砂漠に寝転んで星空を拝見。「星って本当に『キラキラ』してるんだね..」
あらすじ:中東ヨルダンの本屋に住んでいる私とラウラは、「綺麗な星空を見てみたい!」ということで、本屋の休みにヒッチハイクをして、砂漠にたどり着いた。
●砂漠の受付センター
ヒッチハイクでチェコ人カップルの車に載せていただき、有り難く砂漠にたどり着いた私とラウラ。このまま車で砂漠に乗り上げるのかと思いきや、重厚な "門" にたどり着いた。

驚いたが、砂漠には「出入り口」というか「受付センター」みたいな場所があるらしい。砂漠って、"ただ砂があって、どこからでも入り放題"なのかと思っていたが、来訪者はまず一旦ここに連れて来られることになっていた。
チェコ人カップルに別れを告げた後、ここでなんか色々手続きをしたのだと思うが、正直疲れすぎてあまり覚えていない。思い返せば今日は朝三時に本屋を出て、長距離バスで遺跡に着き、ラクダに乗ったり歩き回ったりし、ヒッチハイクの車を探すのに疲労困憊し、やっと今こうして砂漠に着いたのだ。
この状況なら、あのスーパーなマリオだとしてもさすがに今頃5体ぐらいはアウトになっているだろう。いわんや私の身は1つしかないので、このようにくたくたなのだ。
やけに青白い蛍光灯の眩しいそのセンターのベルを押すと、15分ぐらい待たされて受付係のおじさんが出てきた。それも、「実はずっとすぐそこにいたよね…?何してた?」とかすかに考えてしまうほどの至近距離の場所からヌッとでてきた。
そうして手続きを終えると、予約してある砂漠の宿の、送迎スタッフと合流した。送迎スタッフは、「では宿にお連れします」と私たちを車に乗せ、宿まで運転し始めた。
●暗闇の運転、ほんとにこっちなのか
私とラウラは疲れすぎて、後部座席で何も発さなかった。でもしばらくして私はふと口を開く。「あの〜送迎係さん、砂漠って道もないし、目印も看板もないし、ナビも…何もないのに、なぜ進む方向がわかるんですか?」

そう、窓の外に広がるのは漆黒の暗闇のみ。道も目印もないのに「なぜここでカーブ?」と突然曲がったりしながら、ぐんぐんと進んでいた。車のライトをつけたところで”光の当たる対象物”すらないため、放たれた光は意味をなさないまま暗闇に消えていくだけだし、本当に前が見えない。
ラウラも「たしかに…」と言った様子で、一緒に「なんで道が分かるの、なんでなんで!?」と盛り上がった。しかし送迎スタッフには英語があまり伝わっていないようで「そうだね、いいよ〜!砂漠にようこそ!」と繰り返す。理由を何度尋ねても「ようこそ、ようこそ」しか返ってこなかった。
今思えば、あの砂漠受付センターはどうやら、宿泊客を車でピックアップする場所だったみたいだ。砂漠にあるのはただただ砂だけ。きっと砂漠のホテルに住所とか無いのかもしれないし、あっても行き方がわからない。宿泊者は自分の宿まで辿り着けるはずもないので、砂漠のプロ=宿のスタッフ、に迎えに来てもらう仕組みなのだった。
●本当に偶然だった視線
「着いたぞ〜」という合図で車から降りる私とラウラ。真っ暗で何も見えないが、宿に着いたらしい。
車から砂漠に降り立つと、当たり前だが足の着いた先は深い砂だった。学校のグラウンドのように「表面にだけ砂を撒いておきました」という "にわか砂場" は違い、この足の沈む感覚は「どこまで掘っても底まで砂です」という "ガチ砂場" の風格を感じさせ、思わず足先がひるむ。
一歩一歩、足先から地面に伝わる振動は全て砂に吸収され、足には何も反動がこない。歩く時に「作用反作用の法則」が効かないのは初めてだ。砂漠って、こんなにも歩きにくいのか…。ただでさえクタクタの私たちは「砂に足元をらとられる」という追加オプションも課せられ、ヨイショヨイショと宿に歩いた。
もうなんか、疲れたな…。ふと、2人同時に一息ついて、伸びをした。そのとき、、
「え、ええええええええええ!?んなんじゃこらゃあいおああ!?!?」
…信じられない、、!!!!!
偶然、本当に「あー、つかれたな」と偶〜然見上げた空が、なんだかすごいことになっている。大丈夫か?もう、すんごい星が溢れんばかり、輝いている。
もとはと言えば、この砂漠に来る日程を決める時に「星がよく見えるように」と、わざわざ新月の(=月の出ていない)日に合わせたほど、砂漠来訪の目的は星空だった。しかしいざ砂漠に着いてみると「星を見ている場合じゃない数々のアドベンチャー」が繰り広げられており、"目の前の物事" や "足元" しか見る余裕がなかったのだった。
同時に星空を見上げたラウラも、「感嘆」という言葉では表せないような、何やらイタリア語の「嘘でしょ〜!?!?」というようなことを言っていた。後から気づいたが、面白いのが「あまりにも星空の美しさにびっくりしすぎて、お互い母語で驚いた」ことだ。さっきまでずっと英語で喋っていて、考え事まで全て英語になっていたほどだが、あまりにびっくりすると人は慣れ親しんだ母語が出るのかもしれない。
それほどまでに、こ、これは、、なんというか、星が大量すぎて、細かすぎて、なんだか埃っぽい!!すっっごく細かい大量の埃がそのまま星になったようだ。これを見てしまったら、「星屑」という言葉の存在にも「確かにこれはクズだな」と納得である。
私とラウラは、今までの疲れが全て吹き飛んで、「めちゃくちゃ十分な休養をとった人」ぐらい、完全に元気になった。ラウラは「ねえ!はやく宿に荷物置いてさ、砂漠に寝っ転がって空を見ようよ!」と、足を早める。なんて素敵なセリフなんだ。。。私も足元を取られながら、ワクワクパワーで宿まで急いだ。
●いったん、宿とセットのレストランへ

