イノシシは危険な動物ではありません:危ない3つのケースには注意
イノシシはウリ坊だけでなく大人になっても可愛い
2022年7月に、千葉市昭和の森の太陽の広場で出会ったウリ坊の動画です。僕のYouTubeとInstagram(トップ固定)で公開しています。お好きなほうでご覧ください。
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2022/7/28 昭和の森のアイドルになったウリ坊
このウリ坊は初めて会った時は僕から逃げていきましたが、すぐに人を怖がらなくなりました。早朝ランナーのみなさんにも人気で、まさに昭和の森のアイドルになっていました。
「イノシシはウリ坊の時はかわいいけれど、大きくなると…」と言われることがあります。それは誤解で、大きくなったイノシシもかわいいです。2021年3月に昭和の森の展望台下の植込みで会った若獣の動画です。
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2021/3/23 展望台近くに現れ、帰っていった若獣
この若獣も人を怖がりませんでした。人に無関心で逃げようとしない動物は、観察が一番しやすいです(もちろん、襲ってくることもありません)。

千葉市昭和の森で25回会って危険なし
僕は昭和の森での野生動物の観察も趣味にしています。昭和の森は住宅街に隣接する都市公園ですが、イノシシだけでなく、野うさぎ、タヌキ、リスなど、意外とたくさんの野生動物に会うことができます。
イノシシは2020年秋から本格的に出ていて、僕は2021年1月~25年6月の4年半で25回出会いました(近隣の公園などを含む)。
2021年 6回
2022年 13回(うちウリ坊8回)
2023年 1回
2024年 1回
2025年 4回(うちウリ坊2回)(6月現在)
この25回は、30m以内で顔を合わせたのがほとんどですが、危険だと思ったことは一度もありません。
※ただし、後述するように危ないケースはあり、注意が必要です。
4年半の観察をまとめると以下のとおりです。
イノシシの主な習性
冬(秋から春)にやってくることが多い。夏は少ない
2021年は人に無関心で怖がらず、平気で人前で餌を探して食べていた
2022年以降の成獣・若獣は人を怖がって避けるようになった(ウリ坊だけは人に無関心だった)
昭和の森での行動
2021年は九十九里(大網白里)方面に帰っていった
2022年は園内の林に獣道がはりめぐらされた。園内に家族で住み着いた可能性が高い
2023~24年は1回ずつしか会えず、どんな行動をしていたのか、わからない
2025年前半は園内で2回会った。3月には園内で捕獲もあったと聞いている。掘り返し跡が過去最大級になり、園内に住み着いたと想像するが、獣道や林での笹ずれなど、その気配はほとんどなかった
昭和の森での掘り返し跡
掘り返し跡は、2020~22年は昭和の森の上のエリア(お花見広場、梅林など)が多かった(下の写真)
2024年後半は下のエリア(竹林、湿生植物園)が集中的に掘り返された
2025年前半はまたお花見広場が過去最大級に掘り返された

左上から時計回りに 2021/11/29→12/1→12/9→2022/1/13
2025年の下のエリア(竹林)の掘り返し跡を動画にしました。僕の音声ガイド付きです。
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2025/1/8 過去最大級!竹林のイノシシの掘り返し
僕の見る限り、管理事務所が設置する忌避剤は1週間も効果はありません。管理事務所が車で追いかけたり、棒で追い払っても崖下からすぐに戻ってくることが多いです。園内で追い払うのは、イノシシが駆けだした先に人がいる可能性もあり、望ましくないと思います。
猟友会にも相談しているそうですが、園内で銃は使えません。罠は来園者もいるので園内には設置できず、園外に設置していて、2024年は周辺でかなりたくさん捕獲されたようです(捕獲数の推移を知りたいところです)。昭和の森での目撃が減ったのは捕獲が進んだからだと推測していましたが、2025年はまた増えています。
対策をするなら、夜間センサーカメラで出入りしている頭数を調べたり、掘り返し跡の面積などを概算して、どのような対策が有効なのか、定量的に把握する必要があると思います。
昭和の森にやってくるイノシシが人を襲うことは考えられません(後述するように危ないケースはあります)。スーパーボランティアの尾畠春夫さんも「イノシシは生きた人間には基本的には手を出さないんですよ。ツキノワグマとかヒグマはやりますけどね。だから、その点は安心していた」と述べています(『魂の生き方』、南々社、2018年)。
