気づきの種#13_『証言者』~“みんな”とはいったい何人なのか~
人生を楽しく生きるための『気づきの種』を“短い物語”にしてみました。
「投資」「習慣」「幸福」「考え方」などが中心ですので楽しんでもらえましたら何よりです!
『証言者』~“みんな”とはいったい何人なのか~
「みんなが言ってますよ、福助(ふくすけ)さん」
朝礼後、隣の席の同僚、田中が深刻な顔で言ってきた。
福助はコップを傾けながら、「みんな、ねえ」と聞き返す。
最近、職場の改善案として出された新しい勤怠管理システムに対する不満が渦巻いているらしい。
「ええ、もう大ブーイングですよ。こんな複雑なシステム、誰も使いこなせないって」
田中は身振り手振りを交えて訴える。
福助は苦笑いするしかなかった。新しいシステム導入の話が出た時から、一部で反対の声は上がっていたが、ここまで広まっているとは知らなかった。
「具体的には、誰と誰が言ってるんだい?」と福助は尋ねた。
田中の勢いは少し止まった。
「えっと…、まず僕と、それから吉田さんと、あと木村さんもそう言ってましたね。あ、そうだ、昨日、小林さんも難しいって言ってました」
福助は心の中で人数を数えた。四人か。
「なるほど。他に誰かいたかい?」
田中は腕を組んで考え込んだ。
「うーん…、そういえば、朝、渡辺さんがため息をついていたような…。多分、同じ意見だと思いますよ」
「渡辺さんは直接、文句を言っていたわけじゃないんだね?」
「まあ、そうですけど…、あの様子じゃあ、不満に思っているのは間違いないでしょう」
福助はさらに問い詰めた。
「他に、『みんな』の中に含まれる人はいるかい?」
田中は少し焦ったように周りを見回した。
「うーん、どうだろう…。でも、あの雰囲気じゃ、他の人もきっとそう思っているはずですよ!わざわざ口に出さないだけで」
福助は湯呑みを置き、ゆっくりと立ち上がった。
「ありがとう、田中さん。よく分かったよ」
昼休み、福助は人事部長の元へ向かった。
「部長、例の勤怠管理システムの件ですが…」
人事部長はうんざりした顔で答えた。
「ああ、聞いてますよ。一部から不満が出ているようですね」
「はい。それで、具体的に何名の方が不満を訴えているか、把握されていますでしょうか?」
人事部長は書類の山から一枚のメモを取り出した。
「ええと…、直接、私のところに連絡があったのは、田中さんと吉田さんと、小林さんの三人ですね」
福助は目を瞬かせた。「三人、ですか?」
「ええ。木村さんからは特に連絡はありません。渡辺さんは、今朝、少し質問に来られましたが、不満というよりは操作方法が分からなかっただけのようです」
福助は朝の田中の言葉を思い返した。
「なるほどな」と小さく呟いた。
昼食後、福助は田中を呼び出した。
「田中さん、『みんなが言っている』って、具体的には君と、吉田さんと、小林さんの三人だったんだね」
田中は顔を赤らめた。
「え、まあ…、でも、渡辺さんも…」
「渡辺さんは、不満を言ったわけじゃない。木村さんは人事部長に何も言っていない。つまり、『みんな』と言っていたのは、君を含めて三人だったんだ」
田中は言葉を失った。
福助は静かに続けた。
「もちろん、不満を持つことは悪いことじゃない。でもね、『みんな』という言葉は、あたかも大勢が同じ意見を持っているように聞こえてしまう。実際にはそうじゃないこともあるんだよ。誰かが『みんな』と言ったら、一度立ち止まって、本当にそうなのか確認してみることも大切かもしれないね」
田中は深く頷いた。
その日以来、職場で「みんなが言っている」という言葉が飛び交う回数は、心なしか減ったような気がした。
そして、誰かが『みんな』と言ってしまった時、「具体的には誰と誰?」と尋ねる声も時折聞こえるようになった。
【あとがき】

↓単なる私の感想などなど…↓
多くの人が集まる場所では多くの意見があります。
特に利害が発生しやすい職場では意見が分かれる場合がよくあります。
賛成する人、否定する人、どちらでもない人・・・。
私はいつも、賛成が2割、否定が2割、どちらでもないが6割くらいがベースであり、どちらでもないの6割の人がどちらに傾くかで大きな意見になると考え行動しています。
(最初から否定的な意見がある前提で考えています)
このように、多くの人がいる中で意見を確認していると、賛成派または否定派から、「みんなが言っている」や「○○という意見が多い」などの具体的な数字は無いけれど、多くの人があたかも言っているので、その意見に従った方が良いと連想させたがる意見が“多く”出てきます。
(←まさにここで記載したような具体的な数字のない“多く”のような使われ方です・・・)
余談ですが・・・
私は多数決こそ、最も合理的ではない(正しい方向に進まない)決め方だと考えています。
世の中には、IQの高い人、普通の人、IQの低い人まで様々な人がいますが、その分布は、両端のIQの高い人とIQの低い人の割合が少なく、普通の人が多くなっています。
合理的に考えれば、私のような凡人の意見ではなく、IQの高い人の意見を尊重すれば合理的に進むことは明白ですが、なかなかそのようにはなっていません…。
何かを決める際、多くの人の意見が尊重されるのならば・・・
みんなが言っているの”みんな”は意外に少ない場合があるので、「みんなが言っている」と言った意見が出たときは、具体的に誰と誰と誰が言っているのか聞いてみてください。
聞いてみることで、“みんな”の総数が意外と少ないという事実も判明するかもしれません・・・。
ゼロよりイチ!
今日の一歩が幸福を複利で増やす原動力です!
みんなで幸せになりましょう!
ではまたっ!!
#01-#20(全20話)
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