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夏のトイレ行列対策が、避難所を救う日、楽しい時も災害時も、体調を守ってくれるトイレBOX 地球が喜ぶトイレ革命 〈エッセイ〉

「また、並んでる……」

夏になると、自分はあちこちで、この光景を見てしまう。

サービスエリア、花火大会、夏祭り、野外コンサート、フェス、観光地、登山口。

特に女性用トイレの前には、いつも長い列ができている。

自分は、建物の設備を見る仕事を長くしてきた中年で、人の集まる場所へ行くと、つい設備のほうを観察してしまう。駅でもイベント会場でも、気づくとトイレの行列を眺めている。半分は、もう職業病のようなものだ。

そして毎年、夏になると思う。

(これ、もったいないなぁ……)と。

誰も驚かない。毎年のことだからだ。

でも、毎年のことだからといって、仕方がないわけではないはず!

そしてこれは、女性だけの問題でもない。

女性が並ぶ。

すると、同行者も待つ。家族も、友人も、恋人も待つことになる。

(ん? 男性は関係ないのでは?)

と思われるかもしれないが、そんなことはない。

一緒に来た人が戻るまで、結局その場で待つことになるのだ。

その間、買い物はできない。食事もできない。屋台も見られない。

次の演目を見逃すかもしれない。

駐車場では、車がそのぶん長く停まり続ける。

つまりトイレの行列は、ただの不便ではないのだ。

人の時間を奪い、楽しむ時間を奪い、施設や店の売り上げまで奪っている。

トイレ待ちは、見えない社会的損失だと自分は思う。

逆に言えば、その行列を短くするだけで、人は売店や屋台に戻り、駐車場の車も回り始める。

トイレは、単なる設備ではない。

人の流れとお金の流れを支えるインフラでもあるのだ。

では、トイレを増やせばいいのか。

もちろん、そうだ!

けれど、常設トイレを簡単に増やせない場所も多い。

夏の数日だけ混む場所。

祭りの日だけ人が集まる場所。

登山シーズンだけ利用者が増える場所。

お盆や年末年始だけ混むサービスエリア。

そういう場所に、年に数日のために大きなトイレ棟を建てるのは、さすがに現実的ではない。

だから、発想を変える。

常設トイレだけに頼らない。

必要な時に、必要な場所へ、臨時のトイレ空間を増やすのだ。

ただし、従来の仮設トイレをただ並べるだけでは足りない。

清潔であること。

明るいこと。

外から見えないこと。

鍵があること。荷物を置けること。

女性が安心して使えること。

使った後の廃棄物を、安全に回収できること。

これだけの条件を満たそうとすると、必要なのは、もう、ただの仮設トイレではない。

携帯トイレ。組み立て式の個室。使用後の回収BOX。回収と処理の仕組み。

これらをまとめて、ここでは仮に

「お守りトイレBOX」

と呼ぶことにする。

楽しい日も、災害の日も、体調を守ってくれるトイレ。

なぜ、お守りなのか?

お守りは、普段はカバンや財布の中で、忘れられている。

けれど、いざという時にそっと自分を守ってくれる。

このトイレも、同じだ。

楽しい日には、行列から解放してくれる。

災害の日には、健康を、ときに命を守ってくれる。

普段は意識されないまま、いざという時に効く。

だから、お守りなのだ!

普段は、混雑するイベントやサービスエリアで使う。

災害時には、避難所で使う。

持っているだけではなく、使い慣れていることまで含めた、小さな防災インフラ。

たとえば、夏のサービスエリアに置く。

花火大会の会場に置く。

フェスの、足りない女性用トイレを補う。

登山口や観光地に置く。

混雑する場所に、必要な分だけ持っていくのだ。

すると、まず平時の問題が解決する。

女性用トイレの行列が短くなる。

同行者の待ち時間も減る。

売店や屋台を見る時間が増える。

駐車場の回転もよくなる。

それだけでも、十分にうれしい。

けれど、ここで一つ、正直に考えておかなければならない問題がある。

常設トイレが空いていれば、そちらを使えばいい。それで何も困らない。

問題は、常設トイレに長い行列ができている時だ。

(こんなに並んでいるなら、あっちの新しいトイレを使えばいいのに……)

そう思っても、多くの人は、なぜか動かない。

慣れた普通のトイレの列に、並んだまま待つことを選んでしまう。

(よく分からないものを使うより、並んででも、いつものほうが安心だ)

この気持ちは、自分にもよく分かる。

つまり本当の問題は、行列の長さではない。

「並んででも、慣れたほうがいい」という、その安心感のほうなのだ。

では、どうすれば、行列に並ぶより、お守りトイレBOXを選んでもらえるのか?

「行列が短いですよ」というだけでは、たぶん弱い。

並ぶ安心感を、それを上回る楽しさで、ひっくり返す必要がある。

だから、使うこと自体を、ちょっとした楽しみに変えてしまえばいい!

