【ポテンシャライトの採用ブランディング】AIがスカウトを書く時代に「採用ブランディング」がなぜ必要なのか改めて整理してみた。
1. はじめに
もはや最近はAIスカウトは主流になり、とある企業様ではスカウト送付の選定から送付まで、AIで自動化できるなんて話も耳にするようになりました。
1年前、「AIvsスカウトオタク」というウェビナーに登壇するほど、まだまだAIが出始めていて、私自身カスタマイズ文章に強みを持っていた中で、タイトルの通り、表向きは「AIには負けない!」というスタンスで話していました。
でも正直に言うと、当時の私の本音は全然違いました。
「人間のスキルは、遅かれ早かれAIに追いつかれていく。ならば、AIと共存しながら、いかに人に響くスカウトを届けるか。」
そういう問いを、心のどこかで抱えながら話していたんです。
あれから、1年経ちました。
その問いへの答えが、今の採用市場にはっきりと突きつけられています。
AIは今、80〜90点のスカウトをほぼ無限に生成できます。
候補者ごとに褒めポイントをカスタマイズし、文脈を読み、訴求を組み立て、かつて私たちが時間をかけてやっていたことを、AIが一瞬でやってしまいます。
その結果、どの企業のスカウトも同じクオリティに引き上げられた。
でも逆説的に、「差別化」は消えていく一方です。
だからこそ、
「AIでかなり詳細にカスタマイズしているのにスカウトの返信をいただけない」
「求人票を丁寧に書いても、応募が増えない」
「選考に進んでもらったが、辞退者が多い」
そしてその後に続くのが、決まってこの言葉です。
「まだ魅力の伝え方が足りないのかもしれない」
でも、本当にそうでしょうか?
残りの10点は、「伝え方」ではなく「何を伝えるか」の設計にある。
今日は、そう思うに至った「構造的な理由」と、だからこそ今採用ブランディングに向き合う必要があるのかを、私なりに言語化してみようと思います。
2. まず「魅力」の定義から整理したい
少し話の前提から始めます。
ポテンシャライトでは「魅力」をこう定義しています。
魅力 =「事実」を相対比較して、希少価値を上げた事項
つまり「魅力」は「事実」とは違う、という話です。
ポテンシャライト代表の山根がよく使うタピオカの例えが、個人的にとてもわかりやすいと思っています。
タピオカがトレンドになり始めた2017年頃、タピオカ屋は希少だったので、30分並んでも飲みたいと思う人が続出しました。
でも2019年になると、街に何店舗も乱立して、誰も並ばなくなった。
タピオカ自体が変わったわけじゃない。
希少価値が消えただけです。
これ、採用活動に当てはめると、怖いほど同じ現象が起きています。
「フラットな組織です」
「裁量を持って働けます」
「チャレンジを歓迎する文化があります」
これらは、事実かもしれない。
でも今や、何十社も同じことを言っていますよね。
希少価値がほぼなくなってしまっています。つまり「魅力」ではない、ということです。
3. スカウトも求人票も、今や「タピオカ乱立時代」
ここにAIが加わると、さらに加速します。
ChatGPTやGeminiに「エンジニア向けスカウト文を書いて」と入力すれば、10秒でそれっぽい文章が生成されます。求人票も同じです。
これ自体は悪いことではないし、私もAIを活用しているので否定するつもりは全くありません。
でも、便利になったのは全員が同じ、というのが問題です。
実際、生成AIによるパラダイムシフトは2025年に大きく加速しており、海外ではソフトウェアエンジニアの求人数が2022年と比較して約50%減少したというデータもあります。
採用市場に何が起きているかというと、求職者さまの受信欄に、似たようなスカウトが大量に届いている。求人サイトには似たような求人票が並んでいる。
その結果、求職者さまの目に入らなくなっている。
タピオカ屋が街に溢れて、誰も足を止めなくなった状況と全く同じです。
3. 「魅力を伝える」より前に必要なこと
ここで少し立ち止まって考えてみると、多くの企業が「もっと魅力を伝えなければ」と考えたとき、追加するのは「情報量」です。
社員インタビューを増やしてみたり、採用サイトのコンテンツを充実させたり、発信の頻度を上げたり。
でもそれは、「タピオカの品種をさらに増やす」アプローチであって、希少価値を上げることにはつながっていない場合があります。
私がポテンシャライトで採用ブランディング支援をしていて実感するのは、問題はむしろ「上流」にあるということです。
「なぜ、あなたの会社でなければならないのか」
この問いに、自分たちの言葉で答えられているか?
