見出し画像

物語構成読み解き物語・4

前回はこちら

「風立ちぬ」に引き続き「銀河鉄道」の読み解きもやった。名前は有名だが、実は読んだことがなかった。ほんたうになかった。本を借りて読んでみたが、意味不明だった。読みにくくてほぼ読めない。バージョンによって読みやすさが違う。同じバージョンでも出版社が違うと(文字をいじるから)読みやすさに差が出る。

が読みやすくて、買って読んだ。当時はそんなに解読できなかったが、その後きれいな解き方がみつかった。

いびつなほどのレベルの高さである。なぜ彼はここまで頑張ったか。「銀河鉄道」ではわからなかったが、その後同志の「注文の多い料理店」と「オツベルと象」の読み解きで納得した。

宮沢賢治は国士であった。文学者ではあるが、西郷や兆民の系列を引く人間であった。それらが宗教的になると賢治になる。自分たちはまるで新しい賢治像を提示できていると思う。小さな作品をきっちり読むだけでこうなるのである。

「銀河鉄道」の理解で、難解な部分から順にあげると

1、三位一体教義
2、実世界と銀河鉄道での行動の対応関係
3、冒頭と末尾の対句

である。しかし難解だから重要というわけでも無い気もする。文学としていちばん素晴らしいのは、冒頭と末尾の対である。

画像3

冒頭で教師は「銀河は星でもあり、水の流れでもあり、ミルクでもある」と言い、末尾でジョバンニは星が水の流れに映るのを見て、ミルクを持って駆け出す。冒頭が形をかえて末尾に回帰する。

画像1

美しい。これぞ物語である。

実世界と銀河鉄道での行動の対応関係は、エクセルで章立てして見つけた。エクセルなしに書ける人や、読める人は凄いと思う。方法論は徐々にブラッシュアップできたが、今の方法が正しいのかどうかわからない。他の方法もあると思う。なんにせよ、単純に読み込む以上のなにかができればよいのである。単純に何度も読む、だけでは読み切れない部分を読もうとするのだから、表の作成は現実的な手段である。

この「銀河鉄道」の表のように、内部構成をきっちり把握出来た読者は居るのだろうか。そんなに居ないと思う。ほとんどの人はさして意味はわからず、それでもなにかを感じて「銀河鉄道」を名作と思う。私が気にしているのはその「なにか」である。どうも人間、明示的に理解できなくても、潜在意識でわかる部分が非常に多くあるようである。「感受性」というアバウトな言葉で片付けられているものの実態は、叡智に近いものではないか。

賢治もおそらく、この感受性が仏陀の叡智に近いものだという確信を持って、感受性に訴えかける作品を書き続けた。今日のようにネットはない。発表の見込みなしで書き続けた。死ぬ直前に弟に原稿の山を示して、あとのことを託した。この時点では賢治の志は、小さな泉のような水量でしかない。
しかし幸いなことに弟さんは兄を尊敬していたから、原稿を整理して出版にこぎつけた。作品は時間とともに人々の目に触れ、やがて「銀河鉄道999」「廻るピングドラム」「カラフル」など滔々たる文化の流れとなって私達の生活を潤している。

弟との話はゴッホを連想させる。弟のテオは、問題を起こしてばかりで絵の売れない兄を、なぜか大変尊敬しており、子供には兄と同じヴィンセントという名前をつけた。兄の死後弟も後を追うように死んだが、ヴィンセントと未亡人は絵画の整理と紹介を粘り強く続け、やがてゴッホの絵は世界中の美術好きの心の宝物になった。だから最後にゴッホの絵を掲載する。

画像3





いいなと思ったら応援しよう!