宿に着くと、オーナーが「お待ちしておりました」と、併設のレストランに案内してくれて、冷たくなった夜ご飯を出してくれた。この砂漠で電子レンジなど期待するわけもなく、というかあるかどうか聞く元気もなく、そのまま頂く。冷え冷えではあるが、しっかりスパイスの味がして美味しかった。
実は、もっと早く宿に着いていれば、「砂漠の砂の中に鍋を埋めて料理を温める調理イベント」がありそれを楽しみにしていたのだが、思ったよりもずっとヒッチハイクが大変で間に合わなかったのだ。
そういえば、砂漠にはここ以外にもいくつか宿があるのだが、私たちがなぜここを選んだのかというと「シャワーでお湯が出た」というレビューがあったからだ。住んでいる本屋のシャワーで日頃から散々寒い思いをしている私たちは、「冬の砂漠なんて、お湯が出ないと凍え死んでしまうわ」と話し合っていた。
しかし現地に着くと、実際はこうだった。「この状況でシャワーとか行くわけないよね?」。もうあまりに当たり前というか阿吽の呼吸というか…、あんなにシャワー重視で決めたのに、私たちは「シャワー」を話題にすら出さなかった。というか砂漠でシャワーってなんだ、シャワーって。
冬に風呂に数日入らなくてなんの問題もないし。あ、そういえば今日は"冷や汗"なら散々かかせていただいたが、それはシャワーでは流せるタイプの汗ではないらしい。それに、私たちはのんきにシャワーをしている場合ではなく、早く"星の続き"を見たかったのだ。
●毛布を担いでいざ、外へ
私たちは宿にあった毛布を外に引っ張り出し、ずるずると砂を引きずりながら広々とした砂漠まで持ってくると、もうとっても最高の気分になって、めちゃくちゃはしゃいだ。

お互い写真を撮りあって「暗すぎて何も映ってない!!笑」とか「フラッシュしてもブレブレになるわ!!」とか言いながら、もうめちゃくちゃ走ったり舞ったりして遊んだ。
猫たちがその辺で遊んでいるみたいに、具体的には特に何もないし、どうやって遊ぶとかでもないけど、とにかく動き回ってめちゃくちゃ「遊んだ」のだ。ただただ全身で遊ぶ、というのは大人になってからしたことがあっただろうか。
そうして大大大満足したら、毛布を砂漠の上に並べて敷いた。そこに寝転がって毛布にくるまって、お互い何も話さないまま、ただずっとずっと星を眺めていた。
星はなんだかジワジワと照度を変えながらじんわりと動いているようで、「すごい..これが星の『キラキラ』ってやつか…」としみじみ思いながら、じっと星空を見上げた。時々、大きな流れ星がビャーーーっと流れて、その度に「今の見た?」「ね、見たよ」という会話だけがぽつりとおこる。
あとはただただ静寂だった。会話だけでなく、そもそも環境が静かすぎた。砂は音を吸収するのだろうか?私たちの周りには、どこまで行っても他に誰もいないのだろうかと思うほどあまりに静かすぎて、自分の微かな動きで発生する音、例えば服が擦れるとか髪が揺れるとか、普段は聞こえないような些細な音が初めて聞こえた。
とにかく、あまりに静かで、あまりに綺麗だった。見上げる視界を占める全てが星空で、それは現実ではないみたいだった。
●さよなら星空
星空は、ただ「綺麗というだけ」なのに、いつまでもいつまでも見飽きなかった。宿に戻ってしまうのが惜しくて惜しくて、すごく寒かったけどお互い「戻ろうか」とは言わなかった。でもやっぱり寒くなってきて、心も満足をした気がしていた。
「戻る?」
そろそろ宿に戻ろう、と最初に言ったのはラウラだった。敷いていた毛布をずるずると砂に引きずりながら、首はガクンと上に向けて、空を見ながら歩いた。
宿、と言っても小さなサイコロのような箱にドアが一つあり、ベッドが二つ置いてあるだけの小屋、に着いたのだが、さっきまでいた砂漠があまりに開放的すぎた反動で、"室内" という「壁と天井のある空間」に身を置くのが不思議な感じがした。
それに…。この扉を閉じてしまえば、そこにあるはずの星空が見えなくなるのが不思議だし、すごく寂しいと感じた。
私は先にベッドに寝転んだ。つまり、星空に別れを告げたのだ。ラウラは宿の入り口からひょこっと首を出して、「これを閉めたらもう、星空にはお別れだね…」というように、本当に名残惜しそうに扉を開けたまま外を見つめていた。そんな後ろ姿を眠い目で見ながら、「ここにラウラと来れてよかったなあ」とぼんやり思った。
しばらくしてラウラはせつなそうに扉を閉めると隣のベッドに横になり、そこから2人は泥のように眠ったのであった。
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●次回:なんと「星空より綺麗なもの」を発見…。
「ヨルダンの本屋に住んでみた」の女子旅シリーズ一覧。どこからでも読めます。
1・旅行の準備
2・遺跡 (探検編)
3・ヒッチハイク (苦戦編)
4・ヒッチハイク (成功編)
5・砂漠 (星空編) ←今ここ
6・砂漠 (青空編)
7・帰宅と後日談
●他にはこんな話も
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