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『インディペンデントな日々』 - 第四話 「二本足で立つ」

前回の回想では、やれインディペンデントな活動だとかDIYカルチャーの末席だとか、まあ調子のいい口調でH apartment studiosの生い立ちを綴らせてもらった。

ことの成り行きを語るという意味では、前回まででいったんの役目を終えたと言って差し支えない。なぜかと言えば、多少とっちらかっているものの、それ以降の動向、例えば第1回目のFUUD作品展を決めたあとのことなどは、インスタグラムの各アカウントで(不案内ではあるが)確認できる。

ただ、現在まで積み重ねているその構想や意図したところについてはあまり突っ込んだことを残しているわけでもないので、今回はその辺りのことをH apartment studios側の目線から綴ろうと思う。


・どのような場での催しなら足を運びたいと思うか?

リアルな場で作品を発表するということは、ぼくが絵を描く人間であることを公に知らせることでもあった。ぼくは当時、出自不明の覆面作家であろうとしていた。社会人的なつながりや生活者としてのしがらみから距離をとったところでこの活動を始めたかったからだ。なぜならFUUDという人格を、H apartment studiosという場所を、「好きなものは好き」と忖度なく言える場にしたかったから。

これは主張というよりはたんに好みの話だと思って読んでほしい。そもそもぼくの作品に市場価値はないと思っているし、これからも戦略的にその価値を高めようとは思っていない。つまりアート愛好家、コレクター、ギャラリスト一般に向けた活動ではない(無視を決め込んでいたり敵対心をもっていたりするわけではないことは断っておきたい。そういう発想を"野良"と表現している)。では、何に重ねて考えていたかと言えば、例えばインディペンデントレーベルからリリースされるレコードだ。

その原点には、やはり肌で触れてきた文化の影響が大きい。'90〜'00年代の、ローカルインディミュージックシーンといえばいいのか。中でも影響大なものとして根っこにあるのは、当時福岡で活動していた「STRIKE A MATCH」という名のディストロの存在だ。そのディストロ活動と出会えていないなら今のぼくはないだろうと思う。

レコード屋でもない個人が、国内外の好きなバンドのレコード、ファンジンなどを段ボール箱に入れてライブ会場の客にお勧めするという、その形態にぼくは大きな衝撃を受けた。え、理想的な姿じゃないか!と思った。

「これ、どんな感じすか?」と手にとる。また顔を合わせれば「あれ、どうだった?」と聞いてくれる。「じゃあ、これ、たぶん好きだと思うよ」と教えてくれる。「あー、あれ、あったけど売れちゃった。」なんてドラマも挟みつつ。

「好きなものは好き」という、わがままベースにもかかわらずのコミュニケィション。ぼくはあのディストロも来る、というライブが好きで好きでいつもたのしみだった。

時が過ぎ、そのディストロの名も聞かなくなった今、何が手元に残ったか。それはそのディストロのオーナー高井さんとぼくが共に熱中した(であろう)素晴らしきローカルインディパンク/ハードコアバンドのレコードの数々だ。そこには、ただ数を売ればいいだけのディストリビューターの存在はない。高井さん、ぼく、間にレコード。ただそれだけだ。

それともう一つが、AFTERHOURSという日本の出版/音楽レーベルの存在だ。ぼくはそのレーベルが取り上げる音楽シーンの外にいながら、そこが出版する雑誌や音源を通して"当事者の情報"を受け取ることをたのしみにしていた。レーベルが信じていたでだろう"音楽"やその他の表現、表現者の"在り方"に惹かれていた。

他にも、影響を受けたものは似たような傾向のものだけでも数え上げればキリがない。

まとめると、先述した問いの答えはこうだろう。

「STRIKE A MATCH」や「AFTERHOURS」のような、顔の見える送り手の思いがダイレクトに伝わる場での催しになら足を運びたい。

繰り返すけれどこれは主張ではない。
たんに「好み」の話だ。
だから。そんな地方都市生活者である絵描きの作品や、その絵描きが自分であつらえた展示会場が表出している「好み」に市場価値があるとは思わない。

しかし、思いはある。
理想があり、まだまだ見たい景色がある。
そういう場にしたくてぼくは第一回目の作品展を開催しようと決めた。地方都市のそのまた郊外の小さな倉庫。準備を進める。もう後戻りはしない。出しきったらそのときが幕だ。どんな結果になるのかなんてまったくわからない。冷やかされるのか、馬鹿にされるのか。はたまた誰にも知られず誰にも相手にされず、ぼくはただそこに座って期間を終えるのか。怖いと言えば怖かった。ただ、やらずに指をくわえているのは御免だとも思っていた。

「どうせ失って困ることなんてないじゃないか」
ぼくはFUUDを、H apartment studiosを、そう名乗る時間を10000%たのしむことに決めて初めての作品展の準備に取り掛かった。ぼくがフルスイングしたらそれはどんな姿なんだろう?
球は飛ぶのか?空振りか?
そんな仮説の検証が始まった。

『インディペンデントな日々』不定期連載中

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