展覧会ができるまで(美術館の舞台裏)vol.7
美術館で展覧会が開催されるまでの工程を、学芸員の立場からひとつひとつ解説していくコーナーです(前回の記事)。
さぁ、先も長いのでサクサクいきましょう!
全工程はこちら(↓)をご覧ください。
13. 作品の写真・画像データを集める、または撮影する
展覧会をするとなると、必ず作らなくてはいけないのが、宣伝用のチラシやポスターです。それから展覧会図録も大抵の場合つくりますよね。
そこで必要になるのが、展示する作品の写真です。
図録には展示作品すべての図版を載せるのが基本ですし、広報物にも代表作を何点か掲載します。作品の全体像を使うほか、デザイン(広報物や図録の表紙)の素材としても使用します。

ほかの美術館から借用する作品に関しては、写真も一緒にお借りします(参照「10. 正式な借用依頼を提出する」)。
その写真は、美術館によってポジフィルムの場合もあれば、画像データの場合もあります。いまは大半は画像データで管理しているので、データを送ってもらうことが多いですね。
ポジフィルムしかない場合は、そのフィルム自体をお借りすることもありますが、フィルムをスキャニングしてデータ化したものを提供してもらうこともあります。スキャニングの実費だけ請求されることも。
まぁ、いずれにしても美術館の所蔵している作品であれば、基本的に作品写真はあります。だからその写真をお借りすればいいのですが、個人コレクターの所蔵品だとそもそも作品の写真がない、というパターンが少なくありません。
また、現代アーティストが新しく創作した作品も、当然図録に載せるための写真がまだありません。
他にも、昔撮影したフィルムはあるけれど、だいぶ変色・退色が進んでしまっていて使用に耐えない。そんなことだってあります。
そうした場合は、新規撮影を行います。
誰がやるか?
学芸員が行う場合と、プロのカメラマンが行う場合があります。
かつては展覧会図録と言っても、本当にペラペラの小冊子、パンフレットのようなものでした。
展示作品がすべて載っているわけでもなく、図版もモノクロ(一部だけカラーだったり)という例が珍しくありませんでした。
そのため著作権のある作品に関しても、例外的に著作権者の許可をとらずに使用することができました。そのあたり詳しくはこちら(↓)。
さて、そんなのどかな時代であれば、学芸員が素人に毛の生えた程度の撮影技術で、作品の撮影をしてもよかったのですが、昨今の図録を見てもらえば分かる通り、本としてのクオリティが上がりすぎて、そうもいかなくなってきました。
というわけで、今は学芸員が撮影するとしても、参考資料程度のもの(作品以外のたとえば書簡や文献資料など)ぐらいですかね。
もちろんどうしても予算がかけられず、撮影もすべて学芸員が行っているところもあるとは思いますが(あとプロ顔負けの撮影技術を学芸員が身につけている場合)。
しかし、やはりプロにお願いすることの方が一般的ですね。
カメラマンも千差万別。人によって得意とする撮影対象が違いますし、出来上がる写真にも人それぞれ癖がでます。
それは照明の当て方など色々な要素が影響しているのでしょう。
それでも平面作品はそこまで違いがでません。
しかし立体作品の撮影になると、照明でどのような陰影をつけるのか、またはなるべく影の表情を出さないのか、素材の質感を強調するのかしないのか、どの角度で撮影するのか、などなどカメラマンの技量の差がはっきりと浮き彫りになります。
いろいろなプロと仕事をしながら、その人その人の特徴をつかみ、撮影する作品の内容によってベストな人にお願いできるようになるのが理想です。
まぁ実際は撮影予算も関わってくるので、いつでも理想の人にお願いできるわけではないのですが…。
撮影するとなると、日程と場所をおさえます。
美術館に専用の写場が一室あるなら簡単ですが、そんなところばかりではありません(むしろ少数)。その都度、使える場所でセットを組んでもらって撮影を行います。
会議室だったり、美術館のバックヤードだったり、休館中の展示室だったり。
場所がおさえられる日程と、依頼するカメラマンの日程をうまく合わせて、いざ撮影です。
撮影時には、学芸員が作品を収蔵庫から出してきて、セットを組んだ場所に設置します。また学芸員は、どのような写真が必要なのか、きちんとイメージをカメラマンに伝えなくてはいけません。
というわけで、撮影中はつきっきりになります。
いまはデジタルカメラなので、撮影したその場で撮影画像を確認できます。
確認して、修正指示やOKを出すのも学芸員の仕事です。
撮影はだいたい一日仕事で、点数が多いと数日かかりっきりになることもあります。
こうして出来上がった写真を使って、この後広報物や図録を作成することになります。