協賛企業のついた、無料配布のトイレキット。

使った人だけが受け取れる、ささやかな特典。

個室に貼られたQRコードを読み込むと、その日限定のLINEスタンプがもらえる。

イベントのロゴが入った、その場限りのデザイン。

「並ばずに済んだ上に、ちょっと得をした!」

その魅力が、「並んででも慣れたほうが」という気持ちを、少しずつ上回っていく。

嫌々使うのではない。

楽しい日に、楽しい気分のまま、自然に使ってしまう。

この「使ったことがある」という感覚が、後になって効いてくるのだ。

災害時、避難所のトイレは、あっという間に限界を迎える。

水が止まる。

下水が使えない。

仮設トイレはすぐには届かない。

届いても数が足りない。

そして、トイレが不安になると、人は水を飲むのを控えはじめる。

これが、危ない。

脱水になり、体調を崩す。

高齢者や体の弱い人には、命に関わる。

だから災害時のトイレ問題は、水や食料と同じくらい、最初に考えておくべき問題なのだ。

しかし、その大事な場面で初めて携帯トイレを渡されても、多くの人は戸惑う。

(どこで使うの?)

(捨てるのはどこ?)、(臭いは?)、(見られない?)

トイレは、心理的な抵抗が大きい。

だからこそ、平時に使っておく必要がある。

フェスで使った。祭りで使った。サービスエリアで使った。

便利だった。意外と普通だった。

その記憶が体に残っていれば、避難所でも戸惑わずに済む。

しかも、若い人や健康な人が抵抗なく使えれば、通常のトイレは、高齢者や体の弱い人、介助が必要な人に回せる。

これは、我慢ではない。

使える人が別の選択肢を持つことで、本当に必要な人に、通常の設備を残すための仕組みなのだ。

駅で、階段を使える人が階段を使えば、エレベーターを必要な人が使いやすくなる。

あれと、同じことだと思う。

ここで、もう一つ、見落としてはいけないことがある。

防災用品の多くは、倉庫に眠ったまま、期限を迎えてしまう。

携帯トイレの凝固剤にも、処理袋にも、品質を保てる期限があるのだ。

自分も、使われないまま捨てられていく備蓄を、何度も見てきた。

一度も役に立たないまま、ただ捨てられ、また買い直される。

お金も、物も、静かに無駄になっていく。

これは、災害が来なかったから無駄になったのではない。

使う仕組みがないから、無駄になっているのだ!

その点、お守りトイレBOXは違う。

イベントで使い、減ったぶんを補充し、また次のイベントで使う。

使われ続けるから、在庫は常に新しい。

期限切れで捨てる、という無駄がない。

使うことが、そのまま備蓄の更新になっているのだ。

しかも、この回転は、誰か一人だけが得をして終わる話ではない。

協賛する企業にとっては、配ったキットがそのまま宣伝になり、在庫を腐らせずに済む。

自治体にとっては、買い替えては捨てるだけだった備蓄費を、ちゃんと使われる備蓄に変えられる。

そして来場者は、行列から解放された上に、ちょっとした特典まで受け取る。

防災用品は、倉庫に眠らせておくだけでは、やっぱり弱い。

使い、補充し、改善し、また使う。

その循環の中に入れてこそ、本当に災害時に使えるものになるのだ。

そして、ふと思う。

心も、備品と同じかもしれない。

人の優しさも、いざという時の備えも、しまい込んだままでは、肝心な時に出てこない。

普段から少しずつ使って、減って、また満たして。

そうやって使い慣れたものだけが、本当に必要な時に、すっと動くのではないだろうか。

夏のトイレ混雑は、不快なものだ。

できれば誰だって、長くは並びたくない。

でも、その混雑を、ただの季節の不便として見過ごすのではなく、防災の入口に変えられないだろうか?

夏のサービスエリアに置かれた、

[お守りトイレBOX]

花火大会の会場で、特典欲しさに使われた携帯トイレ。

フェスで若者が、スタンプ目当てに並んだ回収式トイレ。

それらが全国に広がっていれば、災害が来た時にも、すぐに使える。

遠くから仮設トイレが届くのを待つだけではなく、近くにあるものを、慣れた手つきで使えるのだ。

平時は、混雑を減らす。

災害時は、命を守る。

観光地では、自然を守る。

イベントでは、楽しむ時間を増やす。

あの、夏の長いトイレの列。

毎年あなたを、うんざりさせているあの行列が、いつか、どこかの避難所で、誰かの命を守る日が来るかもしれない。

そんな未来は、意外と、すぐそこにあるように思う。

さて、皆さんは、どう思われますか?

あなたの並んだあの行列も、未来の誰かを救う入口に変えられるとしたら。


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