採用サイトの成果は“設計でほぼ決まる”という話
採用サイトって、「シンプルで見やすく」「情報は絞って」「デザインは凝って」みたいな話、よく聞きませんか?
自分自身は、企業の魅力を全面的にこれでもか!って打ち出した方がいいのではと考えていましたが、一方でいろんな人の意見を聞いてみると、それって求職者さまにとって欲しい情報なのか...?というジレンマを抱えていました。
その中で、採用サイトを100社近く調査した際、ほとんどの企業様はとてもコンパクトに寄せている。その内容から、その方がユーザーにとって優しい設計なのかな...なんて思っていました。
ただ、先日参加させていただいた「Jam Studio #3 成果につながる採用サイトはどう設計する?〜採用戦略の基本とプロセス〜」というセッションにて、改めて学びがあったのでここでアウトプットします。

今回は「採用マーケティングの教科書」でお馴染み、株式会社ベイジ 代表 枌谷さんが登壇されました。
直近ベイジさんが製作された採用サイトで話題になったのがAI動画を持ちたグッドパッチさんの採用サイトですよね。
HR界隈(だけではないかもですが)とても話題になりました。
1. 採用サイトは「応募前」だけのものではない
まず前提として整理されたのが、採用サイトが見られるタイミングです。
一般的には「応募前の判断材料」として語られることが多いですが、実際はそれだけではありません。
スカウト返信前に企業理解として見る
人材紹介経由で紹介された後に必ず確認される
カジュアル面談後に再度見直される
選考中に「働き方どうだったっけ?」と見返される
さらに、採用サイトを起点に採用広報に遷移したり、その逆も起きる。
つまり採用サイトは、一度見られて終わるものではなく、意思決定の各フェーズで参照され続けるもの。
この前提に立つと、採用サイトはやはり充実していた方がいいよねという話にはすごく納得感がありました。
2. コンテンツは多い方がいいのかというジレンマ
個人的にずっとジレンマを感じていたのがここです。
自分としては、「採用サイトは充実していた方がいい」と思っているタイプではあるものの、長すぎると離脱されるのではないかという懸念もずっとありました。
ただ今回の話で、この問いに対する解像度がかなり上がりました。
結論としては、コンテンツは多い方が有利であるということでした。よく「そんなにあっても見ないのでは?」という質問があるらしいのですが、
それでも結果としては、コンテンツが多い企業の方が成果に繋がりやすいというデータが出ているとのことでした。
2-1. 「全部見られない」は問題ではない
ここで重要なのが、「全部見られるかどうか」ではないという点です。採用サイトは、1回の訪問で見られるページ数は3〜5ページ程度と言われています。
つまり、すべてのコンテンツが読まれるわけではない。ただ、どのページを見るかは人によって全く違うということです。
働き方を見たい人
メンバーのインタビューを見たい人
事業や思想を見たい人
さらに言えば、インタビュー一つ取っても、職種によって見たい内容は変わる。だからこそ、コンテンツが多ければ多いほど、“刺さるN数”が増える。
この構造なんだと理解しました。これはかなり納得感がありました。
2-2. 文章量は多くていいのか問題
もう一つ、個人的にずっと気になっていたのがここです。
文章って長くしていいの?
これに対しても、すごく納得感のある話がありました。
結論としては、文章は長くてOKとのこと。
ただし、ポイントは「読み方のモード」です。
人はコンテンツを見るとき、
ファストモード(ざっと見る)
ディープモード(しっかり読む)
この2つを瞬時に切り替えているそうです。(初知り)
例えば、最初に企業を知ったタイミングでは、とりあえず全体をざっと見て「なんとなく良さそうか」を判断する。これがファストモード。
一方で、少し興味を持ったとか、選考に進もうか迷っているとか、本当に応募していいか判断したいなど、こういったタイミングになると、一気にディープモードに入る。
このときに、働き方の詳細や、メンバーのリアルな声、会社の背景や思想などを、かなりしっかり読み込むようになる。
ここで重要なのは、ユーザーは“最初から最後まで読む人”ではないということ。必要なときに、必要な情報を取りに来る。
つまり、
短いコンテンツしかないと、深く知りたい人のニーズに応えられない
長いコンテンツがあっても、興味がなければそもそも読まれない
という構造になっています。
だからこそ、「長いから読まれない」のではなく、「必要な人にはちゃんと読まれる」というのが正しい理解なんだと思いました。
さらに言うと、企業側の思想として、「これくらいの情報を読んでくれる人と働きたい」という前提で、あえて情報量を多くするという考え方もある。
ここはかなり本質的だなと感じました。
つまり、文章量というのは単なる“長さの問題”ではなくて、どんな人を採用したいかという意思表示でもあるんだなと思いました。もちろん、ただ長くすればいいわけではなく、
構造を整理する
見出しを工夫する
読みたい人が読みたいところにたどり着けるようにする
