骨太の方針から見えた「成長という賭け」と、私が航路を変えない理由
7月、ドル円が約39年半ぶりの162円台に乗せたというニュースを見ながら、ふと「これは単なる為替の話じゃないな」と思いました。
同じタイミングで政府がまとめている「骨太の方針2026」。この中身を眺めていると、社会保険料、円安、日銀の利上げ、そして私たちの資産形成が、実は一本の線でつながっていることに気づきます。今日はその線をたどりながら、なぜ私が「オルカン中心・航路を守る」という投資方針を変えないのか、その理由を書いてみようと思います。
骨太の方針が約束していること
骨太の方針というのは、毎年夏に政府がまとめる経済財政運営の基本方針で、翌年度の予算編成の設計図になる重要な文書です。2026年版の原案では、現役世代の社会保険料率について「引き下げていく」とかなり踏み込んだ表現が使われました。去年までは「抑制努力を継続」という控えめな言い方だったので、これは明確なトーンの変化です。
同時に、17の戦略分野・62の技術に対して、2040年度までに官民合わせて370兆円を超える投資を行うという、かなり野心的な成長戦略も掲げられています。AI・半導体、量子、創薬、防衛産業、エネルギー安全保障——並べてみると壮観ですが、正直なところ「総花的で選択と集中になっていないのでは」という指摘も出ています。
保険料は下げる、投資は積む、でも財政再建もする。この3つを同時に成立させるのはかなり難しく、「トリレンマ」と呼ばれる所以です。
なぜこれが「不確実性」の話になるのか
種明かしをすると、このトリレンマを解く鍵は「成長」です。名目GDPが順調に伸びれば、税収の自然増でどうにか帳尻が合う設計になっています。実際、内閣府の中長期試算を見ると、成長が実現するシナリオとしないシナリオとで、2035年度の名目GDPに770兆円〜920兆円という、150兆円ものひらきが出ています。
つまり「成長できるかどうか」に、保険料も財政も丸ごと賭けている状態なのです。しかも肝心の成長率そのものが、民間エコノミストの間では2026年度で0.5%〜1.3%と、かなり幅のある予測になっています。中東情勢の悪化ひとつで、この数字はマイナスにも転びかねません。
円安と利上げの「政治的な事情」
もう一つ面白いのが、円安と骨太の方針の関係です。政府は積極財政と低金利環境の両立を志向しているため、骨太の方針には「適切な金融政策運営」という形で、暗に日銀の利上げペースを抑えたい意図が滲んでいます。市場もこれを織り込んで、円売りが進む——という構図です。
短期的には政府の投資戦略にとって都合がいい話ですが、中長期で見ると、実質賃金の目減りや財政の金利負担増という形で、コストが後払いされているだけとも言えます。経済学者を対象にした調査でも、足元の円安については「プラスよりマイナスが大きい」という回答が7割を超えていました。
それでも、私が航路を変えない理由
ここまで読むと、「日本、大丈夫か」という気持ちになるかもしれません。でも、これこそが私がインデックス投資、それも全世界株式(オルカン)を中心に据えている理由そのものだったりします。
日本一国の成長戦略が絵に描いた餅で終わるかどうかは、正直なところ私にも、政府にも、誰にもコントロールできません。だったら、その賭けに自分の資産の未来を預けるのではなく、世界中の成長機会に薄く広く乗っておく方が理にかなっている、というのが私の結論です。Charles Ellisが言うところの「航路を守る」というのは、まさにこの態度のことだと思っています。個別の予測を当てにいくのではなく、構造的に不確実な世界の中で、期待値がプラスの場所に居続けること。
具体的には、資産の大部分をオルカンに置きつつ、コモディティ(commodities・ゴールド)を一定割合組み込んでいます。これは円という単一通貨・単一国のリスクに対する、もう一枚のヘッジのつもりです。円安が構造的に続くにせよ、いずれ反転するにせよ、どちらに転んでも致命傷を負わない設計にしておきたい、という発想です。
キャリアの話にも、実は同じ論理が使える
面白いことに、この「マクロの不確実性にキャリアを賭けない」という発想は、投資だけでなく仕事の選び方にも応用できることに、最近気づかされました。
「日本の成長が不確実だから、自分も成長分野に移るべきか」と一瞬考えたのですが、よく考えると、それは論点のすり替えだったんですね。マクロの不確実性への保険は、すでに資産運用側でかけ終わっている。だとすればキャリアは、自分の積み上げてきた専門性やネットワークが一番活きる場所で勝負すればいい、というシンプルな話に戻ってきます。
不確実な世界に対して、無理に「当てにいく」必要はない。守るべき航路は、資産にも仕事にも、実は同じ形をしているのかもしれません。
まとめ
骨太の方針は、成長という一つの賭けの上に、社会保険料も財政再建も乗せている、かなりスリリングな設計になっています。この賭けの行方は私たち個人には決められませんが、その結果に一喜一憂しない資産設計をしておくことはできます。
不確実性そのものをなくすことはできなくても、不確実性に振り回されない態度は選べる。骨太の方針というマクロな話から、結局は「どう生きるか」という個人的な結論に戻ってくるあたりが、経済ニュースを読む面白さだったりします。
私の投資方針です。こちらもよかったら、お読みください。

