デザインに「正解」はない。でも「最適解」はある。その見つけ方とは?【#1-13】
デザインに「絶対的な正解」はない。でも、「最適解」は必ずある。僕が信じる"良いデザイン"の見つけ方
「このデザイン、A案とB案、どっちが良いと思いますか?」
「このロゴマーク、これで本当に『正解』なのかな…」
デザインに関わっていると、こんな風に悩む場面って、本当によくありますよね。僕自身、クライアントにご提案する時も、自分自身で何かを創り出している時も、常にこの問いと向き合っている気がします。
こんにちは、Gekkodesignの水口雅月です。
デザインの世界には、数学の問題のように、誰にとっても唯一絶対の「正解」というものが、なかなか存在しません。だからこそ、時に「それは好みの問題だよね」とか「最後はセンス次第だよ」なんていう言葉で片付けられてしまうこともあるのかもしれません。
でも、僕は思うんです。本当にそれで良いのだろうか? 「正解」がないからといって、「何でもいい」ということにはならないはずだ、と。
今日のnoteでは、この曖昧で、だからこそ面白い「デザインの評価」というテーマについて。そして、「絶対的な正解」はないかもしれないけれど、「その状況における最適解」は必ず存在すると僕が信じる理由と、その「最適解」をどうやって見つけ出そうとしているのか、僕なりの考えをお話ししたいと思います。
なぜデザインに「絶対的な正解」は存在しないのか?
まず、なぜデザインには「これが100点満点の正解だ!」と断言できるものが存在しにくいのでしょうか? それには、いくつかの理由があると思います。
受け手の多様性: 同じデザインを見ても、それを受け取る人(ユーザー)の年齢、性別、育ってきた文化、これまでの経験、価値観などによって、感じ方や解釈は全く異なります。ある人にとって「最高にクール!」なデザインが、別の人にとっては「意味不明」なんてことは、日常茶飯事です。
状況(文脈)の変化: デザインは、真空の中に存在するものではありません。時代が流れれば、トレンドも変わります。新しい技術が登場すれば、表現の可能性も変わります。競合他社が新しい動きをすれば、自社のデザインの立ち位置も変わってきます。昨日まで「最先端」だったものが、今日には「古臭い」と感じられてしまう。デザインを取り巻く状況は、常に変化し続けています。
目的の多様性: デザインに求められる役割、つまり「目的」も様々です。例えば、ウェブサイト一つをとっても、「ブランドイメージを高めたい」「問い合わせ数を増やしたい」「情報を分かりやすく伝えたい」など、目的によって重視すべき要素や、デザインの良し悪しを測る基準は変わってきます。
主観的な「美」の要素: そしてやはり、デザインには「美しいか」「心地よいか」といった、人の感性に訴えかける側面があります。機能性や分かりやすさはある程度客観的に評価できても、「美しさ」の基準は、どうしても個人の主観が入り込む余地が大きいですよね。
こうした理由から、「どんな人にとっても、どんな状況でも、どんな目的であっても、これが唯一絶対の正解だ!」と言い切れるデザインは、おそらく存在しないのだと思います。
でも、「最適解」は存在する - 状況における"ベスト"を探す旅
「なんだ、じゃあ結局、デザインなんて曖昧なものなのか…」
そう思われたかもしれません。でも、僕の考えは少し違います。
「絶対的な正解」はない。それは事実かもしれません。でも、だからといって「何でもいい」わけでも、「単なる好き嫌い」で決めていいわけでも、決してないんです。
僕が信じているのは、特定の状況、特定の目的、そして特定のターゲットユーザーにとっての「最適解」——
つまり
"その時点、その文脈において、考えうる限り最も良い答え"——
は、必ず存在するはずだ、ということです。
そして、様々な制約や条件の中で、手持ちのカード(知識、技術、感性)を最大限に活かしながら、その「最適解」を粘り強く探し出し、具体的なカタチにしていくことこそが、僕たちデザイナーに与えられた役割であり、仕事の醍醐味なのだと考えています。
それは、暗闇の中で手探りで一つの「正解」を探す作業ではなく、目の前にある複数の選択肢の中から、様々な要因を考慮して「ベスト」を選び取り、磨き上げていく、創造的な旅のようなものかもしれません。
「最適解」に近づくための、僕なりの羅針盤
