将棋が雑すぎるAVを調べたら、投了図だけ名人戦だった
将棋AVを調べていたら、終盤だけ名人戦だった
将棋AVを調べていたら、変なことに気づいた。調べる対象からして変だ、というのはその通りである。だが、将棋を題材にした成人向け作品は意外と多い。女流棋士、将棋教室、大盤解説、対局番組風、将棋部、プロ棋士志望、元プロの顧問。なぜか、AVの世界には将棋設定が時々現れる。そして、そういう作品を見ていると、当然ながら将棋の盤面も映る。普通の視聴者はたぶん見ない。しかし、将棋を少しでも指す人間は、どうしても見てしまう。駒台はあるのか。持ち駒は合っているのか。王手は放置されていないか。その駒、本当にそこへ動けるのか。その投了、本当に投了なのか。私は成人向け作品を見ていたのではない。盤面を見ていた。私は将棋ウォーズ二段である。普通の人よりは将棋が分かるかもしれないが、決してガチ勢ではない。今回はKENTO、水匠などのAI解析も使いながら、将棋AVの盤面を検証していった。間違いがあれば、将棋ガチ勢の方にどんどん指摘してほしい。こちらから将棋警察を呼び込んでいくスタイルである。そして調べていくうちに、かなり奇妙な事実に辿り着いた。複数の将棋AVで、全部同じ「負けた瞬間の盤面」が使われていたのである。将棋では、投了時の盤面を「投了図」と呼ぶ。作品も違う。女優も違う。シリーズも違う。なのに、最後の盤面だけが同じだった。しかも、その投了図を調べてみると、第76期名人戦七番勝負第6局、佐藤天彦名人対羽生善治竜王の終局図だった。つまり、将棋は雑。でも、投了図だけ名人戦。序盤中盤は異世界。終盤だけ名人戦。今回はその謎を追いながら、将棋AVに現れた異常な盤面を見ていく。胸で盤面を破壊する女。AVに現れた捌きのアーティスト。早石田VS鬼殺しっぽい謎の第三局。そして、ヒロインを奪おうとする元プロ顧問を盤上で倒せるのか、という防衛戦。これはAVレビューではない。盤面考古学である。
将棋AVにはすでに「先人」がいる
まず押さえておきたいのは、このジャンルにはすでに先人がいるということだ。成人向け作品の将棋シーンを異常に真面目に検証したレビューが過去に存在する。また、スケベ大学学長ことリップグリップ岩永さんも、この手の将棋AVを動画で取り上げていた。つまり、これは私だけが突然おかしくなったわけではない。すでに先行する観測者がいたジャンルなのである。もちろん、その言い方で安心できるかは分からない。ある将棋番組風の作品には、複数の対局シーンが登場する。その中で、過去のレビューでは扱われていなかった局があった。いわば、将棋AV研究における第三局問題である。そんな問題、存在してほしくない。しかし、盤面は存在していた。
早石田VS鬼殺しっぽい第三局
お茶の間の将棋番組で聞き手の知的美人な女流アシスタントの着衣横パイ隆起がボイン過ぎて邪魔で肝心の駒が見えなくてどうにも気になって終盤の勝負所で三手詰めが読めません - 今井ゆあ
▲7六歩△3四歩▲7五歩△3三桂▲7八飛△4五桂▲7四歩△5七桂不成▲7三歩成△6九桂成▲同玉 △7七歩打▲同飛 △同角成▲同桂 △7三桂▲5五角打△7六歩打▲7三角成△6二金▲8二馬△同銀 ▲6五桂△7七金打▲同角 △同歩成▲8一飛打△7一角打▲同飛不成△同銀 ▲1五角打△6一玉▲5三桂成△同金 ▲7三桂打△7二玉▲6一桂成△同玉 ▲3三角成△6七と▲1一馬△5七桂打▲5九玉△4九桂成▲6九玉△5七桂打▲詰み
その第三局は、いきなりこう始まる。▲7六歩、△3四歩、▲7五歩。早石田の気配である。さらに後手は△3三桂、そして6手目に△4五桂。鬼殺しっぽい香りが漂ってくる。成人向け作品を見ていたはずなのに、急にB級戦法講座が始まる。ただ、ここでは先手がかなり良い。AI的には48金で先手優勢、評価値はおよそプラス693だった。しかし先手は、ここでタコ攻めの▲7四歩を選ぶ。これで評価値は一気にマイナス156まで下がる。攻めたのに悪くなる。将棋あるあるである。その後の△5七桂不成は最善らしい。ここは妙にちゃんとしている。一方で、途中に出てくる△7七歩打は、一見すると焦点の歩っぽくて手筋感がある。だがAI的にはあまり意味がないようだ。