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【地方創生 Phase0】「ヤメ星野」たちが証明する、企画書より先にやるべきこと。聞く・聴く・効く、覚醒の3段活用


◆ 人口5万人の街に390万人が来たら、何が起きるか

富士山が見える。

ただそれだけの理由で、一枚の写真が世界中に拡散し、山梨県富士吉田市という人口5万人の小さな街に、年間390万人が押し寄せています。

ローソンの駐車場から、コンビニ越しに富士山を切り取る。「ローソン富士」と呼ばれるその構図を求めて、外国人観光客が行列をつくる。早朝から三脚を立て、最高の一枚を狙う。

NewsPicks 星野リゾートの元社員が仕掛ける、次世代観光ビジネスより

地元住民は、その光景を複雑な表情で見ています。

「賑やかになったね」ではありません。「ゴミが増えた」「道が渡れない」「自分たちの街が、なぜか自分たちのものではなくなっていく感覚がある」その戸惑いと摩擦が、街の空気に静かに充満しています。

NewsPicks 星野リゾートの元社員が仕掛ける、次世代観光ビジネスより

そしてその狂騒の裏で、今、静かに注目を集めている人たちがいます。

「ヤメ星野」たちです。


◆ 超一流の「温室」を、自分から出た人たち

星野リゾートといえば、日本の観光・ホテル業界の最高峰です。

強烈な組織文化、洗練されたブランド戦略、データに裏打ちされた経営手法。そこで培ったキャリアは、ビジネス社会では文句なしの「最強の武器」です。

その星野リゾートを、自らの意志で辞めた人たちがいます。

彼らは過疎の地方へ移住し、看板も資本もない状態から、ゼロでローカルビジネスを立ち上げています。失敗しても誰も守ってくれない。「星野リゾートの○○です」という名刺は、もう使えない。

「なぜわざわざ」と思いますか。

でも私には、その答えがわかります。温室の中では、決して育たない「何か」があることを、彼らは知ってしまったのです。


◆ エリートが最初に犯す、致命的な過ち

ここで、私の40年の現場経験から一つ聞いてください。

大企業の看板を背負ったエリートが地域に入った瞬間、彼らは必ずと言っていいほど同じ行動をとります。

まずデータを集めます。 次に分析をします。 そして美しい企画書を作ります。

今ならさらにAIにも聞きます。生成AIは30秒で、論理的に整合のとれた「地域活性化プラン」を出してきます。ターゲット設定、差別化戦略、KPI、何一つ間違っていない。

しかし地元の人は、心を開きません。

「また外から来て、きれいごとを並べてすぐ帰る人たち」。そう思われた瞬間、ゲームオーバーです。どんなに優れた企画も、信頼のない土台の上では砂上の楼閣でしかありません。

「地域はプレゼンで動かない。信頼関係で動く」。これが、私が40年かけて学んだ現場の真実です。


◆ アンラーニング(学びほぐし)の掟

では、何から始めるべきか。

答えは、拍子抜けするほどシンプルです。

汗をかくことです。

地域の清掃活動に黙って参加する。農家の収穫を手伝う。商店街のイベントでテント設営の手伝いをする。ノートとペンだけ持って、ただひたすら地域を歩き回る。

企画書もプレゼンも、AIの分析結果も、最初は必要ありません。

地域の皆さんに、まず自分の「本気と覚悟」を見せることです。労を惜しまず、身体を動かし、淡々と汗をかく。その積み重ねでしか、信頼は絶対に生まれません。

「なんだ、あの人はまだいるのか」。そう思われた日が、スタートラインです。

「ヤメ星野」たちが地域に根を張れているのは、その手間を絶対に省かないからだと私は確信しています。


◆ 殻を破った先にある「3段活用」

汗をかき、地域に飛び込んだ者だけが実践できる最強のフレームワークがあります。

私がかりゆし塾の指導で、14年間繰り返し塾生たちに叩き込んできた、「聞く・聴く・効く」の3段活用です。

【第1段:聞く】

地域を歩き回り、住民の声を徹底的に集める段階です。

「この地域で自慢できるものは何ですか」「子どものころ、どんな風景が好きでしたか」。難しい質問ではありません。ただひたすら聞いて回る。このフェーズで大切なのは、自分の意見を持ち込まないことです。評価も判断も、まだしなくていい。

【第2段:聴く】

集めた声の中に隠れた「声なき声」を聴き取る段階です。

誰もが当たり前すぎて口にしない価値。「こんなもの、よそから来た人には関係ない」と思い込んでいる宝物。第三者だからこそ見える「共通項」を、静かに丁寧に発見していきます。

このフェーズには時間がかかります。焦ってはいけない。

【第3段:効く】

発見した共通項を研ぎ澄まし、外の人間から見て「なぜここにしかないのか」が伝わる言葉とブランドに昇華させる段階です。

富士吉田市の「ローソン富士」が世界中に拡散したのは、誰かが「外から見たら、これは特別だ」と気づいたからです。地域の人が見慣れて気にも留めていなかった風景が、世界を引きつけました。

「ヤメ星野」たちもまさに、このプロセスを泥臭く実践しているからこそ、地域に根を張れているのだと私は思っています。


◆ 塾生たちへ。開戦前夜の最後の言葉

いよいよ来週、6月4日

沖縄で「第37期 かりゆし塾」が開講します。

今年も60名を超える若手リーダーたち(世代を超えて様々な企業の社員や市町村職員)がチームを組み、6ヶ月間の「答えなき舞台」へと放り込まれます。

塾生たちへ、最後にこれだけ言わせてください。

会社の立派な名刺を、一旦捨てなさい。

スマートな企画書も、AIが出してくれた分析結果も、今は必要ありません。

地域に思い切って飛び込んで、汗をかいて、「聞く・聴く・効く」を自分の足で実践してみせなさい。格好悪くていい。うまくいかなくていい。最初は全員に無視されてもいい。

それでも諦めずに現場に立ち続けた者だけが、この塾を「本物の経験」にできます。

「明日死ぬかのように生きろ。永遠に生きるかのように学べ」。この言葉を、6ヶ月間、身体に刻み込んでください。


答えなき修羅場で、彼らがどう泥にまみれ、どうゼロイチを創り出すのか。

180日の実況中継が、いよいよ始まります。

沖縄の熱狂を、私と一緒に目撃してください。


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