では、どうすればその elusive(捉えどころのない)な「最適解」に、少しでも近づくことができるのでしょうか? これには魔法の杖のようなものはありませんが、僕がデザインのプロセスで常に頼りにしている、いくつかの「羅針盤」があります。
①「課題」への深い理解: まず、スタート地点を見失わないこと。「そもそも、私たちはこのデザインで何を解決しようとしているんだっけ?」という根本的な問いに、常に立ち返ります。課題の本質を理解していなければ、どんなに美しいものを作っても、それは的外れなものになってしまいます。
②「ユーザー」への共感: 「このデザインは、誰のためにあるんだろう?」その人の気持ち、行動、置かれている状況を、できる限り深く想像し、理解しようと努めます。データを見るだけでなく、その向こう側にいる生身の人間の姿を思い描くことが大切です。
③ 明確な「目的」設定: 「このデザインを通して、最終的に何を実現したいのか?」売上を上げたいのか、ブランドイメージを変えたいのか、使いやすさを改善したいのか…。評価の軸となる具体的なゴールを最初に明確にしておくことで、プロセスの中で迷った時の判断基準になります。
④「論理」と「感性」の往復: データや分析に基づいた客観的な判断(論理)と、人の心を動かす美しさや心地よさ(感性)。この両方の視点を、行ったり来たりしながら、バランスの取れた着地点を探ります。(これは以前のnoteでも詳しく書きましたね)
【「ロジックだけでも、センスだけでも、何かが足りない。 - 僕が探し続ける「論理と感性」の美しい交差点」】⑤「仮説と検証」のサイクル: 「完璧なものを一発で!」と気負うのではなく、「まずは作ってみて、試してみて、フィードバックを得て、改善する」というサイクルを回すことを意識します。小さな実験と学習を繰り返すことで、より確かな「最適解」へと近づいていけると信じています。(これも、完璧主義を手放す勇気と繋がっています)
⑥ 多様な視点の導入(共創): 自分の頭の中だけで考えていると、どうしても視野が狭くなりがちです。クライアントはもちろん、時にはチームのメンバーや、異なる分野の専門家、あるいはターゲットユーザー自身との対話を通して、自分一人では思いつかなかったような多様な視点を取り入れることを大切にしています。
「最適解」は、進化し続けるもの
そして、もう一つ忘れてはいけないのは、苦労して見つけ出したと思えた「最適解」も、それが永遠に「最適」であり続けるわけではない、ということです。
ユーザーの反応はどうだったか? 市場の状況は変わっていないか? 新しい技術が登場して、もっと良い方法が生まれていないか…?
状況は常に変化していきます。だから、一度デザインを「完成」させて世に出したら終わり、ではなく、むしろそこからが新しいスタート。常にそのデザインが機能しているかを問い続け、学び続け、必要であれば改善し、「最適解」を更新し続けていく姿勢が重要になってきます。デザインは、生き物のように、変化し、進化し続けるものなのかもしれません。
結論:「正解」探しから、「最適解」を創る旅へ
デザインに「絶対的な正解」がないからこそ、この仕事は面白いのだと、僕は思います。
それは、どこかにあるはずの唯一の「答え」を探し当てるゲームではありません。与えられた条件の中で、クライアントやユーザーと真摯に向き合い、自分の持つ知恵と感性を総動員して、その状況における「最適解」を、自らの手で「創り出していく」——そんな創造的な冒険の旅なのです。
そのプロセスには、もちろん迷いや苦しみも伴います。なかなか答えが見つからず、暗中模索する時期もあるでしょう。でも、だからこそ、様々な要素がピタッとハマり、「これだ!」と思える最適解にたどり着けた時の喜びは、何物にも代えがたいものがあります。
もしあなたが、デザインに関して「正解」が見つからずに悩んでいるとしたら。あるいは、仕事や人生において、唯一の「正しい答え」を探して疲れてしまっているとしたら。
少し視点を変えて、「絶対的な正解」を探すのをやめてみませんか?
そして、今いる場所で、自分にできる最大限の工夫を凝らし、あなただけの「最適解」を創り出していく、そんな創造的な旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
きっと、そのプロセスの中にこそ、たくさんの学びと、豊かな発見が待っているはずですから。
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