といった設計は必要です。ただ、「長い=悪」という前提はいらなくて、むしろ、浅い情報しかないことの方が、機会損失になる。この視点は、自分の中ではかなり大きな転換でした。
3. デザインよりもコンテンツが効く理由
もう一つ、個人的にかなり刺さったのがこの話です。
「演出で心が動くほど、求職者は子供じゃない」
正直、この一言痺れました。笑
採用サイトを作るときって、どうしても「かっこよくしたい」とか「他社より良く見せたい」とか、デザインに意識が向きがちだと思います。
ただ、今回の話を聞いて改めて思ったのは、求職者さまが見ているのは“表現”ではなく“中身”だということです。
こちらももちろん、企業様によりけりだと思いますが。
例えば、
どれだけリッチなアニメーションを入れても、どれだけ綺麗なデザインにしても、
この会社は何をやっているのか
自分はここで何をするのか
どんな人が働いているのか
本当に大丈夫な環境なのか
こういった“本質的な問い”に答えられていなければ、意思決定には繋がらない。
実際のアンケートでも、以下のように、
デザインが良いことは「好き」ではある
ただし「どちらでもいい」が半数以上
という結果が出ているとのことでした。

つまり、デザインは“あった方がいい要素”ではあるものの、意思決定を左右する決定打ではない。
むしろ怖いのは、デザインに寄せすぎることで、工数がかかってしまうという状態になってしまうことだと思っています。
さらに言うと、求職者さまは“情報を取りに来ている側”なので、過度な演出はむしろノイズになるケースもある。
例えば、ローディングが長かったり、動きが多くて読みづらく、情報にたどり着くまでに時間がかかるこういった体験は、それだけでストレスになります。
自分自身も、正直こういうサイトはあまり好みではありません。だからこそ今回の話を通して強く感じたのは、採用サイトは「魅せるもの」ではなく、「理解させるもの」だということ。そしてそのために必要なのは、デザインではなく、どれだけ誠実に、どれだけ深く、情報を届けられているかなんだと思いました。
もちろん最低限の見やすさや整ったデザインは必要です。ただ、それ以上に優先すべきなのは、コンテンツの量と質。ここにどれだけ向き合えるかが、最終的な成果を分けるポイントになるんじゃないかなと感じました。
4. 採用広報は“採用っぽくなくていい”
もう一つ、かなり面白いなと思ったのがこの話です。
「採用広報って、採用に特化したものが正義なのか」
これ、採用広報という概念がどこからどこまでか、という問いが前提にある話ですが、実務でやろうとすると、意外と固定観念に引っ張られているなと感じました。
採用広報と聞くと、
社員インタビュー
カルチャー紹介
働き方の説明
みたいな、いわゆる“採用コンテンツ”を作らなきゃいけないと思いがちです。もちろんこれらは重要ですし、ないと不利になる「スタンダードコンテンツ」かなと思います。ただ、それだけでは差別化が難しいのも事実です。
今回の話の中で特に納得感があったのは、「採用に直結しないコンテンツでも、採用に効く」という視点でした。
例えば、
ノウハウ記事
調査データの発信
日々の業務の裏側
支援の進め方や思考プロセス
こういったコンテンツって、一見すると採用とは関係なさそうに見えます。ただ実際には、
「この会社ってこんなに深く考えてるんだ」
「こういう仕事の仕方ができる環境なんだ」
「このレベルで顧客に向き合えるんだ」
といった形で、“働くイメージ”を強烈に具体化する役割を持っています。
実際に、ノウハウ記事を見て興味を持ち、そこから会社を調べ、採用ページにたどり着くという流れは普通に起きています。ポテンシャライトでも、まさにこのパターンは何度もありました。
つまり、採用コンテンツだけで母集団を作る必要はなく、むしろ、事業の解像度が高い発信こそが、最も強い採用広報になるというこの視点を持っておくことは大事な視点だと思いました。
さらに言うと、採用コンテンツってどうしても“よく見せる方向”に寄りがちなんですよね。でも、ノウハウや実務の発信って、良くも悪くも“その会社のリアル”が出る。
だからこそ、合う人には強烈に刺さる、合わない人にはちゃんと違和感を与えられるという意味で、マッチングの精度が上がるのかな、なんて思いました。これって採用においてとても重要ですよね。
結果的に、応募数を増やすだけじゃなく、入社後のミスマッチを減らすというところにも繋がると思っています。
なので今回の学びとしては、「採用広報=採用コンテンツ」だけではないということ。
むしろ、“事業や仕事の解像度を上げる発信すべてが採用広報になる”この捉え方に変わったのは、かなり大きなアップデート観点でした。
5. 応募導線は“心理”で決まる
ここもかなり面白かったポイントでした。
採用サイトって、どうしても「どこに応募ボタンを置くか」とか「CTAのデザインどうするか」といった“UIの話”に寄りがちだと思います。
ただ今回の話を聞いて思ったのは、応募導線って、UIではなく“心理”で決まるということです。
求職者さまの動きを分解すると、実はかなりシンプルで、まず最初に見るのは、コンテンツではなく募集要項です。