手筋っぽい顔をした雰囲気の歩である。さらに後手が7七に金を打った場面では、正着は5六角らしい。その後、先手は8一飛と打っていれば優勢だった。つまり、まだ勝てる道はあった。しかし、7七にと金を作られてからは先手が厳しい。8一飛は打つのだが、角を合駒される。そして先手は怒りの同飛不成。怒りの不成とは何か。分からない。だが、そう表現したくなる手だった。以降は良いところがなく、先手負け。AVを見ていたはずなのに、早石田、鬼殺し、焦点の歩、怒りの不成まで出てくる。将棋要素だけで情報量が多すぎる。しかも、完全にめちゃくちゃというより、ところどころちゃんとしているのが怖い。
AVに現れた捌きのアーティスト

新人 将棋は責めるけどSEXは責められるのが好きッ! 元生徒副会長将棋部部長中出しAV DEBUT!! 光島遼花
▲7六歩△3四歩▲7五歩△3二金▲7八飛△5二金▲4八玉△8四歩▲9六歩△9四歩▲5八金左△7二銀▲3八銀△8五歩▲7七角△8三銀▲6六歩△6四歩▲6八銀△8四銀▲6五歩△同歩 ▲2二角成△同銀▲7四歩△6六歩▲3九玉△1四歩▲1六歩△4二玉▲2八玉△3三銀▲9五歩△同歩 ▲同香 △同香▲5五角打△7五香打▲7三歩成△同桂 ▲同角成△同銀▲7五飛△7四歩打▲5五飛△9八香成▲4五桂打△4四銀▲5三桂成△同銀 ▲5六飛△7八角打▲6六飛△6三歩打▲6七銀△8九角成▲8六歩△8八成香▲8五歩△7八成香▲8六飛△9五角打▲9六飛△9四歩打▲4六香打△6九成香▲9五飛△同歩 ▲5六銀△6六桂打▲5五角打△4四銀▲7三角成△8五飛▲5一銀打△同金 ▲6三馬△5二歩打▲7四馬△8八飛成▲4四香△同歩 ▲6四馬△5三香打▲5五銀△5八桂成▲4四銀△4九成桂▲4三銀打△同金▲同銀不成△同玉 ▲5五馬△3九銀打▲1七玉△2五桂打▲2六玉△3五金打ただし、将棋AVが全部めちゃくちゃというわけではない。中には普通に棋譜が追える作品もある。ある作品では、女優さんが全国大会出場経験あり。得意戦法は三間飛車。作中の対局も、棒銀対三間飛車の形になっている。しかも、ノーカットで盤面を追える。これは将棋シーンとしてかなり貴重だ。序盤は三間飛車らしく、▲7五歩から▲7八飛。そこからお互いに囲い合い、先手は▲9五歩から果敢に仕掛ける。個人的なハイライトは、21手目の▲6五歩である。この▲6五歩は、ただ雰囲気で指している手ではない。三間飛車らしく、角交換や左辺の捌きを狙った手で、ソフトにかけても最善だった。これはAVに現れた捌きのアーティストである。その後の後手の指し回しはかなり激辛だった。△7五香と、歩の裏側から飛車取りに香を打たれる。これがかなり厳しい。先手は持ち時間も削られていき、秒読みに入ってから悪手が増える。そして後手が何もさせない激辛流で押さえ込み、最後は鋭く先手玉を詰ます。将棋としてはかなりちゃんとしている。ただし、ルールは特殊である。歩以外の小駒を取られると一枚、大駒を取られると二枚、というルールだった。将棋の中身はまともなのに、外側のルールが急に治安悪い。将棋としては激辛流。ルールとしては激ヤバ流。盤面だけを見ると、ちゃんと将棋している作品もある。だからこそ、壊れている作品の壊れ方がより際立つ。
銀冠ならぬ「乳冠」

次に見るのは、将棋教室系の作品である。
「将棋が脳を育てるらしいぞ」成績が伸びない受験生の僕を心配した祖父の薦めで将棋教室にいくと巨乳おばさん棋士が待っていた。おっぱいで盤上の駒をなぎ倒す姿に脳ではなくチ○ポが育てられ勃起。2 春菜はな
主人公の男の子が、将棋を教わりに行く。ところが、先生の胸に気を取られて、将棋が全然頭に入ってこない。将棋教室としては最悪の環境である。しかもこの先生、自分の玉を胸で隠してしまう。とんでもないチート戦法である。将棋では玉の位置、逃げ道、利き、詰み筋を読む必要がある。だが、そもそも玉が見えない。銀冠や穴熊といった囲いはあるが、これはもはや銀冠ならぬ「乳冠」である。自玉が見えないのだから、詰みも王手も確認不能。将棋AI以前の問題だ。さらに別の対局では、この先生は自分が不利になると、いきなり胸で盤面を破壊する。普通、将棋には美濃崩し、矢倉崩し、穴熊崩しのような攻め筋がある。