見出し画像

美術館学芸員の研究事情その2

前回からの続きです。

紀要を刊行しない美術館に所属することになった学芸員(というか私)。「1年に最低1本論文を書く」というノルマを達成するためのハードルが上がりました。

さらにまずいことに、これも予算の少ない美術館ではありがちなことなのですが、展覧会は行ったとしても必ずしも展覧会図録は発行しないという美術館でもありました。

「なんでまた、わざわざそんな美術館に行ったの?」と疑問に思う人もいるかもしれませんね。それについては過去記事で軽く語っています。

紀要、展覧会図録というこの2つは、いわば自社メディアです。

もちろん自分たちで刊行しているからと言って、好き勝手自由に何でも書けるわけではなく、上司や先輩学芸員たちの厳しいチェックがあるので、場合によっては論文掲載見送りということもあります。
それでも、論文を書いて発表しようという意思さえあれば基本的に発表できる場があるというのは良いものです。

この自社メディアという手が使えないわけです。さて、どうしましょう。困りました。

たとえ自社メディアが無くても、論文を発表することは可能です。一般論から話を始めましょう。

まず学会誌というものがあります。
学芸員の多くは、美術史学会に入っています。日本では一番大きな美術史関係の学会です(西洋、東洋、日本すべて含む)。
学会には学会誌というものがあります。美術史学会なら『美術史』という学会誌を年2回発行しています。
学会で口頭発表して、その内容を論文にまとめて投稿して、査読委員に承認された上で学会誌に論文が掲載されるというのが基本的な流れです。

学会誌は査読付きなので格式は高いのですが、何百人という会員がいるので毎年毎年同じ人の論文が掲載されることはあり得ません。

美術史学会以外でも、もう少し時代やテーマをしぼった学会もあります。だいたいどの学会でも学会誌を作っているので、会員であれば論文を投稿する権利があります。

また、各大学でも紀要や研究誌を発行しています。さらに美術史が強い大学だと、大学独自の美術史学会(会員は基本その大学の出身者)があり、ちゃんと学会誌も刊行しています。
こうした大学紀要や大学独自の学会誌に投稿するというのも手ですね。ただ、これだって毎号毎号同じ人間が論文を発表するということはまずありません。

ようするに、複数の場に所属しておいて(そのために年会費を払って)、論文を発表できるチャネルを確保しておく、というのが自社メディアを持たない者の処世術ということになります。

しかし想像してもらうとわかるように、これはなかなかの綱渡りです。学会費も馬鹿にならないので、所属する学会を増やすのにも限界があります。まぁ、そうやって苦労しながらがんばっている研究者は多いのですけどね。

では次に、実際私はどうしたのか、という話をしましょう。

ここから先は

1,339字
この記事のみ ¥ 500
Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

2025年中にあと何本有料記事を書くか分かりませんが、現時点(2月半ば)ですでに有料記事を個別に購入するよりお得なので、これから先は出れば出るほどお得になっていきます。もちろん気になる記事だけ単体で購入したいという人はそちらでも。

2025年に配信する限定記事がすべて読めるお得版です。

Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで