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【コラム】立法担当者から見た外国代理人登録法の「立法事実」――日本版FARAは、国会でどう説明されるのか

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1 「国家主権防御型」の日本版FARAにする場合

外国代理人登録法制(いわゆる「日本版FARA」)を考える際には、まず「何のための制度なのか」が問題となる。

この点については、いくつかの考え方があり得るが、その一つが、

「外国主体による影響力行使から、国家主権や国家意思決定を防御する」

という考え方である。

ここでは、この立場を便宜上、「国家主権防御型」と呼ぶことにする。

この立場では、外国主体による働きかけを、単なる利益表明や国際交流ではなく、国家意思決定への外部的介入リスクとして捉える。
そのため、制度は、安全保障的性格を帯びやすい。

もっとも、この類型の制度を導入する場合には、大きな問題が生じる。

「本当に、そのような危険は存在するのか」

という問題である。

2 立法事実とは何か

ここで登場するのが、「立法事実」という考え方である。

立法事実とは、簡単に言えば、

「なぜその法律が必要なのかを支える現実的根拠」

である。

重要なのは、立法事実は、裁判所だけで問題となるわけではないという点である。

実務上、立法事実が最初に問題となるのは、むしろ立法段階である。

すなわち、

「この法案は、国会で説明できるのか」

という問題として現れる。

3 立法担当者は、何を説明しなければならないのか

たとえば、国家主権防御型の日本版FARAを導入しようとすれば、国会では当然、次のような疑問が出てくる。

  • 日本で具体的に何が起きているのか

  • 外国主体による介入はどの程度存在するのか

  • 既存法ではなぜ対応できないのか

  • 外為法や政治資金規正法では不十分なのか

  • 学術交流や国際企業活動との違いは何か

  • なぜ外国主体だけを対象とするのか

  • 表現の自由との関係はどう整理するのか

つまり、立法担当者にとっての立法事実とは、単なる「社会的事実」ではない。

それは、

「制度必要性を、国会で説明可能にするための構造」

なのである。

この点は、日本版FARAの議論において極めて重要である。

なぜなら、外国影響力に対する抽象的不安だけでは、包括的登録制度を正当化するには弱いからである。

4 立法担当者は、どのように立法事実を構成するのか

そのため立法担当者は、複数の要素を組み合わせながら、立法事実を構成しようとする。

(1)比較法による補強

第一に、比較法である。

米国FARA、豪州のForeign Influence Transparency Scheme Act(FITSA)、英国のForeign Influence Registration Scheme(FIRS)、EU諸国における外国干渉対策などを参照し、「国際的に認識されているリスク」であることを示そうとする。

(2)国内事例の集積

第二に、日本国内における点状事例である。

外国政府系団体、研究資金、シンクタンク、SNS世論形成、元政治家ネットワーク、PR会社などが、「影響力行使の構造」として整理される。

もっとも、これらが日本国内において、どの程度、現実の組織的介入事例として確認されているかは別問題である。ここで重要なのは、立法担当者が、どのような「潜在的リスク構造」を制度必要性の根拠として提示しようとするかという点にある。

(3)既存法の限界

第三に、「既存法では見えない」という制度空白である。

外為法や政治資金規正法は存在するが、外国主体との関係性や、世論形成を含む影響力行使全体を可視化する制度にはなっていない。

つまり、日本版FARAにおける立法事実とは、

「外国影響力が存在する」

という一点ではなく、

「その影響力が、既存制度では十分に把握できず、民主的統治に一定のリスクを生じさせている」

という説明構造なのである。

5 制度が強くなるほど、立法事実も重くなる

もっとも、ここでさらに重要なのは、制度の“強さ”との関係である。

立法事実は、制度目的が強くなるほど、より高度な説明を要求する。

たとえば、単なる開示制度であれば、「透明性向上」という比較的弱い立法事実でも成立しやすい。

しかし、安全保障的性格を強め、登録拒否、アクセス制限、刑事罰などを伴う制度となる場合には、「現実的・継続的・組織的介入リスク」の説明が必要となる。

つまり、国家主権防御型の制度では、

「国家主権防御」

という強い制度目的を掲げる以上、

「どの程度の危険が存在するのか」

について、より強い立法事実が要求されることになる。

6 日本版FARAが直面する問題

その結果、実際の制度設計では、禁止よりも、登録・開示を制度の中心に置く構造が採用されやすい。

もっとも、各国制度は、開示制度のみで構成されるわけではない。安全保障規制、投資規制、アクセス規制などと組み合わせて運用される場合も多く、制度構造は各国で異なる。

これは、米国FARAの歴史とも重なる。

1938年制定時のFARAは、対外プロパガンダ対策色が強かったが、その後の改正や運用を通じて、現在では透明化制度としての性格を強く持つようになっている。

日本版FARAにおいても、おそらく同じ問題が現れるだろう。

すなわち、立法担当者は、

「安全保障上の危険」

を説明しながら、

同時に、

「過度な規制ではない」

ことも説明しなければならないのである。


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