しかしこの作品では、盤面そのものを胸で崩す。お乳崩しの手筋である。藤井猛九段が昔、持ち駒を盤にばらまいて投了したという伝説もある。しかし、これはその比ではない。盤面破壊の方向性が違いすぎる。ガジガジ流ならぬ、パフパフ流。そこで今回は、このお乳崩しの手筋を再現してみた。某メスネズミ系人形の胸にタオルを詰めて、爆乳化させた。言い方も素材選びも最悪である。ちなみに、この作業中に家族に見られた。「これは動画用で」と必死に説明した。しかし、そもそもYouTubeをやっていることも伝えていなかったので、余計に危ない感じになった。盤面より家庭内評価値が崩壊している。実験の結果、盤面は無事に破壊された。この戦法の長所は、どれだけ劣勢でも局面そのものを消せること。短所は、将棋ではないこと。AIは最善手を読める。しかし、盤面消滅は読めない。
6作品で同じ投了図が使われていた

ここまで見てくると、将棋AVの盤面はただ壊れているだけに見えるかもしれない。しかし、ここからが本題である。壊れた盤面の中に、なぜか本物の名人戦が混ざっていた。プライドの高い女子学生棋士シリーズ。そして、「僕が先に好きだったのに」系のシリーズ。監督も違う。女優さんも違う。作品も違う。でも、投了図が同じだった。しかも、ただの将棋盤の使い回しではない。このシリーズには妙な共通構造がある。棒銀を愛する女。敬愛する祖父。元プロの顧問。将棋にプライドを持つヒロイン。そして、最後に同じ投了図。作品ごとの将棋のクオリティには差がある。だが、最後に置かれる負けた瞬間の盤面だけは同じ。これが妙に引っかかる。普通なら、適当に駒を並べて終わりでもいい。なのに、わざわざ同じ終局図を使っている。そこに謎のこだわりがある。将棋が雑なのに、投了図にはこだわる。このアンバランスさが面白い。
投了図の正体は第76期名人戦だった

では、この同じ投了図は何なのか。局面を調べていくと、第76期名人戦七番勝負第6局に行き着く。2018年6月19日から20日にかけて行われた、佐藤天彦名人対羽生善治竜王の一局。結果は佐藤名人の勝ち。羽生竜王が投了した終局図である。145手目、▲5二銀まで。急に将棋史が出てくる。そして、ここでただの一致では終わらない。この名人戦は2018年。一方で、このシリーズの一番古い作品の発売日は2021年。つまり、少なくとも3年くらいのタイムラグがある。その場で適当に駒を並べたというより、誰かが過去の実戦棋譜からこの局面を持ってきている可能性が高い。しかもこれは、羽生善治さんが最後に登場した名人戦の最終局でもある。その局面を成人向け作品の投了図に使っている。情報の落差がすごい。監督やスタッフが羽生さんのファンだった可能性もある。もちろん断定はできない。だが、適当に置いたにしては、選局が渋すぎる。さらに、この名人戦では羽生竜王が棒銀風に攻める展開もあった。そしてAV側には「棒銀を愛する女」という設定がある。因果関係は分からない。偶然かもしれない。でも、偶然にしては盤面がこちらを見ている。駒台はない。桂馬はワープする。解説は薄い。でも投了図だけは名人戦。終盤だけ急に、朝日と毎日の空気になる。
奏音かのん回と、盤上の防衛戦

今回のメインが、奏音かのん回である。設定では、かのんはこの国で知らない人はいない名棋士、奏音風雅の孫娘。若くして連盟公認の女流棋士となるほどの実力を持つ。そして王手先生という元プロの顧問に敗れる。設定だけならかなり将棋漫画だ。その後、作中では元プロ顧問と、彼氏役の男優が対局する。つまり、彼氏役が盤上で顧問を倒せば、理論上かのんちゃんを守れるかもしれない。理論上の使い方が最低である。ただ、この元プロ顧問の指し回しがかなり怪しい。3手目に▲2七飛。斬新すぎる。その後も、▲2六飛、▲6六飛、▲6五飛。飛車がちょこまか動き回る。しかも顧問側は、飛車取りにも気づかない。かなり典型的な素人っぽい動きである。それで元プロは無理がある。一方で、後手の若い男優、つまり彼氏役の方が、まだ合理的な手が多い。ただ、役に忖度しているのか、顧問の飛車をただで取れる場面で取らなかったりする。盤面の外に忖度がある。防衛戦で私が指し継ぐ局面では、まず飛車を桂馬で取るところから始まる。そこからなら、彼氏側にも勝機がある。盤面だけなら、まだ守れる世界線なのだ。ところが作中では、終盤にかのんちゃんが男優側に神の一手をアドバイスする。その手が、61の金を64へ。金ワープである。神の一手ではない。反則の一手である。金はワープしない。少なくとも日本将棋では。しかし男優は、「そんな手があったのか」みたいに驚く。ない。そんな手はない。顧問を倒す前に、将棋という競技が倒れてしまった。
