【京都ご近所さんぽ】太秦編①:住宅街の蛇塚古墳と、男前パラダイスのランチ、の話
梅雨の晴れ間と書くとさわやかなイメージを受けるが、なんてことはない京都は暑い
けれどもまあ、とりあえず雨じゃなくてよかったなと思いながら家を出た
何ヶ月も前に予約していた蛇塚古墳を見に行くためである
蛇塚古墳の石室を中から見るためには京都市の文化財保護課へ事前にお願いをしておかないといけない
ついでだから他にもいきたい人いませんかーと旅の仲間に声をかけたら日本各地から10人の参加があった
みんな、フットワーク軽すぎる
太秦(うずまさ)駅で11時

JR太秦駅で待ち合わせると、なんと3分前に全員集合。
うん、いつもながら優秀な人たち。
ちなみに、太秦へ行くには電車が便利だ。お勧めは、この日私たちが集合したJR太秦駅。そして、先ごろステキなトラム風の新車を導入してちょっと話題になった「嵐電」。本当は京福電鉄嵐山線なのだけれど、京都の人は嵐山に行く電車だから「嵐電(らんでん)」と呼ぶ。こちらの最寄り駅は帷子ノ辻(かたびらのつじ)駅。
京都の地名は難読なものが多いが、この駅名もそうだと思う。由来はちょっと怖い絵がかかわっている。(檀林皇后の九相図の話はまた別の場所で)
嵯峨天皇の皇后である橘嘉智子(たちばのかちこ・檀林皇后)は、絶世の美女として知られていました。仏教に深く帰依していた彼女は、生前の美しさや権力もいずれは朽ち果てるという「諸行無常」を自らの死をもって人々に教えるため、「自分の亡骸は埋葬せず、辻に捨てて鳥や獣の餌にせよ」と遺言を残しました。その葬送の行列がこの辻に差し掛かった際、棺を覆っていた「帷子(死に装束の麻衣)」が風に飛ばされたという逸話から名付けられたとされています
レッツ!古墳

散歩の第一目的地は蛇塚古墳。 え?京都に古墳があるの?って思うでしょ。 これが調べてみると、たくさんあるのだ。
特に、ここ太秦一帯は遠い昔に大陸から技術と智をもって渡ってきた渡来系の「秦氏(はたうじ)」の統治した地域であったと言われている。 どう?神秘的でしょ。ワクワクしてきたでしょ。
と、前振りをしながら御一行様をご案内。 途中、この町の象徴である東映映画スタジオの門の前もチラ見しながら通る。守衛さんがたくさん立っているので先へは入れないけれど、たまにパチンコ帰りの落ち武者がふらふら歩いていたりする。それがこの街の魅力。
駅から徒歩で10分ほど。 「ほんまにここで大丈夫?」ってくらい普通の住宅地を抜けると、前方にむき出しの巨石が見えてくる。あのときの感覚は、「マジですか?」が最も正しい表現だと思う。それくらい突然に、日常のど真ん中に古代が現れるのだ。
すでに書いている通り、ここ太秦には古墳が点在している。 ここ、蛇塚古墳が特別なのは、京都府下最大の横穴式石室があるからなのだ。 今では石室がむき出しになっているけれど、かつては全長75メートルの西南向きの前方後円墳だった。ちなみに古墳の向きは結構フリーで、古墳によって違うらしい。 当時の人が「ま、こっち向きでいいか」って感じで作ってるんじゃないかなと書いたら歴史家の人に怒られるかもしれない。そして、前方後円墳の前は四角い方なんだよって小耳に挟んだ豆知識を披露したりする。たぶんドヤ顔だったと思う。
目の前に現れたこの石室、周りをぐるっと住宅に取り囲まれている。 だから、ここに住む人たちは、朝窓を開けると毎日がこの景色なのだ。ご近所さんたちは当たり前のように犬の散歩とかしているし、下駄履きで回覧板を隣に持って行ったりしているわけだ。すごく不思議だけど、よく考えたら京都人は年代が古いかどうかっていうだけで歴史的な建造物のお隣さんって人は多い。中に住んでいる人も多いし。あらためて、自分の生まれ育った場所のすごさを感じた。
注意が必要なのは、この石室の内部に入るためには、京都市の文化財保護課に許可をもらわなければならないことのみ。 事前にネットで申し込みをすると電話がかかってきて、 実家に帰るみたいなテンションで『古墳の前の家の○○さんか○○さんに鍵預けときますから』 って、さらっと言われる。
その感じとっても好き。
そして本当に、古代ロマンへの入り口の鍵は、お向かいの家のおじさまが開けてくれた。 『見終わったら南京錠かけて帰ってね』って。
これが、私が愛する普通の京都の姿です。



