蓮如上人の夏御文章(げのごぶんしょう)を拝読して思うこと
8代宗祖蓮如上人は門徒や僧侶に向けてお手紙を書かれて、真実の信心を獲得(ぎゃくとく)することの肝要を幾度となく御教授された。そのことによって結果的に、真宗が、勃興を遂げたのは間違いない。
その、85通ほど確認されているお手紙の中で、5通ほど僧侶向けのお手紙が、夏御文章(げのごぶんしょう)とよばれるものである。これは、夏の時期に集中的に90日にわたって山科本願寺で行われた僧侶のための安吾(研修会、勉強会)において示された上人の文章である。
これを読むと、5通とも共通して強調されていることは、誰も真剣に研修を受けてこの期間に確実に信心をいただくことの大切さである。この時、上人は、84歳ーー亡くなる前の年である。
初めて御文章を出されたのが宗祖になって3年後の47歳のとき。それから何と約40年に渡って、「信心獲得」の肝要を述べてこられたのだ。ものすごい信念だと思う。
上人は、門徒だけではなく僧侶たちに対しても同じ肝要を述べる。僧侶の中に未安心の輩(ともがら)つまり信心をいただいていない指導者たちを見るからであろう。
私は、英語を教えてかれこれ40年以上になるが未だに完全、自由に英語話者と、意思伝達ができるとはいえない。まず自分が出来て初めてモデルを示せる。それ以外の文法などの説明は2の次である。
同じこと、もっとはるかに大切なことを、蓮如上人は僧侶に伝えようとされていたのだ。ことは、いのちの解決に関わることだから。これを「後生の一大事」と呼ばれた。
最後にそのことがよくわかる上人の生のお言葉を示します。
「また上来も毎日勘文をえらびよみまうし候へども、たれにても一人として、今日の聖教に何と申したることのたふときとも、また不審なるとも仰せられ候ふ人数、一人も御入り候はず候ふ。この夏中と申さんも今のことにて候ふあひだ、みなみな人目ばかり名聞の体たらく、言語道断あさましくおぼえ候ふ。これほどに毎日耳ぢかに聖教のなかをえらびいだしまうし候へども、つれなく御わたり候ふこと、まことに事のたとへに鹿の角を蜂のさしたるやうにみなみなおぼしめし候あひだ、千万千万勿体なく候ふ。一つは、無道心、一つは無興隆ともおぼえ候ふ。この聖教をよみまうし候はんも、いま三十日のうちのことにて候ふ。いつまでのやうにつれなく御心中も御直り候はでは、真実真実無道心に候ふ。まことに宝のやまに入りて手をむなしくしてかへりたらんにひとしかるべく候ふ。」
蓮如上人と御怒りと焦りとそして何より、僧侶をはじめ全ての念仏の行者が早く信心を獲得してほしいという切なる願いがひしと伝わってくるお言葉だと思って長くなりましたが原文のまま引用しました。
このお言葉が書かれたのが1498年上人84歳のときです。翌年に御往生されると言うことは、その間際まで念仏の行者が信を摂ることを乞い願われたことがわかり、上人の願いの強さ深さを感ぜずにはいられません。600年以上が経った今日でも蓮如上人のこのお気持ち、信念は、十分私に当てはまります。そしてひしひしと伝わってまいります。
