ギャーっと叫びたくなる、グ劣な戦慄ホラー体験談! あらすじ 第1話 恐怖! 時代遅れの幽霊・川村貞緒!
主にこの小説を構成する要素であり、想定している読者層
①ギャグ
に興味のある層向け。
現代日本に似た世界には、どこかで聞いたことがあるような名前の、なにかヘンテコな怪異ばかり?
当然そんな異形に抗う霊能者も、常識を置き去りにした連中揃いで、まともな幽霊退治など行われるはずもなく……
濃すぎる脇役も含めた最高にグ劣で、しょうもなくて、たまにしんみりしてしまう話の数々が、読者の腹筋に襲いかかる!!!
以下、作者(?がらくた)からの注意書き
基本的には3人称1元視点のギャグホラー小説となります。
この小説は各種小説投稿サイトに投稿されています。
日本のどこかにある、六畳一間のとある部屋。
中肉中背の男がムフフで、エッティで、人体の一部分がイライラし、見終わった後にちょっと疲れる不思議なDVDをセットする。
そして夜の娯楽タイムに入ろうとしていた。
壁の薄い年季の入った安アパートの一室も、夜の帳が降りた世界同様に暗黒で満たされている。
普段は隣人のゲームの結果に一喜一憂する声や、生活音が嫌でも聞こえてくる。
こういうのはお互い様だから何も言わないようにしており、トラブルも起きてはいない。
けれども逢うと顔色をじろじろと舐め回すように見てきて……いや、実際に顔の血を舐め回されたこともあり、言葉を逃さずにいえば不快だった。
だが今夜に限っては、隣室からは物音ひとつしない。
鳥や昆虫の鳴き声すらしない、不気味なほどの静寂。
まるで異空間にでも送り込まれたのかと、そんな荒唐無稽な想像をせずにはいられなかった。
「……まぁ、その方が都合いいけどな」
いつもは在宅中か気にしてしまうが、今は己の欲望に正直でいいだろう。
ベッドに寝そべりながらほくそ笑んで音量を上げた、そのとき。
突然スマホから妙な着信音が鳴り響いた。
「きっといく、いけたらいく、貞緒は白く、Oooh……♪」
聞き覚えのない不気味な歌に、男は戦慄した。
着信音に設定したのは、般若心経のはずなのに……
瞬間、最悪の事態が頭を過った。
誰か侵入しているのでは……慌てて電気をつけて部屋を見回すも、恐れていたような人の影はなかった。
黒闇の中で人間に見えていたものは、人間サイズの姿見やベランダに干した風に煽られる仕事着だったらしい。
隠れる場所があるほど、広い部屋でもあるまい。
取り越し苦労かと胸を撫で下ろすが、ふとテレビ画面を見ると、砂嵐が発生していた。
―――やはりおかしい。
再生していたのは、そんな作品ではないはずだ。
電子機器の不調にリモコンに手を伸ばした瞬間、画面は川辺の映像に切り替わる。
ここはいったい……だが恐れよりも好奇心が勝り、何もせず見守るうちに画面は暗転……やがて白装束の黒髪の女が現れた。
川の水分を吸ったのだろう。
全身がびしょぬれで服越しからでも体のラインがわかるほど、だ。
「うわっ……っ!」
咄嗟に悲鳴を上げる。
けれども釘付けになった瞳は、強力な接着剤でくっついたようにテレビから離れない。
目を見張る間にも画面が切り替わるたび、徐々に女の姿が近づいてくる。
次の瞬間―――画面から次元を超え、女が這い出した!
