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作品を借りる時(貸す時)のコンディションチェックの話

学芸員が作品を貸す時、借りる時、どちらにしても必ず行うのが作品のコンディションチェックです。
前にも軽く触れたことがありますね。

作品を借りてきて、展示して、また返却する。それは作品にとっては、長時間の輸送、温湿度などの環境変化を意味します。どれだけ万全を期しても破損や状態悪化といった一定のリスクがあります。

だから、展覧会出品の前と後で作品に変化が出ていないかをチェックする必要があるのです。

具体的に何をするかというと、まず集荷の時に、借りる側の学芸員と貸す側(所蔵者)の学芸員の両名で、作品の状態をつぶさに観察します。
どのようなダメージがあるか(絵具の剥落、亀裂、変形、変色、虫食い、シミなど)を記録します。また、所蔵者から作品の取り扱いに関する注意事項を聞くこともあります。
そして展覧会が終わって作品を返却する時も、やはり双方の学芸員が作品をチェックし、異常が無いかを確認するのです。

これが基本的な流れです。全国どこの美術館でも行われています。
ただ実際のやり方は、結構人によって、または館によって違うのが面白いところです。

ひとつは作品コンディションの記録方法です。
作品を借りる側が調書というものを用意します。書式のフォーマットができあがっていて、どんな作品でもそれを一貫して使用する美術館もありますし、作品の図版をコピーしたプリントに書き込んでいく美術館もあります。

また、これに写真を組み合わせる場合もあります。作品の中で状態が不安な箇所を重点的に撮影しておけば、後で確認する時に役立ちますからね。
いまは、調書+撮影が王道かな。でも、撮影のやり過ぎは注意が必要です。時々、むやみやたらに写真を何枚も撮りまくる人がいます。隈無く記録しておきたい気持ちはわかるのですが、「自分の目に自信がないのかな」と思われかねません。
あくまで「ここはちょっと危ないな。ダメージが進行する可能性があるな」という箇所にしぼって撮影をした方がいいでしょう。

逆に写真に頼らず、徹底的に調書に書き込むタイプの人もいます。これも度が過ぎると、よろしくありません。
なぜなら、切りが無いからです。古い時代の作品なんて、経年劣化でそれはもう無数の細かなダメージがあります。それを残さず記録する(具体的には作品の図版に赤鉛筆でダメージの箇所と具体的な症状を記入する)なんて、どれだけ時間が合っても足りません。
だからここでも取捨選択が必要になります。例えば、画面に点々と浮き出た古いシミ。それは会期中のたかだか1、2ヶ月で変化することはありえません。
コンディションチェックをする目的は、展覧会出品の前と後で作品に変化が出ていないかを見極めるためですから、変化が起きる可能性がほとんどないものまで書き込まなくてもいいのです。
絵具に亀裂が入って、若干支持体(紙とかキャンバスのこと)から浮き上がってきている。これは場合によっては、ポロッと絵具が剥がれ落ちる可能性があるので、要注意箇所としてチェックする。そんな感じです。

借りる作品が2、3点なら点検と梱包で1、2時間みておけばいいのですが、大がかりな展覧会で何十点もまとめて作品が動くような場合は、このコンディションチェックだけで2日間ぐらい日数を確保しなければいけない時もあります。
だいたいは、日通やヤマトの美術品専門スタッフと一緒になって、学芸員がチェックを終えたら梱包をしてもらう、その間に次の作品のチェックを始める、みたいな流れです。

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このコンディションチェックを行っている時の所作を見て、学芸員同士「むむ、できるな」とか「ちょっと危なっかしいな」とか力量を見定めているのです。そういう意味では、怖い時間です(笑)。



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