金ワープ前なら、まだ守れるのではないか
ただ、私はここで考えた。金ワープが出る前なら、まだ将棋は壊れていない。ならば、合法手だけで顧問を倒せるのではないか。問題は、金ワープ直前の一手である。顧問側が盤の右下で何か一手指しているのだが、画面でははっきり見えない。候補は18香、48金、38金。こちらに都合よく弱い手を選ぶのはフェアではない。なのでAIにかけたところ、最善は38金だった。評価値は-2665。後手、つまり男優側がかなり有利。盤面だけなら、かのんちゃんを守れる世界線である。ここから私が男優側を持ち、最強AIと勝負する。金ワープなし。反則なし。合法手だけで顧問を倒す。かのんちゃん防衛戦、開始である。棋神はまず▲2四歩と突いてくる。こちらは素直に同歩。次に▲6六角。逃げ場所がかなり悩ましい。8二だと将来的に王手飛車を食らいそう。8一だと桂馬で飛車金両取りが見える。なので8三に逃げた。これは最善だった。そこまではよかった。しかしその後、▲2七金でこちらの角が捕まってしまう。そこで△1七角成として金と交換しに行ったが、これは損だった。本当は△4九龍が最善らしい。角を取ったら銀を取る、ということだ。ただ、この時点でもまだ評価値は1800点くらいこちらが良い。まだ守れる世界線だった。しかし、ここから私は玉頭戦をノリで始めてしまう。▲8八玉と逃げてきたので、玉頭からしばいてやるのだ、と思って叩きの歩。玉頭戦はノリである。とりあえず叩く。この考え方がもう負けそうである。そして問題の場面が、▲7四銀打ち。逃げ場所がない。飛車金両取りは仕方ないと思った。ここで私は△6一同飛と、飛車で取った。しかしこれが大悪手。正解は同玉だったらしい。この一手で評価値が1600点くらいから300点くらいまで落ちる。一気に互角。勝勢が溶けている。さらに▲2二飛と打たれて合駒を迫られる。ここは桂馬を打っていれば、まだ互角だったらしい。だが、悩んだ結果、金を合駒してしまった。これが最悪中の最悪。伝説の金合いである。一気に負けが確定した。本当に将棋ウォーズ二段なのか。そう言われても仕方ない。最近はチェスにハマってチェスばかりやっていたから、という言い訳もある。ひどい言い訳である。結果、負けた。評価値-2665から負けた。かのんちゃんを守る前に、自分の玉を守れなかった。金ワープだけは使わなかった。そこだけは、彼氏役として最低限の誇りを守った。だが、勝ちは守れなかった。金はワープしなかった。私の勝勢だけがワープした。
FANZAにも盤面レビューを書く予定です
なお、YouTubeでは作品内容そのものにはあまり踏み込めないので、将棋目線の購入者レビューはFANZA側にも書いておく予定である。三間飛車の捌き、かのん回の金ワープ、そしてお乳崩しの手筋。YouTubeでは流し気味にした細かい作品ごとの将棋要素は、そちらで補足する。成人向け作品のレビュー欄で、将棋の検討をする人間。興味がある人は、そちらも探してみてほしい。ただし見る場所を間違えないでほしい。今日見ているのは、あくまで盤面である。言い訳としてはかなり苦しい。
将棋AVとは、盤面考古学である
今回見てきたように、将棋AVはただ将棋が雑なだけではない。ちゃんと棋譜が追える三間飛車がある。早石田と鬼殺しみたいな謎の乱戦がある。盤面を消し飛ばすお乳崩しがある。反則の金ワープがある。そして、複数作品に眠る第76期名人戦の投了図がある。壊れた盤面の中に、本物の将棋史が混ざっている。そして時々、検証者本人の将棋も壊れる。これはAVレビューではない。盤面考古学である。将棋AVとは、壊れた盤面の中に本物の将棋史が混ざっている、奇妙な遺跡なのだ。普通の将棋動画には、金ワープがない。なくていい。でも、だからこそ見つけてしまった盤面がある。
