キジトラにゃんこがやって来た!(夫の邂逅編)
こちらは「キジトラにゃんこがやって来た!(きっかけ編)」からの続きとなります。
先にそちらを読んでいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思います。
ここから本編。
保護猫活動家Hさんから、まずは2週間のトライアル期間があることを告げられ、これを承知した。
嫁さんと娘にHさんからの話を伝えると、正直なところ白黒ハチワレの子猫ではないことにテンションが少し下がった二人。
しかし嫁さんは「でも、確かに子猫を譲ってもらっても、急死なんてされたら立ち直られへんわ。あと、子猫って結構家具とかボロボロにするって聞くし、それで良かったかも?」と納得していた。
娘には「1歳半で大人の猫やけど、凄い人懐っこい子らしいで」と言いながら、YouTubeでキジトラ猫の動画を見せると、テンションは少しずつ回復していった。
嫁さんと娘と比べて、俺の脳内にはやっぱり「俺、つしま」が牢名主のように鎮座していた。不安は拭いされていない。
数日後の2013年6月14日、キジトラ猫が我が家にやってくる日になった。
当日、俺は仕事で遅くなりそうだったので、お迎えは嫁さんと娘に任せた。
某ホームセンターで待ち合わせ、そこで施設で使っているキャットフード、トイレ、猫砂などをHさんに教えてもらいながら一緒に購入し、キジトラ猫と一緒に帰ってくるという予定と、仕事中に電話で嫁さんから知らされた。
「そうかあ……とうとう我が家に猫が……」
期待と不安で仕事どころではなかったが、早く帰りたい一心で気合いを入れ直し、仕事を少しでも早く終わらせようと頑張った。老体に鞭を打った。
結果、想定より1時間ほど早く帰れた。
それでも帰宅は19時半頃。
逸る気持ちを抑え、玄関のドアをそっと開けた。
知らないところに連れて来られてナーバスになってる猫に、余計なストレスを与えない為だ。
洗濯機の前で埃にまみれた作業服を洗濯かごに放り込み、Tシャツとトランクスというマヌケな姿でリビングのドアを開ける。
静まり返ったリビングに嫁さんと娘は居た。
俺は抑えた声量で
「ただいま、猫は?」
と、尋ねると2人はリビングの隅に設置したケージを指差しながら
「おかえり、ケージの一番上に居てる」
と、耳元で内緒話をするような声で答えた。
そこまで小さい声で喋らんでええんちゃう?
そう思ったが、それが2人からの猫への気遣いなのであろう。
ケージには明かりを遮る為のバスタオルが2枚かけてあった。
バスタオルの1枚をそっとずらし暗闇を覗く。
こちらが深淵を覗く時、キジトラ猫もこちらを覗いているのだ──。

か、か、か、かわいいやないか〜い!
クリっとした目が! かわいいやないか〜い!
にへらにへらと気持ち悪い笑顔を浮かべている自覚はあったが、どうにも感情が顔に出てしまうのを抑えられなかった。
感情のダムは穴だらけである。
ふと嫁さんを見ると、笑いを堪えるような、しかしそれとも違うような初めて見る表情を見せ、内緒話の口調のまま俺に言った。
「めっちゃかわいいやろ、一目惚れした──」
マジか……。
嫁さんがそんなことを言うなんて、明日の天気は今年一番の酷暑で、雪が降るぞ?
それぐらい有り得ん反応であった。
そんな夫婦を、娘は静かに、そして笑顔で眺めていた──。
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