の距離が遠く、頭で分析をしないと判断がつかないのではないでしょうか。
そうすると何が起きるのか。
絶妙なバランスで書かれた名文と、実際に自分が書こうとしているものの間に、どれほどの技術的な乖離があるのかが、見えにくくなるんですよね。

かくいう私も、二次創作を二年ほどしてきたなりの自負というものがありましたから、ライティングなんてちょちょいのちょいだろうと、高をくくっていました。
下手なりにnoteにエッセイを投稿し始めたのもちょうどその頃だったので、私は自分の文章能力に関して少々自信を持ちすぎていたようです。
だからあんなにも易々と、ライティングで稼ぎたいなんて思ってしまったのでしょう。
まだまだプロの域には技術・経験ともに足元にも及ばないこと。
そして大前提として、webライティングの実績がない人間を採用するようなもの好きは滅多にいないこと。
それらは私の頭からすっぽり抜けてしまっていました。

閑話休題その2

せっかくいろいろと語って気持ちよくなっているところなので、もうひとつだけ話させてください。
ライターに限らず、ある程度専門性の高い職業の求人案内を眺めていると、応募の必須条件として「経験者であること」が掲げられている場合が少なくありません。
ですが、人は誰しもが最初は未経験だったはずです。
未経験者を誰かが雇い、経験者にまで引き上げてくれたから、この世には経験者が存在するのです。
つまりですよ、今後どんどん成果至上主義の風潮が高まり、人々が「経験者であること」に価値を求めるようになってしまったら。
経験者全員が引退した先で、この世は未経験者だけになってしまいます。
そうしたら、将来、ライターという人種が絶滅してしまうかも……
とか馬鹿なことを考えています、最近。

残念過ぎる最初の二週間


私は、事務作業とライティングという二本の丸太にしがみついて、あてもなくクラウドソーシングの海を漂流し始めたのです。
両者はどちらも、多くの副業初心者が最初に目をつけるタイプのものですから、当然、応募者の数は非常に多いです。
つまり、競争率が激しいということ。
しかしそんなことは知らない私は、クラウドワークスに登録してからの二週間、たくさん応募して全部受かってしまったら困る、という余りにも青い杞憂をして、選りすぐりの数件のみに絞ったうえで応募をしていました。
結果は言わずもがな、笑っちゃうほど鳴かず飛ばずでてんでだめ。

始めて三週間が経過してやっと気づいたこと


三週間ほど経って私は初めて、今よりも応募件数を増やさなければ、一生契約がとれないだろうという厳しい現実に気づいたのです。
しかし、応募数を増やしてもなお、結果は振るいませんでした。

案件の大半が、情報商材を買わせたり、または法律に触れそうなグレーゾーンな仕事へ初心な副業初心者を誘導するための、口実にすぎませんでした。

さらに悲しい現実がもうひとつ。
選考から漏れた私にわざわざ選考漏れの連絡をくれるような、そういう手厚いサービスをしてくれるクライアントはほとんどいませんでした。
私は、応募締め切りを過ぎても音沙汰がない案件のページを覗きに行っては、「自分が落とされたのか」はたまた「クライアントに何かが起きたのか」(というのも、私が応募した怪しめのクライアントの中には、いつのまにかアカウントが削除されているものも少なくなかったのです)もわからずに、宙づり状態の居心地の悪さを感じていました。

そして、さらに悲しいことをもうひとつ。
ほんのわずかに存在するまともなクライアントは、実績のない私には見向きもしません。
私が、クラウドワークスに登録して最初の一ヶ月で手に入れたものは、定型文が書かれた数通のお祈りメールだけでした。

Chat GPTに助けてもらい作業の効率化を図る


一ヶ月ほど粘ったのち、これではらちが明かないと考えた私は、とあることを試すことにします。
それは、チャッピー(Chat GPT)を使って応募にかかるエネルギーをできるだけ小さくするというものです。

具体的には、チャッピーに以下のふたつをお願いしました。
①応募しようとしている案件が怪しいものでないか判断する。
②断片的な私の情報と、募集案内にて指定されている答え方のフォーマットをもとに、自己紹介文を作る。

特に②については、仮にもライターに憧れている人間が、契約をとるためにAIに文章を書かせるなんて、けしからんと思う人もいるでしょう。
ミイラ取りがミイラになるというか、ミイラがミイラ取りになるというか。そんな皮肉めいた構造があることは否定しません。

ひたすら文章をコピーしては貼りつけ、またチャッピーに指示を出しては、返って来た文章をコピーして、一部を書き換えてから貼り付け……
もはや、何か別のゲームをさせられているような気分になりますし、自分の脳みそを介さずに作られた文章を使うというのは、正直言って、非常に居心地が悪いです。

しかしながら、自己満足のためにえっちらおっちら自己紹介文を作ったはいいものの、ピックアップして応募した案件がすべて、詐欺まがいの怪しいものだった、なんてことになってしまったら本末転倒じゃないですか?
それよりは、潔く割り切ってしまって、AIに作らせた文章を使って大量に応募し、そこに偶然ひっかけられたまともな案件を足掛かりにして、自分がやりたいこと(たとえばライターになりたい、とか)へ近づく努力をしたほうが、結果的には合理的だと思うんです。

クラウドソーシングの海を彷徨い得たもの


そうやって行きつ戻りつを繰り返しながら、多い時だと一日に50件以上もの応募をこなしていくうちに、少しずつ、「この案件はやめたほうがいいかも」と思える嗅覚が育ってきました。
そこでここからは、私がこの二か月間で得た知見や感じたことを、愚痴も交えつつお届けしたいなと思います。

