「やめる」という選択・・・不妊治療の終結 #17
こんばんは。
今日も静かにはじめさせていただきます。
#15では、不妊治療の『時間との闘い』,
そして『年齢との闘い』について綴りました。
今回は、
不妊治療の終結について綴っていきます。
◼️いつやめるか?
「(不妊治療を)いつまで続けますか?」
この問いは、とても残酷で、とても現実的です。
注:もちろん、現場でこのような聞き方はしません
ふくるんは病院で働く助産師なので、
不妊治療の開始に立ち会うこともあれば、
終結の場面に付き添うこともあります。
治療現場で感じているのは、
『始める決断よりも、
やめる決断のほうがずっと難しい』
ということです。
不妊治療には
終わりの明確な“線引き”がありません。
年齢、
卵巣機能、
治療回数、
経済的負担、
家庭環境、
心身の疲労……。
複雑に絡み合う要素を考慮して、
「これ以上続けるかどうか」
という問いに向き合うことになります。

◼️治療が長くなるにつれて
年齢が上がるにつれ、妊娠率は低下し、
妊娠継続も容易ではなくなります。
採卵しても卵子が得られないこと、
受精しても育たないこと、
着床しても妊娠継続できないこと。
(流産ですね)
『妊娠・出産に至らない』という現実を
何度も経験するうちに、
心も体も少しずつ消耗していきます。
それでもやめられない理由は、
「まだ可能性があるかもしれない」
という希望です。
「1%でも可能性があるなら」
と踏みとどまる気持ち、すがりたい気持ち。
同時に、
「ここでやめたら一生後悔するのではないか」
という恐れ。
治療を続けたいという思いと、
いつまで期待を持ち続けられるのかという不安。
様々な思いに揺れながら、
周期を終えるごとにまたリセット。
義務のように自分を奮い立たせる。
「時間がない」
「ちょっと治療を休みたいけど、
休んだ周期の回数分チャンスを逃すようなもの」
「楽しみだな」とはなかなか思えない。
「本当にうまくいくのだろうか」
という焦りと不安を抱えながらの通院。
・・・モチベーションを維持するのも大変なことです。
◼️切り裂かれる思い
治療の終結は、単なる医療行為の終了ではありません。
それは“思い描いていた未来”との別れでもあります。
「子どもを抱く自分」
「家族写真を撮る未来」
そうしたイメージを手放す作業は、
深い喪失体験です。
だからこそ、終結の決断は簡単ではありません。
夫婦で気持ちに差があることもあります。
どちらかは続けたい、
どちらかはもう限界だと感じている。
その溝に苦しむこともあります。
女性側からすると、
この決断を夫に決められるのはつらいです。
夫の気持ちも鑑みて
決断しなければならないことは
理屈ではわかっているのですが、
「妊娠して赤ちゃんをおなかに宿すのは女性の私だ」
という自負とプライドは
わかってほしいと考えてしまうからです。
紋切り型の考え方とわかっているのですが、
男性側には知っておいてほしいです。
「わかっているよ」
のにおわせ程度でも十分です。
夫婦間の感じ方の溝も、
苦しみを助長する要因になるので、
夫婦両者が認識しておくべきでしょう。
ふくるんのおススメは、妊活を始めるまえに、
ボーダーラインを夫婦で決めておくことです。
「終わりの条件」ですね。
妊活をしながらの変更があっても構いません。
ただ、始める前に決めておくことで
夫婦で「終わりがある活動なんだ」の共通認識ができます。

私は外来で、
「もう終わりにすると決めました」と
静かに話された方の表情を忘れられません。
そこには諦めだけではなく、
やり切ったという思い、
そして言葉にできない悲しみが混ざっていました。
◼️支えてくれる存在が大切
治療を終えると、
通院という日常が突然なくなります。
それは解放であると同時に、
ぽっかりと穴が空く感覚でもあります。
そんなとき、支えになるのは
“誰かの存在”です。
パートナーの「一緒にここまで頑張ったね」
という言葉は欠かせません。
友人の変わらない態度。
家族の静かな理解。
そして、同じ経験をした人の存在。
「あなたの人生は、ここで終わらない」
そう伝えてくれる誰かがいることは、
大きな支えになります。
私は看護師として、
妊娠という結果を約束することはできません。
でも、治療を終えるその瞬間が、
その人の人生の“敗北”にならないように
関わりたいと思っています。
どうやって?
とても難しい問題です。
正解はわかりません。
ひとりの人間として、
看護師として、
模索する日々です。
◼️治療終結のその先に
治療を続ける選択も、終える選択も、
どちらも勇気のいる決断です。
そこに優劣はありません。
不妊治療の終結は、希望を手放すことではなく、
新しい人生の形を模索する始まりでもあります。

もし今、その決断に揺れている方がいるなら、
どうか一人で抱え込まないでください。
支えてくれる存在は、必ずいます。
そしてあなたのこれまでの道のりは、
決して無駄ではありません。
私はこれからも、
始まりにも、
終わりにも、
そっと寄り添える看護師でありたいと思っています。
◼️おわりに
あなたが抱えている小さな不安が、
今日、ほんの少しでも軽くなりますように。
そして、振り返りや迷った時は、
いつでもここに戻ってきてください。
どこかの森で、またお会いしましょう。
