図録編集の舞台裏、色校正のリアル
えーと、今日は学芸員の小話をひとつ。
展覧会を開催する時には、展覧会図録を作ります。図録についてはこれまでも触れてきたので、いまさら説明する必要はないでしょう。
学芸員によって図録でこだわるポイントは違いますが、多くの学芸員が細心の注意を払うのが作品図版の色です。どれだけ実物に近い色を誌面で再現できるか、という点は強く意識しています。
展覧会ですごい心に響く絵を見て、家に帰ってもまたその感動を味わいたいと思ってせっかく図録を買ったのに、ページを開いてみたら全然ちがう色味の図版が載っている。そんなことになったら悲しいじゃないですか。
だから図録編集作業の中でも色校正は、気合いを入れてやります。
かつては、図録に掲載する作品図版はポジフィルムで入稿していました。ポジフィルムを印刷会社に渡して、製版データを作成してもらうのです。
でも今はご存じの通り、作品の撮影はすべてデジタルカメラで行うので、入稿するのもデジタルの画像データです。
フィルムとデジタル、両方を経験してきた私からすると、デジタル入稿になってから色校正の難易度がぐっと上がりました。「下がった」じゃなく「上がった」です。
フィルムにしろ、デジタル画像にしろ、入稿してしばらくすると印刷した校正紙ができあがります。本番と同じ紙に同じ印刷機で刷った本機校正と、プリンタで出力した簡易校正とがありますが、いずれにしてもその校正紙をみて図版の色味や版ズレの有無をチェックします(もちろん文字校正もこれとは別にやります)。
この色校正の段階で「なんか色味がおかしい……」となった場合、フィルムの時代なら学芸員と印刷会社の担当者の双方でもう一度フィルム自体を確認して、フィルムと校正紙をつきあわせればどこを修正すればいいか、一発でお互いに理解することができました。やっぱり現物があるって強いです。
でもこれがデジタル画像の場合、そう簡単にいかないのです。私の経験上、デジタル入稿の方がいざ出てきた校正紙を確認した時に「なんじゃこの色は!?」と驚くことが多いです。
デジタル画像ですから、フィルムのように現物と校正紙を見比べて「この色に近づけて」と指示することができません。デジタル画像はディスプレイが違えば色味が変わりますし、出力するプリンタによっても色味が変わってしまいます。
つまり「絶対これが正しい!」という基準になるものがないのです。
いや、もちろんカラーチャートを作品と一緒に入れて撮影しているので、それを参考にはしますよ。でもデータ上でカラーチャートに合わせた色調整をすれば、それで正確な色が印刷上で再現できるという簡単な話でもないのです。
結局、色校正を数回繰り返して、少しずつ納得いく色に近づけていく地道な作業が必要になります。ただ、色校正の回数が増えれば増えるほど費用はかさむので、無制限に校正ができるわけではありません(当たり前か)。
最後の最後は、「あとは印刷でいい具合にいきますように!」となかば神頼みでGOサインを出すことになります。そしてハラハラしながら納品を待つ、そんな日々です。今度、美術館に行って図録を手に取った時は、そんなことを思い出してください。
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\発売まであと10日ちょい!/
