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なぜ他人に貼ったレッテルほど、自分のセルフイメージになるのか


「私ってこういう人」は、どこから来たのか

私たちは日常的に「私ってこういう人だから」と口にします。

細かい作業が苦手だとか、人前で話すのは向いていないとか、そうした自己認識のことをセルフイメージと呼びます。

多くの場合、私たちはこのセルフイメージを、過去の実績や失敗の積み重ねから導き出された、わりと客観的な結論だと思っています。

けれど認知科学の知見をたどっていくと、少し違う姿が見えてきます。

セルフイメージは、Word(言葉)→ Picture(イメージ)→ Emotion(感情)という順番で作られていきます。

事実が先にあって言葉が後から付いてくるのではなく、言葉が先にあって、その言葉に合うイメージと感情が後から作られていく。

順序が、私たちの実感とは逆なのです。

潜在意識は、主語を聞いていない

無意識には、いくつか厄介な特性があると言われています。

その一つが、「自分と他人を区別しない」というものです。

例えば、「あの人は詰めが甘い」と口にしたとき、その言葉を最も近くで、最も繰り返し聞いているのは、他ならぬ自分自身の耳です。

そして潜在意識は主語を落として、「詰めが甘い」という言葉だけを受け取ります。

他人に貼ったつもりのレッテルが、そのまま自分に貼られている。

他人の愚痴や文句ばかり言う人がいますよね。そういう人は他人を悪く言うことでストレス発散になっていると思い込んでいるかもしれませんが、その実態は自分自身を攻撃し、ネガティブなセルフイメージを自身に刷り込んでいることに他なりません。

一度貼られたラベルは、証拠を集めはじめる

ここに、もう一つの仕組みが重なります。

脳にはRAS(網様体賦活系)という情報のフィルターがあり、膨大な情報の中から「自分にとって重要なもの」だけを選んで意識に上げています。

「詰めが甘い」というラベルが入力されると、RASはそれを重要な検索キーワードとして扱いはじめます。

すると、丁寧にやり遂げた仕事は視界から消え、抜けが一つあった仕事だけが鮮明に記憶に残るようになります。

証拠というものは、探しはじめればいくらでも見つかります。

やがて、その自己認識に沿った振る舞いが自然と選ばれ、結果としてラベルが裏付けられていく。

厄介なのは、本人は「冷静な自己分析」としてやっていることでしょうか。

自分を客観視できているつもりの時ほど、実は解釈に過ぎず、主観的に集めた証拠を眺めているだけ、ということがあります。

実績で作ったセルフイメージは、意外ともろい

もう一つ、掛け合わせておきたい話があります。

自己評価には、過去や現在の実績・役職に基づく自信(自己肯定感)と、未来のゴールを自分は達成できるという評価(自己効力感)の二種類があります。

私自身、役割が変わったときに、それまで自分の自信を支えてくれていた土台が、ふっと効かなくなる感覚を味わったことがあります。

何故なら、当時の私は「他人からどう思われているか」「どう評価されているか」が正しさの基準だったからです。

組織は役職が上位になるほど「全員の賛成」を持って意思決定をすることができなくなります。

なぜかというと、全員が良いと考える施策は「現状」である場合が多く、リーダーは市場変化に合わせ、未来のゴールに向けて「現状の外」のアクションを起こし続けなければ企業は立ち行かなくなる可能性が極めて高いからです。

人間の本能は「変わりたくない」ですから、ゴールに対して有効な施策を打ち続けるということは、多かれ少なかれ今のやり方を変えなければなりません。

当然、メンバーからは批判が多くなります。

周囲からの期待や感謝が燃料になっていたのに、立場が上がるほど直接届く声は減り、代わりに批判の声が増えていく。

そうしているうちに、賞賛の声すらも「本当に思っているかどうか分からない」と真っすぐ受け取れなくなりました。

過去の実績で組み上げたセルフイメージは、環境が変わればあっけなく足場ごと入れ替わってしまうのです。

そうすると、リーダーは「メンバーから嫌がられないか・賞賛されるかどうか」という他人軸の意思決定基準を捨て、ゴールに対して有効だと考えられる施策を真っすぐ自身の信念に従ってやりきらなければなりません。

すると、他者の合意を得る行為は、ゴール達成のための1つの手段でしかないことに気づくはずです。

さらに逆説的なのは、自己肯定感が高すぎると、かえって現状維持の引力が強くなるという点です。

「私はこれで評価されてきた人間だ」という認識そのものが、新しい挑戦を遠ざけてしまう。

だからこそ、拠り所を過去側から未来側へ、少しずつ移していく必要があります。

明日から試せる、小さな仕掛け

つまり、「私ってこういう人」という自己認識は、後天的に身に付けた物であり、産まれたときからそうだったわけではありません。

後天的に身に付けたということは、今からでも変えることができます。

そのためには言葉を変えること。
出来れば、「未来なりたい自分」はどんな言葉を自分自身、もしくは他者に対して使っているのが当たり前か、という基準で考えてみてください。

今日からできる解決策は、結構地味です。

一日の終わりに、その日自分が他人について口にした評価の言葉を、一つだけ書き出してみてください。

それが今日、自分のセルフイメージにインストールされた言葉です。

そのうえで、明日は誰か一人の仕事について、具体的な言葉で認めることを一度だけやってみる。

「助かりました」ではなく、「あの資料の順番、こちらが説明しやすいように並べ替えてくれていましたよね」というくらいの具体度で。

当社ではピアボーナス制度を採用し、メンバー同士で感謝のメッセージを送りあう仕組みがありますが、その際には以下のフレームを使って感謝を送るようにしています。

①誰にありがとう?

②何に対して感謝している?

③自分に対してどんな効果や価値があった?

主語を認識しない潜在意識にとって、それは相手への賛辞であると同時に、自分自身への入力でもあります。

自分で自分を褒めるのは、正直なところ気恥ずかしいものです。

けれど、他人を具体的に認めることなら、明日からでも始められます。

セルフイメージを書き換える一番現実的な入口は、鏡の前ではなく、隣の席にあるのかもしれません。

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