動物写真家、矢野誠人[まさと]さんのInstagramはイノシシへの愛情に満ちています。僕もいつかウリ団子を撮ってみたいです。
※矢野誠人さんの公式サイトより「イノシシ(野生動物)に対する注意点」「イノシシ撮影を通じて私が伝えたいこと」を紹介します。日本テレビ「嗚呼!!みんなの動物園」(2023/7/29)を見た視聴者に読んでほしいことを矢野さんがまとめた文章です。
アリス組FamilyさんのYouTubeでは、離島でイノシシのゴン太やマイクロブタのニコたちと暮らす様子が発信されていました(更新は2023年8月が最後)。アリス組さんのInstagram(@alicegumi)によると、お父さんの仕事の都合で2024年8~9月に108匹といっしょに山梨県に引越したようです。ゴン太もニコも元気なようです。
『猪の文化史考古編』(新津健、雄山閣、2011年)では、2005年に山梨県で飼育されたウリ坊のハナコの話が紹介されています。ハナコは娘さんの布団で一緒に寝ていることがあったほど、家族に懐いたそうです。ある年、2月にいったん山に入って帰ってこなくなったと思ったら、何と5月にお腹を大きくして帰ってきて、「実家」で出産したとのこと。本能的に実家が安全なことがわかっていたのでしょう。
ミスリードする報道はやめてほしい
罠にかかったイノシシが、罠が外れて、人を襲うというニュースがときどきあります。僕はこれはイノシシが危険な動物だと誤解させる報道だと思います。
ANN 2023/12/13 イノシシ捕まえようとかまれる 30針縫うけが 罠破って脱出か(トップ映像は閲覧注意)
ニュースONE(東海テレビ) 2024/12/7 とどめ刺す直前に罠が外れる
1本目は2023年12月12日に千葉県館山市で起きた事件、2本目は2024年12月6日に愛知県豊田市で起きた事件を取り上げています。イノシシが罠にかかったものの、しとめる前に罠がはずれ、猟師を襲った事件です。
罠にかかったイノシシは、自分が殺されようとしているのですから、全力で罠を外そうとし、攻撃してくるのは当たり前です。僕はイノシシの正当防衛だと思います。罠が外れるようなことがないように、改良されることを祈ります。
イノシシが危険な動物かどうか、どのような対策が有効かは、狩猟とは関係のない事例で考えなければなりません。 メディアには一般市民への危害の状況をもとにした、冷静な報道を望みます。
イノシシが危ない3つのケース
もちろん、イノシシが危険なこともあります。主に次の3つのケースです。
イノシシとの出会い頭
1つ目は出会い頭です。イノシシは茂みから出てくる時に、右見て左見てなどと注意を払ってくれません。後戻りもしません。まさに猪突猛進です。
2024/11/13や2025/1/15にはJR外房線の電車がイノシシと衝突する事故も発生しました。シカと衝突することはときどきありますが、イノシシとの衝突は珍しいと思います。イノシシの活動が活発になっているのかもしれません。
環境省の発表によると、イノシシによる人身被害は2016年4月~2025年3月に494件あります(狩猟に伴うものは除く)。死亡事件は4件起きていて、うち2018年の静岡と熊本の事件は、自転車が偶然イノシシと衝突したものです。イノシシが人を襲ったわけではありません。
2021年の大阪の事件は報道によると、被害者がイノシシに襲われたことを証言していたようです(襲われたのか偶発的だったのかはわかりません)。
2022年の広島の事件は、庄原市が山林に罠を設置し、その罠を確認するために外出した80代男性が、罠の近くで倒れていたというものです。男性にはかまれた跡があり、罠にはかかった跡がありました。広島県は環境省の件数にカウントしていますが、これは狩猟に伴うものだといっていいと思います。
つまり、2016~23年度の8年間で、イノシシに襲われて死亡したと推測される事件は(狩猟に伴うものを除くと)大阪の1件だけだということです。ちなみに同期間のクマによる人身被害は966件、うち死亡事件は25件です。
尾畠さんの言うとおり、イノシシはクマとは違うということが、広く認識されてほしいです。
山から出てきてしまったイノシシ
2つ目に、イノシシが山の中とは違う環境に迷い込んでしまった時は、危ないことが多いです。山に帰る道がわからなくなってパニックになり、興奮してしまうのだと思います。
2022年7月に千葉県南房総市の海岸でサーファーがイノシシに襲われ、重傷を負う事件がありました。YouTubeにショート動画が投稿されています。このイノシシは海辺から山側に登れず、人を襲っています。
2023/10/25には、千葉市中心部にイノシシが出没し、千葉駅西口、市立美術館、出洲港など広く移動し、3人がケガをしたそうです(読売新聞2023/10/25)。イノシシは都川[みやこがわ]を伝ってオフィス街に迷い込んでしまったと推測されます。
