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ツタが紡ぐラプソディ

国道26号線のとある細い交差点を曲がり、しばらく進んだ少し先の脇道に入る。
さらに進んだところに、緑に覆われた家がある。

ツタである──。
ムタではない。

「ムタ? なにそれ?」
そう思った方のために、少しだけ説明しよう。
グレート・ムタ、数年前に引退したプロレスラー武藤敬司の第2の人格であり、魔界の住人という設定のプロレスラーである。顔にペイントを施し、怪しげなムーブからの変幻自在な動き、果ては毒霧による目潰しなど、なんでもござれである。そして見逃せないのが、ザ・グレートカブキと親子という設定である。

ここで思った。
「グレート・ムタを知らん人は、ザ・グレートカブキも知らんのでは?」と。
仕方あるまい。ザ・グレートカブキを少し補足させてもらおう。
本名、米良明久。出身地の高千穂からリングネームを高千穂明久に変更した、と「プロレスラースーパースター列伝」というマンガに書いてあった気がする。
間違ってたらすまん。
アメリカでザ・グレートカブキとしてブレイクし全日本プロレスへ凱旋。日本でも大ブームを起こした。リングインしてヌンチャクを振り回すというパフォーマンスに歌舞伎要素は皆無であるが、それはそれは観客が大喜びであった。
ちなみに俺は、素顔時代のリングネームである「高千穂明久」を長い間「高千穂遙」と勘違いしていた。どうやら「ダーティペア」と全日本女子プロレスの「ビューティ・ペア」、高千穂明久と全日本プロレスの永源遙が交錯した人間交差点ヒューマンスクランブルで、迷ったあげく西に曲がってしまったためであろうと思われる。
自分自身何を言っているのか、全くもって意味不明である。

このまま進めると永源遙やグレート・ムタとインリン・オブ・ジョイトイとの息子という設定のグレート・ボノ(曙太郎)にまで行ってしまいそうなので、この辺で話を戻すことにする。

ムタである──。
いや、ツタである。

細かい壁の凹凸に「どうやって張り付いてんのや?」と不思議になる。
まるで柔術マジシャン、ノゲイラのようではないか!

「ノゲイラ? 何それ?」
そう思った方のために、少しだけ説明しよう。
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ。
日本で初めて総合格闘技のリングに上がったのは、リングスの「KOK 1999 トーナメント」で……
と、ここで思った。
ヤバイな、これはヴォルク・ハンや田村潔司きよし、果てはアンドレイ・コピィロフにまで話が飛んでしまうぞ……と。さすがにそれはマズイということは、こんな俺でも分かるのである。これでも人の親なのである。

話を戻そう。
ツタの……いや、ノゲイラの説明である。

往年の格闘技ファンなら、PRIDE時代の活躍はご存知であろう。
長い手足を活かした柔術がベースのスタイルで、ミルコ・クロコップ、ボブ・サップ、エメエリヤーエンコ・ヒョードルらと激闘を繰り広げた総合格闘技の選手である。

いかん……。
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラの説明をしているというのに、無性にアンドレイ・コピィロフを語りたくなってきた……。
大人は我慢ができんといかん!

うん、我慢する……。

マーク・コールマン戦で見せた三角絞めと腕ひしぎ十字固めを合わせた「腕ひしぎ三角固め」を見た時には「頸動脈締められた上に肘まで? タップするしかないやん!」と思ったし、スピニングチョークを初披露した時には「何がどうなって決まったんや?」と困惑したものである。
そういえばアンドレイ・コピィロフも試合中に対戦相手と関節技をかけあっている内に、相手とこんがらがってレフェリーに解いてもらわなくては外れなくなったのは困惑したな。コピィロフも相当なツタである気がする……。

いや、ノゲイラである。
ボブ・サップのパワーに圧倒されながらも、最後は腕ひしぎ十字固めで勝利するノゲイラ。
勝利することはできなかったものの、エメリヤーエンコ・ヒョードルとの死闘の数々。
ミルコ・クロコップとのグラップラーvsストライカーの頂上決戦。
グラップラーvsストライカーの頂上決戦といえば、村浜武洋vsホイラー・グレイシーも語りたくなってくるな……。

いや、ノゲイラである。
って、既に「いや、ノゲイラ」って何度も言うてる割に、三歩進んで二歩下がってる状態は水前寺清子も呆れ果てるであろうから、そろそろ真面目に進めよう。

アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラはそれほどまでに……どれほど? どこまで話してたっけ?
まあ、ええ。それほどまでに幾多の死闘を、長い手足をツタのように活かした柔術の技術で潜り抜けてきたつわものなのである。
そんな彼には一卵性双生児の弟がいる。名をアントニオ・ホジェリオ・ノゲイラ。
一卵性双生児なだけあって見た目はそっくりである。兄ホドリゴが、ある大会のオープニングでの選手紹介に間に合わなかった時、代わりに出ても誰も気付かなかったほどである。

そんな見た目がそっくりな一卵性双生児格闘家兄弟(長いな……)であるが、正面から見ると兄ホドリゴの方が大きいというぐらいしか違いがない。日本人の目からすれば違いがさらに分かりにくいだろう。
しかし、ファイトスタイルは全く違うのである。
兄ホドリゴがツタのように絡みつく柔術ベースのグラップラーであるのに対し、弟ホジェリオは柔術も使えるがボクシングベースのストライカーなのである。やはり双子でそっくりとはいえ、別の人間なのである。

結論。
ホジェリオはツタではない──。


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