展覧会ができるまで(美術館の舞台裏)vol.13【プレスリリース・広告出稿】
美術館で展覧会が開催されるまでの工程を、学芸員の立場からひとつひとつ解説していくコーナーです。案外読んでもらえているのでうれしいです。
前回の記事↓
全工程はこちら(↓)をご覧ください。
19. プレスリリースを作成し発送する
広報物や図録の作成も進み、展覧会準備もだいぶ終盤にさしかかってきました。
がんばって形にしてきた展覧会、なるべく多くの人に見てもらいたいというのが、担当学芸員の素直な気持ちです。
内容のある展覧会をすれば、おのずとお客さんはやってくる、というのは幻想です。
「チラシ、ポスターを制作する」の回でも言いましたが、そもそも中を見てもらわなければ、良い展覧会かどうか判断してもらえませんからね。まずは興味を持って、一歩足を踏み入れてもらわなければいけないわけです。
さて、というわけで広報だってがんばらなくてはいけません。
美術館に広報室や広報部など専属スタッフがいるところは珍しいです。
東京国立博物館や国立新美術館などの国公立の大きめのところか、私立の一部ぐらいですね。それ以外の多くの美術館は、学芸員や事務、総務の職員が業務の一環として広報を行います。
まず、お金がかからない戦法として、プレスリリースの発送があります(あ、郵送費はかかるか)。
プレスリリースというのは、展覧会の内容をまとめた報道向けのペーパーです。
長すぎても読んでもらえないので、A4で3、4枚ぐらいが多いでしょうか。
美術館のWEBサイトで誰でもダウンロードできるようにしているところもあるので、見たことがある人もいるかもしれませんね。
展覧会の基本情報や概要のほか、できれば見所やキーワードで短くポイントをまとめ、主な出品作品の画像をいくつか掲載します。展覧会開幕前に内覧会をやるなら、その案内もいれておきます。
で、取材申し込み受付の連絡先を書いておいて、これをマスコミ各社に一斉に送りつけます。
大手新聞社の文化部や地方担当、地域特化の新聞やテレビ局、美術系雑誌の編集部などが主要な送り先ですね。
予算があれば、PR TIMESのようなプレスリリース配信サービスで、さらに広く発信するのもいいでしょう。
この他、これまで取材にきてくれたことがある記者さん個人にお知らせをすることもあります。結局これが一番効果的かもしれません。
20. 広告を出稿する
プレスリリースで興味をもってもらい、取材が入り、各媒体で展覧会が紹介される。そうなれば言うことなしですが、そんなに甘くはありません。
マスコミ(特にローカル系)は常に報道するネタを探してはいるのですが、どこも経営が厳しいのか、そうホイホイと無料で紹介はしれくれません。
よく言われるのが、「広告を出稿してもらえたら、(広告以外の部分でも)少しページを割いて特集しますよ」というやつ。むこうも商売ですからね。
このさじ加減が難しくて、一切広告を出さない、お金はびた一文払いませんスタンスの美術館だと認識されてしまうと、それこそ紹介してくれるチャンスはなくなってしまいます。
毎回ではなくても、たまに「じゃあ、今回は広告出しましょうか」とやっていると、向こうも邪険にはできなくなるので、「今回は広告なくても紹介させてもらいますよ」みたいなことになります。うーん、大人のかけひき(笑)。
広告費は、媒体によってピンキリです。朝日、日経、毎日、読売などのメジャー誌は地方版に小さく出すだけでも、ウン十万円かかりますし、部数の出ている美術雑誌『藝術新潮』や『美術手帖』なんかも1/2ページ使うだけでも、相当かかります。
もう少しマイナー誌になると、広告費はぐっと低くなるのですが、当然効果も薄くなります。難しいところです。
この他に、WEBマーケティングやSNSマーケティングも手段のひとつです。Google検索したらスポンサー枠で一番上に表示されるのとか、Twitterで「プロモーション」とか言って勝手に表示されるやつ、ありますよね。
ただ、どういうキーワードに対して表示するように設定するかとか、ターゲットをどのあたりにするかとか、効果測定とか、これこそ専属でできる人員がいないとなかなか現実には難しいですね。
実際、展覧会でこうした手法をとっているのは、大手メディアが共催で入っている展覧会、実質そのメディアの文化部が広報を担当しているようなケースに限られます。
というわけで、予算規模の少ない美術館はあれこれ苦労しながら、なんとか多くの人に情報を届けようとしているのです。
駅のホームにある巨大広告や電車の車内広告で、展覧会の広告が出ているのを見ると「(予算規模が)えぐい…!」とある種の感動を覚えます(笑)。
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