地雷条件の三点セット

体感として、「簡単」「~するだけ」「主婦の方におすすめ」が揃う案件は地雷臭がぷんぷんします。
そもそも、そんなに簡単な仕事なら、なぜ自分でやらないのだろう?というもっともすぎる問いの答えが、そこにはあるわけです。
そもそも、データを入力するだけなのにわざわざ主婦を指定してくるのもおかしいんですけど、これ、応募している本人は案外気づかないものなんですよね。
恐らく、引っ掛かりは覚えるかもしれません。
しかし、その案件が自分にとって魅力的であるほど、抱いた違和感を無かったことにしてしまいがちです。
いわゆる、確証バイアスってやつです。

謎に対象外にされがちな学生

これは怪しいというよりは、クライアントの意図が理解できない、と言った方が適切かもしれません。
募集案内でよく見かける「夜間にミーティングを行うことがあるので、今回は学生の方は対象外とさせてください」という一文。
読めば読むほどに、「ので」が全く「ので」として機能していなくて笑ってしまいそうになります。
この文章を書いた人は、学生は皆等しく21時以降はねんねの時間、とでも思っているんでしょうか?
生憎、学生のなかには夜型人間が少なからずいますし、夜勤に慣れている人だっているでしょう。
貴重な人材をこんな意味不明な文章だけで斬り捨ててしまうなんて、理解に苦しみます。

居住環境を探るための浅すぎる質問

ライティングの案件で、特に意見のすり合わせのためにオンラインミーティングが掲げられているような場合、「居住環境を知るために、一人暮らしか同居しているのか、結婚の有無について教えてください」といったタイプの質問をされることがあります。
そんな浅い質問で居住環境の何が分かるって言うんですか。
しかも、結婚の有無がライティングやオンラインミーティングをするうえで、どう関係するのでしょうか。
人間ふたりが結婚した途端、一方に他方が、いついかなるときも金魚の糞のようにそばについて、オンラインミーティング中も横にいる、なんて想像をしたら、多少なりとも楽しい気分にはなれました。
おそらく、私にはわからない何かの事情で、そういう情報が必要になってくるのだろうと漠然と考えていますが、やはり謎ですね……

踊るレモンスカッシュ

ライティングに関連して、シナリオの添削や作成に関する案件も数多くあります。
なかでも目につくのが、YouTubeでしばしばみられる「スカッとする話」のプロットや台本を作るというものです。
それ自体は別にいいんです。
私が気になるのが、「スカッとする」というフレーズが募集案内の中に何度も登場する点です。
しかも、「すかっと」と平仮名にするのではなく、わざわざカタカナを混じえてきているところに、小賢しさを覚えてしまいます。
それに、困るんです。
「スカッと」の字面を何度も見ているとゲシュタルト崩壊をおこし、頭の中でレモンスカッシュが乱舞しはじめるのです。
そもそも、YouTubeで似た動画があるのに、どうしてわざわざ同じ系統のものを生み出そうなんて思うんでしょうか。
後味が悪いイヤミスのような動画があってもいいのにと、外野で眺めている分には思います。


こうしてさまざまな出来事に遭遇しながら、サクラや怪しい業者に情報商材がはびこる海原を、私はあてもなく漂流しました。
チャッピーのおかげで、応募までにかかるエネルギーは削減できたので、その分、より多く、より多様な仕事を探しにいく余裕が生まれたのは確かです。
とはいえ、相も変わらず、まともなクライアントには見向きもされず、いまだに契約数は0。

あまりに早すぎるお祈りメール


おまけに、ちょうど今日経験したことなんですが。
とあるライティングの案件に応募し、いつもの要領で自己紹介文を作って送ったところ、なんとその五分後にお祈りメールが来たんです。
応募に際して、なにか参考となるような記事や文章を添えるタイプの案件だったのなら、まだ理解できます。
あぁ、私の文章の技術が採用担当者が求める水準に届かなかったのだろう、とあきらめもつくのです。
しかし、私が提出したのはある種無難な自己紹介文にすぎません。
それを読んで、たった五分で不採用を決定するなんて、なかなかできることじゃありません。
彼女の決断力にあっぱれです。

とはいえ、お祈りメールを送るのを、募集の期間が終わるまで待つことだってできたはずです。
選考結果が知らされるまでの数日間くらい、夢見たっていいじゃんか!
どんだけ私の自己紹介文が気に入らなかったんだよ!
憎まれ口は止まることを知りません。
元気な口とは裏腹に、鼻奥がどんどんツンと痛んできます。
えぇ、自分が情けなくて泣きかけましたよ、あくまで「かけた」だけですが。

そして見つけた新たな島


クラウドソーシングにはがっかりさせられることが多く、また、何か特別なことが起きない限り、急に契約成立が頻発することもないでしょう。
私が抱える喫緊の課題は、クラウドワークス内で契約を勝ち取ることではなく、外の広い世界で、良い稼ぎ口をできる限り早く見つけることです。
そこで私は、求人サイトを新たな選択肢としてもつことにしました。

ひたすらPCに向かい根気よく探した結果、事務作業系でリモートワーク可の求人をいくつか見つけることができたので、現在、そちらに応募しているところです。

さて、六月の頭から、およそ1.5か月にわたってクラウドソーシングの海を漂流してきた私は、ここにきてやっと、求人サイトという名の島に降り立ったのです。
この島は果たして安全なのか。
私は安寧の地に定住することができるのか。
その答えを探しに、これからジャングルの奥地へと足を踏み入れてきます。




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海坂(うなさか) 最後までお読みいただきありがとうございます。 こんなふうに、日常の小さな疑問を大まじめに考えるエッセイを週2〜3回書いています。気が合いそうでしたら、また読みに来てもらえるとうれしいです。 いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!