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展覧会ができるまで(美術館の舞台裏)vol.12【原稿を書く】

美術館で展覧会が開催されるまでの工程を、学芸員の立場からひとつひとつ解説していくコーナーです。案外読んでもらえているのでうれしいです。

前回の記事↓

全工程はこちら(↓)をご覧ください。

18. 図録や作品解説の原稿を書く

さてさて、展覧会の準備もだいぶ進んできましたね。

展覧会が学芸員ひとりではなく、いろいろな人(プロフェッショナル)の力を借りて出来上がっていくんだってこと、何となく伝わってますでしょうか?
よその美術館、コレクター、輸送業者、印刷会社、デザイナー、展示施工会社などなど、細かく挙げ出すと切りがありません。

でも、展覧会を担当する学芸員が、どうしても自分の力だけでやらなくてはいけないことがあります。

それが原稿執筆です。

こればかりは「代わりに誰かやって」というわけにはいきません。

実は展覧会を開催するためには、かなり大量のテキストが必要になります。

一番比重が大きいのは、展覧会図録に掲載するテキストでしょう。
みなさん、お手持ちの図録を一冊ひらいてみてください。

  • あいさつ文

  • 展覧会テーマに関する論考

  • 作品図版

  • 作品解説

  • コラム

  • 関連テキスト(年表、用語解説、参考文献など)

オーソドックスな図録は、だいたいこんな構成になっているのではないでしょうか。
作品図版以外は、すべてテキストです。つまりせっせと文章を綴らなくてはいけないということです。

論文に近いかっちりとした文章、読みやすさを重視したくだけた文章。
展覧会の性格によって、このあたりは変わってきます。

「展覧会は一度きり」という話は、前に書きました。

図録がなければ、展覧会は流れ去っていくのみで、終わってしまえばもはや跡形もありません。
図録という形で残していくからこそ、美術館の歩みがきちんとアーカイブになるのです。それは展覧会を行った美術館だけでなく、図録を買ってくれた人、図録を献本した外部の図書館や美術館にも、記録されていくということです。

「展覧会は刹那的、だから図録を作るのです」

そう、図録とは展覧会のアーカイブであり、特定の作家の展覧会であれば、「カタログ・レゾネ」(総作品目録)とまではいかないものの、その作家について調べたいと思う人にとっての参考文献たり得るように、しっかりと正確な情報をまとめなくてはいけないのです。

図録の他にも、展示室に設置する作品キャプションや解説パネルの文章も必要です(ある程度、図録の原稿を流用できるとしても)。

これらの文章は、エッセイではありませんから、当然ながら学芸員の感想文を書いても仕方がありません。
作品一点一点をきっちり調査し、先行研究の書籍や論文に目を通し、うんうん頭を悩ませながら、わかりやすい解説文章の形に整えていくのです。

こうした原稿執筆は、勤務時間内にも行うのですが、実際にはずっと机に座って原稿だけ書いているわけにもいきません。他にもやることは山積みですからね。
また文章はこだわり始めるときりがありません。推敲といえば聞こえがいいですが、てにをはから始まり、細かな表現のニュアンスまで「やっぱりこうした方がいいかな」「あ、この部分も気になるな」と延々と微修正を繰り返すことになります。
ここまで来ると、自己満足の領域に入ってきます。なので、勤務時間外のたとえば通勤電車の中、出勤前の早朝や、家族が寝静まった後の深夜などにカリカリと文章に赤を入れることもしばしば。

そんなわけで、展覧会準備の中でとりわけ苦しく、また楽しくもあるのが、この原稿執筆なのです。

つづく

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