2024/11/26には、兵庫県姫路市今宿の認定こども園で、園児や保育士がイノシシに襲われるという事件が起きました(朝日新聞2024/11/27記事)。Google Mapで見ると、姫路城から直線で3kmぐらいです。やはり、山に帰る道がわからなくなり、イノシシがパニックになったのだと思います。
2025/2/15には千葉県茂原市で散歩をしていた男性が、田んぼから出てきたイノシシに襲われるという事件が起きました(NHK2025/2/15首都圏ニュース)。この事件はショックです。男性もイノシシも接近するまでお互いに気づかず、出会い頭のようになってしまったのでしょうか。
2025/11/4から西葛西や浦安にイノシシが出没しているそうです(僕は11/15の朝日新聞で知りました)。11/7のフジテレビ「サン!シャイン」で特集しています。リンク先YouTubeの0:20に出没場所の地図、1:37で西葛西の道路をイノシシが歩いています。街に出てきてしまったイノシシはパニックになり危険な可能性が高いのですが、10日経って被害が出ていないのは奇跡です。生ごみとか餌にすることを覚えてしまったでしょうか。
2026/7/13のNHK19時のニュースで「市街地にイノシシ 2人かまれてけが 豊田」を観ました。愛知県豊田市土橋町にある会社の敷地内で男性がイノシシに襲われました。映像では、イノシシは周りに山のない環境に迷い込んでしまい、パニックになっているように観えます。空腹でいら立っていたのか。2022年7月の海辺の事件と似ていると思いました。
僕は2026/7/10に千葉市の住宅街で、イノシシと1時間半も一緒だったばかりです。ギャップがありすぎます。どのような時にイノシシが人を襲うのか、研究が必要です。
人から餌を与えられた経験のあるイノシシ
3つ目に、イノシシに限らず、クマでも、カラスでも、オオハクチョウでも、人から餌を得られることを知った動物は人を襲います。僕は昭和の森でオオハクチョウに体当たりされたことが2回あります(昭和の森のオオハクチョウは管理事務所が餌づけしていて、お腹が空くと怒りっぽくなっていました。2024年7月に行方不明になり、戻ってこなくなりました)。
イノシシの人身被害が最も多いのは兵庫県で52件です。六甲山から降りてきたイノシシが、神戸市東灘区などで被害を起こしています。過去にイノシシに餌を与えたり、生ごみを夜間に出す人がいて、人から餌を得られることを覚えた個体が人を襲っていると考えられます。人間の食べ物はイノシシにとっても美味しく、栄養満点です。
昭和の森も住宅街に接しています。今後、イノシシが住宅街に紛れ込まないとも限りません。2022年7月のウリ坊はぎりぎりのところまで移動することがあってハラハラしました。ウリ坊は見た目もかわいいので、つい餌を与えたくなる人がいてもおかしくありません。管理事務所にお願いして、「餌は厳禁」の掲示を出してもらいました。
野生動物に餌は厳禁です。イノシシが里に下りてくるのは、山に餌が少なくなったからではありません。イノシシを餌が少なくなってかわいそうなどと思いやる必要はありません。
もう1つ、イノシシが危ないと言われているケースは、ウリ坊といっしょにいる母イノシシです。僕自身はそういう場面に出くわしたことがなく、そのような場面で人身被害があったと聞いたことはありません。
ただ、昭和の森のテニスコートの管理人さんによると、ウリ坊といっしょの母イノシシに会ったことがあり、母イノシシがガチガチと歯を鳴らしていたそうです。ウリ坊がかわいいからと手を出したりすると危険だと思います。
農業とは共生できないが、昭和の森なら共生できる
イノシシは農業とは共生できません。イノシシは畑や家庭菜園に被害をもたらし、害獣とされます。千葉県の「野生鳥獣による農作物被害状況」によると、2023年度は鳥獣全体で3.3億円のうち、イノシシによるものは1.4億円(43%)もあります。SNSには生産者の悲憤に満ちた投稿が多いです(一部には共生したいという投稿もあります)。
僕の印象では、SNSのハッシュタグ「#イノシシ」で出てくる投稿は、3分の1は野生のイノシシですが、3分の1は害獣駆除、3分の1はジビエ料理で悲しくなります。
申し訳ないですが、生産者のみなさんには、電気柵で守っていただくしかないと思います。草刈りも有効です。イノシシは機械音を警戒しますし、隠れ家を減らすことにもつながります。
一方、昭和の森のような公園では(畑があるわけではなく)、接し方さえ間違えなければ、イノシシと人は共生できると思います。