―――男の叫び声がアパートに響き渡ると、その金切り声に呼応するように外に植えられた木々から、木の葉が舞い散った……
翌日、昨夜の悲鳴と無断での休みを不審に思った近隣住民と、仕事仲間が通報。
すると部屋の中で仰向けにひっくり返り、恥部丸出しのカエルを思わせるポーズで男の死体が発見された。
白目を剥いて舌を出し、恍惚とした笑顔。
さらには両手でピースをした奇妙な姿は、その不可解な死に様と相俟って、一度見れば忘れようがない。
外傷はないため警察は死因を特定できず、手をこまねいていた。
だがその惨たらしい遺体に、同情を禁じ得なかった。
「こんな姿で逝くなんて……男の面目、丸潰れです!」
「これは一族の汚点になってしまいますよ……」
「親やペットが亡くなっても、何の感情も沸かないが……
口にするのもおぞましい非道、許せねぇよなぁ、犯人!
これが人のやることか!」
「犯人探し、躊躇ってるヤツいる?
いるはずねぇよなぁッ!」
義憤に駆られ、学生のようなノリとライブ感で捜査に励む。
そんな彼らではあるが事件性は証明できず、すぐ不幸な事故と片付けられた。
やがて住民の間でこれは幽霊の仕業だと噂が流れ、その状況をある人物が憂う。
「……どうにかせにゃな」
顔に皺が増え、頭髪に白髪の混じった、清涼感ある水色の長袖に白の長ズボンを履く壮年の男性が呟いた。
大家である。
ただでさえ未滞納者や家賃の支払いが遅れる人物がいて、収入が安定しないというに、そこに幽霊騒ぎと事故物件の打撃。
早々に手を打たねばなるまい。
しかしながら大家は幽霊を祓う人間、いわゆる霊能者など信用していなかった。
そんなわけでインターネットを介し、格安で雇える霊能者3名を呼び寄せた。
簡潔な紹介文には衝撃的な文言ばかりが並べられていたが、おそらく気のせいだろう。
1人目はユゥリン尿前(しとまえ)。
――常に携帯した聖なる小便を武器とする、頻尿の青年。
悪霊を不浄にて祓う新参霊能者だ。
特段見た目に変わった部分はないが、とんだ核爆弾である。
2人目はスメル吉臭(よしざわ)。
風呂キャンセル界隈に君臨する王の中年。
悪霊祓い界隈の異端児であり、常人には理解不能のこだわりを堅持し続ける。
けれども、その実力は侮れないという。
3人目は王慧(ワン・フェイ)..
一見してスレンダーで筋肉質な、旗袍(チーパオ)に身を包んだ美人の中国人霊能者。
この3人の中では最も信用できそうな人物だが、はたして……
大家とて、決して裕福ではない。
背に腹は代えられず、大家はこのトリオに頼るしかなかった。
悪霊祓い当日。
大家の暮らすアパートの一室の扉が叩かれて
「依頼をいただいた霊能者ですが」
と声がした。
急いで開くと彼らの顔を見るより先に強烈な刺激臭が届き、大家は両眼を抱えながら悶絶してしまう。
少し匂っただけで鼻を通して全身に悪臭が体を巡る。
猛獣と相対した時のような、人体が思わず警戒信号が送るほどの臭気だ。
なるほど、スメル吉臭という人物が風呂に入っていないというのは本当らしい。
なんとか目を開けると、淡い黄髪に金色の瞳の青年がハンカチを貸してくれた。
白のポロシャツに紺の長ズボンと無難な出で立ちだ。
「……君、ありがとう」
悶絶していると花を散りばめたような刺繍がされた紅のチャイナドレスに身を包む、肩まで伸びた黒髪の女性が
「すいません。この臭い人は気にしないで」
と、代わりに頭を下げて謝罪した。
やや喋り方に訛りがあり、アジア人だと察しがついた。
おそらく中国人だろう。
手に酒瓶を持っているのは気になるが……
思ったより、この2人は普通かもしれない。
臭い人と言われた肝心の中年の髪はボサボサで、油の汚れが染み付いたような黒ずんだ服を纏い、見るからに不潔だった。
口を尖らせて怒ったような素振りだが腹が立っているのはこっちだ。
そう言いたい気持ちを押し殺し
「あ、ああ……例の部屋に案内しますよ」
鼻をつまみながら大家は階段を上がった。
ついていった霊能者3名は、さっそく現場入りする。
ユゥリン尿前と名乗る青年は、ビデオデッキを見るや否や険しい顔をみせた。
何かを感じ取ったのだろうか?
