【コラボ企画桜城市】短編小説・『桜城市をさまよう男その4』
ここは桜城市にある、田舎料理柿の木の店内。ぎっくり腰で倒れてしまった俺を女将さんが助けてくれた。
その夜、俺は黄色いアヒルを探していることを女将さんに話した。
「えっ?その幸運の黄色いアヒルを探して、わざわざ桜城市まで来たんですか?」
「はい、故郷の母に頼まれてどうしても…。
まぁ、休みを使って探してるだけなんですけどね。
桜城市で黄色いアヒルを見た人を探して、訪ね回っているんです。ちょうど見たって高校生にも話を聞けたし…
それに、今日はその角で、見かけたんです。
女の子の自転車のカゴに乗ってるアヒルを。
それなのに肝心なところで、こんなザマに…」
俺はぎっくり腰とおぼしき腰をさする。
「まぁ、それは仕方ないことですよ。今は安静しておくことです。
あ、それよりお客さん、黄色いアヒルって、もしかして日々ちゃんとこのアヒルちゃんかしら?
黄色いアヒルって珍しいわよね!」
「えっ?!女将さんに知ってるんですか?」
「こないだ、うちにきてくれてね。茶色い髪の女の子よ。確かに黄色いアヒルちゃんと一緒だったのよ。
アヒルちゃん、人間の言葉喋れるみたいで…アヒルって感じがしなかったら今まで気が付かなかったわ。」
女将さんは笑っている。
「えっ、では女将さんはその日々ちゃんの連絡先とか、ご存知で?」
「いえいえ、そこまでは。
この間、初めてきてくださったお客様だもの。
でもこの辺にいることは確かなんだから、また来てくださるかも知れないわ。
私も知り合いとかに見かけたら知らせてくれるように頼んでおくから。
今日はゆっくり休んで、そのまま布団で寝ていきなさい。
で、明日動けるようなら、お医者に行くことね。」
女将さんは、まるっきりひとりで決めてしまうと、最後の鯉の洗いをぺろんと口に入れた。そして残った野沢菜漬けをお茶を流し込んで、てきぱきと片付けをし始めた。
俺はただただ女将さんの言うことに従うことしかできなかった。
翌朝、女将さんは朝ご飯におにぎりとみそ汁まで出してくれた。
「腰の調子はどう?」
俺はできる限りゆっくりと動いてみる。
まだ動くたびにビリビリと痛みはするが、何とか歩けそうだ。
「大丈夫です。動けます…ゆっくりなら。」
「なら良かった。何とかなりそうね。
じゃ、ご飯食べちゃって。
終わったらお願いしたいことがあるから!」
(???)
何のことか良くわからないが、とりあえずおにぎりをいただいた。中に入っている野沢菜の油炒めがうまい。
食べ終わると、女将さんは奥から新聞紙に包まれた何かを持ってきて机に広げた。
新聞紙の中からはピンセットと蜂の巣が4個か5個出てきた。
俺はびっくりして、思わず立ち上がりかけて、腰の激痛に短い悲鳴をあげた。
「これは、何ですかっ?!」
俺は机に手をついたまま、顔も上げずに聞く。嫌な予感がする。
「これは蜂の子よ。
一宿一飯の恩って言うでしょ?
座ったまま出来るから、大丈夫。
巣の中の幼虫をピンセットで出して、このボウルに入れといてね。
昨日入ったの。新鮮な高級食材なのよ。」
ボウルを持った女将さんはとても嬉しそうに、無邪気な笑顔をこちらに向けてくる。
「えぇ〜!」
嫌な予感は当たってしまったが、これだけお世話になっている女将さんのお願いを断ることなど俺にはできなかった。
ひとつの蜂の巣に何十匹もの幼虫がつまっている。とっても新鮮!だから、それぞれモゾモゾと動いているし…
俺は目を細めながらも、気合いを入れてピンセットを握る。
おそるおそる蜂の巣を持ち上げると、お行儀良く巣穴に並んでいる幼虫たちを一匹づつ、つまみあげてはボウルに移した。
蜂の子たちの何十という黒いつぶらな瞳に見つめられながら、俺は占い師の知恵さんに言われた、「和服の女性に気をつけて」というアドバイスをぼんやりと思い出していた。
つづく
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この男が探している黄色いアヒルとは…
織の日々是好日さんのオリジナルキャラクター
日々ちゃん(にちにちちゃん)とその相棒のアヒルです。
織の日々是好日さんのコラボ作品では4コマ漫画の中でかわいい日々ちゃんを見ることができます。
こちらの短編小説は、noteクリエイター瑛さんの『桜城市構想』の企画に参加して書いています。
他のクリエイターさんも続々参加中です。
コラボ作品のマガジンをチェックしてみて下さい。こちらの『さまよう男』も収録していただいております。作品同士がリンクしているところが随所に見られ楽しみのひとつです♪