千葉市緑区・若葉区では、2024年11月から2025年2月にかけて、イノシシの目撃情報が続いています。11月末、12/4,5に昭和の森に隣接する住宅街(あすみが丘東)に出たイノシシが、ずっと目撃されているのではないかと想像しています。その後、7月になっても近隣で目撃情報が続いていますが、人身被害などは報告されていません。

あすみが丘東ではパトカーが出動したようですが、警察が来ても何もできないと思います。下手に追い払おうとすると、走って逃げた先に人がいる可能性があり、かえって危ないです。人に無関心なイノシシは人を襲うことはありません。静かに見守っていればいいと思います。
2025年2月に家族が香港に旅行にいって、住宅街でイノシシに会いました。動画を送ってくれたので、YouTubeに投稿しました。たてがみもりっぱな大きなイノシシがゆうゆうと歩いています。香港ではイノシシと人が共生しています。千葉も参考にできると思います。
YouTube
2025/2/28 香港のイノシシ:人と共生
昭和の森のような周りを林に囲まれた都市公園で、イノシシが入り込まないようにする(追い出す)のは不可能です。
昭和の森の自然は、人が一度手を入れながら放置されて、杉林は荒れています。それでも小動物はたくましく生きています。
僕は2021年1月~25年6月の4年半で、イノシシは25回、野うさぎは124回、リスは7回、タヌキは37回、ハクビシンは1回出会いました。アライグマの足跡も残っています。フクロウの鳴き声もよく聴こえますから、餌となる小動物が豊富にいるのでしょう。
イノシシをはじめ、こんなにたくさんの野生動物に会える公園は、僕のような都会出身の人間には魅力的です。
千葉市HPのイノシシ情報はわかりやすい
もし、イノシシに出会ってしまったら…千葉市のHPはよくまとめられていて、わかりやすいです。
▶近づかない
▶見えないところへ離れる
▶大声を出したり、物を投げたり、追いかけない
▶餌付けをしない
▶呼び寄せるようなことをしない
HPでは、以下のようなイノシシの行動パターンも紹介しています。僕の経験からもそのとおりだと思います。
▶おくびょう、サルやシカと同じように学習能力があり、覚えが早く忘れない
▶イノシシの行動調査から、森林内よりも、集落内の田畑に隣接した耕作放棄地や森の辺縁部で、一日中暮らしており、夜間、隣接する田畑に出没することが分かってきました
▶日中は集落の耕作放棄地などの林縁(森の辺縁)にいます
▶数ヶ月の間に、いくつかの集落を移動します。ほぼ1~2km四方の行動範囲です
▶イノシシの社会は一夫多妻制の母系社会で、メスの成獣(母親)とその幼獣(仔)や姉妹などと、単独のオス成獣、そして若いオスのグループに主に分かれて行動しています
▶元来、夜行性ではありませんが、おくびょうなので人が活動する昼間を避けて、結果として夜行性となっているようです
▶イノシシは雑食性で、地表や地中を掘り起こして、ドングリ、タケノコ、昆虫、ミミズ、タニシ、カエル、ザリガニ、ヘビ、クズの根、山芋などを探して食べます。農作物(とくに水稲やイモ、落花生)はおいしく、大好物です
一番だいじなのは、1つはイノシシは基本的には臆病または人に無関心だということ、もう1つはイノシシをはじめ野生動物には絶対に餌を与えないということです。人から餌が得られることを知った野生動物は人を襲います。
香港のイノシシのYouTubeで、最後に注意の看板を載せています。香港でも看板には"Don't Feed"と一番大きく書いてあって共感します。
上記のような注意事項に加え、イノシシが出没した日時と場所、掘り返し跡が拡大している場所も地図付きでお知らせしたらいいと思います。昭和の森でも「このあたりでイノシシが目撃されている」という看板はありますが、日時が掲載されていないし、看板の内容がいつまで経っても変わらないので、参考になりません。
昭和の森で掘り返し跡が拡大しているのは、主に以下のような場所です。
梅林
紫陽花園
お花見広場
竹林
湿生植物園(田んぼを含む)
疎林広場(テニスコート手前)
休憩広場(テニスコート下)
多目的広場(野球場奥)、など

いたずらにイノシシを怖がり、排除するのではなく、昭和の森が人と野生動物が共生する公園になることを願っています。
【参考note】
❶イノシシについて最近の出来事とメディア報道から思ったことをnoteに書きました。
❷昭和の森は房総半島の3大水系がY字型に交差する中心に位置します。古代の回廊の交差点でもあり、人はもちろん、野生動物も行き来する狩猟の好適地でした。昭和の森周辺は、縄文時代の狩猟の落とし穴跡がたくさん発掘されています。
➌昭和の森での野生動物観察のnoteです。野生動物(主に哺乳類)に出会った回数を月別にまとめた表も掲載しています(毎月更新)。
(最終更新2026/8/3)