彼に訊ねようとした瞬間、2Lのペットボトルに入った炭酸飲料を飲む。
すると―――なんとズボンをずりさげて、テレビ前に堂々と放尿を開始したではないか!
流石に大家も無視はできず
「ちょ、ちょっと!
何してんだ、あんた!
トイレでやれよ、常識ねぇのか!?」
大家が怒鳴り込むも、ユゥリンは眉を寄せ、睨むような剣幕に
「既にここの住民は亡くなったじゃないですか!
こうでもしないと、また次の犠牲者が出ちゃいますよ!」
「……うっ、わかりましたよ。
でも、テレビに直でかけないでくださいよ!」
渋々納得した大家は条件を出し、ユゥリンもそれを了承。
準備を終えた3人組がDVDをセットすると―――例の妙な着信音が鳴り出した。
もちろん誰一人として馴染みがなく、一行は顔を見合わせる。
「きっといく、いけたらいく……」
ほどなく砂嵐が発生し、ソファに腰掛けていたスメル吉臭が
「こ、こえぇな……!」
みっともなく震えながらも座り続け、画面を凝視する。
王慧は傍らで酒瓶を煽りつつ、獲物を狩る獅子のごとく鋭い眼差しをテレビに向けていた。
本当にこんな連中が、怪異の退治などできるのか。
訝しむ大家は半信半疑に目を細め、横に座る彼らを一瞥した。
しかし、すぐにその真価を知ることになる―――
何処かの川を映した画面に黒髪の女が姿を現す。
瞬く間に距離を詰めた幽霊、川村貞緒がテレビから這い出そうとした瞬間―――
「うわ、汚っ!
誰だよ漏らしたの!
これじゃ、そっちいけないじゃん!」
突如発せられた貞緒の悲鳴。
小便の結界が見事に機能し、幽霊は進めなかった。
……だが、除霊には至っていない。
家に尿を垂れ流した挙げ句これでは、たまったものではない。
苛立つ大家が文句を言いかけたその時―――酔いが回った王慧が豹変!
「……幽霊風情が、人間様に迷惑かけんじゃないよぉ!!!」
怒髪天を衝いた王慧は“ドランク・フェイ”となり、立ち上がるや否や、テレビめがけて駆けた。
壊される、慌てて止めに入る大家が後ろから押さえ
「ダメダメダメ!
テレビ壊したら修理にどんだけかかるの?!
やめてよ、ホント!」
と、叫ぶ。
しかし暴れる彼女を止められない。
空を舞い、火球を吐く竜が、地を這う人間に従う道理はないのだ。
「小便漏らしマンは、あの化物を足止めしたろぉ!
役立たずのオマエもなんかしろぉ!
臭男人(chòu nán rén)!!!」
暴言を吐き散らし、ストレス発散の鉄拳がスメル吉臭の腹部を直撃する。
「うっ♡
脱糞(で)るっ♡
フェイちゃん、脱糞(で)るっ♡
ウッ、ウウッ!」
ブリュ、ブリリリュ、ブプュ……ビュルッ!!!
世にも悍ましい中年の排泄音が、部屋中に響き渡った。
床に撒かれた尿、糞便で汚れたソファ、壁を破壊する激昂の拳。
地獄絵図以外に形容できぬ世界が、目の前に広がっていた。
その光景を幽霊・川村貞緒はテレビの中から呆然と眺めている。
ふと彼女と大家の視線が交わると、互いに苦笑を浮かべた。
―――本当に怖いのは、やっぱり人間だ―――
大家の脳裏に、そんなありがちな台詞が深く刻まれるのだった。
