あ 9話

バザー帰り・男


白い太陽の下、園児の奇声。連続する。

一列に並ぶ園児たち。
おかっぱの子は五人くらいいる。
手すりを強くつかむ、小さな手。
小さな足で一段ずつ踏みしめながら、ゆっくり階段をのぼる。
すべり台の傾斜を一瞬で下り、両足で着地。
駆け出す。
また列の最後へ戻る。

園庭で立ち話をする保護者たち。
全員、四角い通園バッグを肘にかけて持っている。

ひまわりの花壇の前に、林さん。
四角い通園バッグを斜めにかけている。
ポシェットと通園バッグ。
交差した肩紐。
カットソー越しの胸の形。
見ないようにする。

すべり台の行列に視線を移す。

「わたしAがた」「ぼくBがた」
と園児たち。

「おかあしゃんはね、いちがた」
と笑顔の園児。
左頬の真ん中に、爪の跡みたいなえくぼ。

頭のてっぺんにオレンジ色の花が乗っている。


林さんを見る。
あくびをしている。
持ちあがった左頬の真ん中。
同じ形のえくぼ。

もう一度、えくぼの園児を見る。
園児もぼくを見る。
ぼくに会釈する。

オレンジ色の丸い花が頭の上から滑り落ちた。

笑顔になる園児。
前歯が二本抜けている。
その穴に押しつけた舌。
むにょっとはみ出ている。

と、えくぼ。


肩を叩かれる。
ビクッとし、振り返る。

白目に、赤い血の塊。

「汗すごっ」
と妻。
ぼくの肩に乗せた手を自分のズボンで拭く。

柔らかな手が、ぼくの手を握った。

視線を下に向ける。

「パパ、結婚しようね」
と娘。
微笑む。

えくぼは、ない。