いよいよレッツ古墳!
いやね、インディ・ジョーンズ!
巨石に取り囲まれた石室の中は、梅雨の蒸し暑さを遮り、少しひんやりとしている。 天井の石はなくなっているから、そこから古代と同じ空が見えて、脳内は暫しタイムスリップ。
巨石の間から巨木が生えているのは、この石がはるかはるか昔の人々により積み上げられたことの証明か。 隙間から間近に見える人々の「普通の暮らし」が、さらに不思議を増幅する。
ちょっと鳥肌が立つ経験。
最後は忘れずに南京錠をかけました。
レトロな男前に囲まれてランチです

インディ・ジョーンズたちはお腹が空いた。 古墳の感動を興奮気味に話しながら住宅地を迷い歩き、通常5分くらいでたどり着くはずの「太秦大映通り商店街」へ、15分はかかって到着。太秦大映通り商店街はその名の通り、映画がコンセプトになっている。 まず、映画 の フィルムに見立てられた道路。

そして、端っこのスーパーの前には、あの大魔神像がドーンと立っている。
『あの』、と書いたけれど古い映画なので知っている人は特撮界隈を覗いて少ないかもしれない。簡単に言えば、大魔神は、かつて大映が制作した特撮時代劇。日本の特撮映画の金字塔なのだ。
ここで一行は首をかしげる。 「大魔神って……ヒーロー? 悪者?」
相棒のGeminiによると、 『大魔神って、いじめられている領民を助けてくれるからヒーローなんですけど、怒り狂ったら敵味方関係なくすべてを破壊し尽くすから、結果的に一番恐ろしいっていう絶妙なキャラクターなんですよね』 だそうで、あ〜ゴジラとかセガール的な何かなのね、と妙に納得がいく。
なんかライオンの頭をしたお侍さんが河原で金目党を倒す話じゃなかったっけ……? と頭をよぎったけれど、声に出して聞かなくて本当によかったということは、胸の奥深くにしまいつつ先を急ぐ。
探検を終えたインディジョーンズたちはお腹が空いているのだ。




本日のランチは 映画の街を体現するようなお店「キネマキッチン」で。レトロな内装の店内には映画関連のグッズが所狭しと飾られている。お店のお姉さまたちはとても愛想がよく、飾ってあるお宝の由来について楽しそうにおしゃべりしてくれたりする。通りに面した窓際を覗けばレトロなカメラがずらりと並び、奥の部屋へと進むと、今度は古い映画ポスターが壁一面に飾られている。
「雷蔵って誰?」 「坂東妻三郎って誰?」あの往年の大スターたちをリアルタイムで知らない世代であっても、ポスターのなかに映し出される武士たちが、めちゃくちゃ男前なのは否が応でも理解できる。
まさに、男前パラダイス。
そして、ここのメニューも、まぁまぁ男前。 ボリューム満点でがっつりお腹に響く、どこか懐かしい洋風ランチが体に染み渡る。


大満足でお会計を済ませ、帰りがけにふと窓際を見つめると、なんと「科警研のマリコさん」のサインがさりげなく飾ってあった。ここもきっと細胞レベルで調べつくされているに違いない。