募集要項を見る→自分に合っているのか→あっている場合は採用サイトに見てくれる
という流れで求職者さまは動いています。
つまり、「コンテンツ → 応募」ではなく、「募集要項 → コンテンツ → 応募」という流れになっている。
この構造を理解していないと、いくらコンテンツを充実させても、そもそも読まれないという状態が起きてしまう。
さらに面白かったのが、「エントリー」という言葉の話です。
「エントリーはこちら」と書かれていると、ユーザーは無意識に「もう応募しないといけないのか」とか「まだそこまでの温度感じゃない」こう感じる。
一方で、「募集要項」と書かれていると、「どんなポジションがあるんだろう」と、一気に心理的ハードルが下がる。
この違い、かなり大きいなと思いました。
だからこそ、
トップに募集要項を置く
スクロール中も常に見える位置に置く
最後にも置く
といった設計が重要になるんだろうなと。これは単なる導線設計ではなく、「ユーザーがどのタイミングで、どんな心理状態なのか」を理解した上で設計する必要があるという話だと思いました。
採用サイトって、「情報を届ける場」であると同時に、「意思決定を後押しする場」でもある。
だからこそ、今この人は何を知りたいのか、どの温度感なのか、どこで迷っているのかなど、ここを外してしまうと、どれだけ良いコンテンツがあっても機能しないんだろうな。
応募導線はUIではなく心理で決まる。これはかなり本質的な学びでした。
6. 不安を解消できている企業は少ない
もう一つ、個人的にかなり納得感があったのがこの話です。
「採用サイトは、不安を解消するためのものになっていない企業が多い」
これ、めちゃくちゃあるなと思いました。
求職者さまって、基本的に“疑いの目”からスタートするんですよね。
本当にこの会社大丈夫?
入ってから後悔しない?
人間関係どうなんだろう?
特に転職の場合は、リスクを伴う意思決定なので、この“不安”がかなり大きい。ただ、多くの採用サイトはどちらかというと、良さを伝えようと、魅力を伝え、ワクワクさせるといった“ポジティブ訴求”に寄っている。
もちろんそれ自体は大事なんですが、それだけだと意思決定には繋がらない。
なぜなら、人は「期待」よりも「不安」によって動けなくなるからです。だからこそ重要なのは、どれだけ不安を解消できているか、です。
例えば、
人間関係はどうなのか
評価制度はどうなっているのか
実際の働き方はどうなのか
厳しいポイントは何なのか
こういった情報をどれだけ正直に出せているか。ここが担保されて初めて、安心感が生まれる。
そして、不安が解消されることで、初めて期待が機能する。この順番なんだと思いました。
さらに言うと、不安解消って“情報量”とも密接に関係しています。
情報が少ないと、よくわからない、想像するしかない、リスクが読めないという状態になり、結果的に見送られる。
逆に、情報がしっかり出ていると、判断でき、納得でき、自分で選べるという状態になります。
だからこそ今回の話とも繋がりますが、コンテンツ量が多い方が有利になる。これは単に「情報が多い方がいい」という話ではなく、不安を潰せる量が増えるから強いという構造なんだと思います。
そしてこれは裏を返すと、不安を解消できていない企業は、それだけで機会損失しているということでもある。
採用サイトは“魅力を伝える場”である前に、「不安を解消する場」であるべき。この視点のお話はとても納得感がありました。
7. まとめ:結局、“設計”がすべて
ここまでいくつかの学びを書いてきましたが、全部をまとめると、結論はかなりシンプルだなと思いました。
結局、成果が出るかどうかは「設計の時点でほぼ決まっている」と思いました。
どれだけコンテンツを増やしても、どれだけデザインを良くしても、どれだけ施策を打っても、誰に届けるのか、その人は何に悩んでいるのか、どんな状態になってほしいのかという、この設計が曖昧なままだと、成果には繋がらないことです。
逆に、この設計がしっかりできていれば、コンテンツの量も意味を持つし、文章の長さも武器になるし、導線設計も機能するし、採用広報も自然と繋がっていくように、すべてが一本の線で繋がってくる。
今回の話を通して感じたのは、これまで自分は「何を作るか」には向き合っていたけど、「なぜそれを作るのか」という設計の解像度が足りていなかったということでした。
だからこそ、コンテンツを増やすべきか迷ったり、文章を長くしていいのか悩んだり、デザインにどこまでこだわるか迷うといった“手段の議論”に時間を使ってしまっていた。
でも本来は、設計が決まれば、手段は自然と決まる。
この順番なんだと思います。
採用サイトも、採用広報も、ウェビナーも、全部同じ構造で動いている。
だからこそ今後は、
誰に
何を
どのように伝え
どう変化してほしいのか
この設計に徹底的に向き合っていきたいと思います。
もし今、
「やっているのに成果に繋がらない」
「コンテンツはあるのに刺さらない」
と感じている方がいれば、一度この“設計”という観点で見直してみると、かなり景色が変わるかもしれません。
構造が変われば、結果は変わる。
自分自身も、ここは改めて徹底していきたいと思います。