ここができていないまま、どれだけ発信量を増やしても、みんなと同じ土俵で戦い続けるだけになってしまいます。
4. IFAというフレームワークで見えてくること
ポテンシャライトでは、採用ブランディングを設計するときに「IFA」というフレームワークを使っています。
I(Important):なぜその魅力が求職者さまにとって重要なのか
F(Fact):事実
A(Attract):魅力
多くの企業がやっているのは「FとA」だけです。
「こういう事実があって、こんな魅力があります」という伝え方。
※細かくいうと、この「魅力」もちゃんと比較観点と希少価値を加えた形で伝えられているのか…という点もありますが、一旦割愛します。
でもこれだと、求職者さまの心は動きにくい。
なぜかというと、求職者さまが「それが自分にとって重要だとまだ気づいていない」ケースがとても多いからです。
「転職活動の軸」は、これまでの人生で接してきた人や環境によって形成されています。つまり、求職者さまが「これは重要じゃない」と思っていることでも、実は求職者さまのキャリア形成において非常に重要な要素である場合がある。
Important (重要性)を語るというのは、単に「うちはここが良い」を伝えることではなく、求職者さまがまだ気づいていない景色を見せて、選択基準を「再考」していただくことだと思っています。
例えば、「創業20年の安定企業」という事実があったとして、事実だけの伝え方は「創業20年の実績ある企業です」でしょう。
重要性を加えた伝え方であれば「日本経済は約8〜10年スパンで不景気が訪れると言われています。創業20年ということは、複数の経済ショックを乗り越えた企業体力を持つということ。それは、景気の波に左右されにくい安定した環境でキャリアを積めることを意味します」という要素が加わる。
この違いが、求職者さまの判断軸に入るかどうかを決めます。
5. 「うちでもできる」けど、差が出る理由
商談をさせていただくとき、このような質問をよくいただきます。
「ヒアリングして、魅力を整理・言語化する流れなら、社内でもできるのではないですか?」
正直な話をすると、プロセス自体は内製でもできます。
でも、アウトプットの「深さ」と「広がり」には差が出ます。理由は主に3つだと思っています。
① 「当たり前」に気づけない
社内にいると、自分たちの強みが「当たり前」になって見えなくなります。第三者が入ることで、「それ、すごく珍しいんですよ」という気づきが生まれる。
② 求職者インサイトの深さが違う
求職者さまは、自分の意思決定の理由を必ずしも言語化できていません。「なんとなく安定が欲しい」の裏に、「親の介護が始まるかもしれない」という文脈があるかもしれない。表面的なニーズだけを拾うと、他社と似た訴求になります。
③ 「どの土俵で戦うか」の設計ができていない
求職者さまの選択肢には、自社だけでなく他業界の企業も入っています。
競合の打ち出しを踏まえた上で、自社がどのポジションを取るか。この「競合設計」がないと、気づかないうちに全員と同じ土俵で戦い続けることになります。
6. AI時代だからこそ、「中身」で差をつける
AIがスカウトを書いてくれる時代になったからこそ、スカウトを送る「前」の設計が勝負どころになっています。
AIがどれだけ上手な文章を生成しても、伝える内容が他社と同じなら、求職者さまには届きません。
逆に言えば、採用ブランディングができている会社は、AIを活用することで「届く量×届く質」を両立できます。
採用ブランディングとは、スカウトや求人票を作る「前」に、自社の魅力を「発掘」「言語化」「整理」する上流の設計です。
「魅力の伝え方を工夫する」より前に、「何を伝えるか」を設計する。
この順番を間違えると、どれだけ発信量を増やしても、タピオカが乱立する街の中の一軒で終わってしまいます。
7. さいごに
このブログを読んでいる採用担当の方・経営者の方に、一つだけ問いかけさせてください。
「なぜ、あなたの会社でなければならないのか」
求職者さま立場の言葉で語れますか?
もし少しでも詰まったなら、採用ブランディングを改めて考えてみるのも良いかもしれません。
ポテンシャライトではIFAフレームワークをはじめ、採用ブランディングの設計支援を行っています。
気になった方はお気軽にお声がけください。
著者:
HRパートナー ミネナホ
2022年12月より株式会社ポテンシャライトでHRパートナーとして採用戦略〜オペレーション業務など、幅広く採用支援を経験。
2026年1月より採用マーケティングサービス企画として、採用ブランディングならびに採用ブランディングの活用事例を推進中。
