あすみ小学校ビレッジ ⑥新しい風 連載恋愛小説
入り口には、古ぼけた木製の「営業中」看板が立てかけてある。
アトリエを解放し、制作過程を自由に見てもらう趣向。見学者は進捗状況が気になって、プロジェクトに参加している感覚に。
いつのまにか、自分ごととして応援する空気が醸成される。もちろん、これは千種のシナリオだ。
旧街道のあたりは今と変わらない姿で、それを知るとふるさとへの愛着がより深まる。古い資料を千種からたんまり与えられたおかげで、イメージはすぐにふくらんだという。
「路面電車は動かせるようにするよ? まだ途中だけど」
「わあ……おとなも子どもも食いつきそうですね!」
年齢にかかわらずワクワクできる場。それが「あすみ小学校ビレッジ」のテーマだ。
あすみの魅力をギュッと凝縮させ、理屈抜きで直感に訴えかける作品。ぴったりの人材を見つけてきた、さすがの最強上司・森下千種。
龍次は応募したわけではなく、千種にスカウトされたらしい。
「SNS見てくれてるなあと思ってたら、DM来て」
環境を変えるのはニガテだから、といったんは断ったらしい。
が、そんなことであの千種が引き下がるはずもない。むしろ燃え上がる。
鬼メールで猛プッシュされ、根負け。
模型づくりのノウハウを動画でアップしていたら、問い合わせが入るように。展示会に出品したら、オーダーメイド注文など、ほかの仕事もふえた。
ガツガツ営業したわけではないのに軌道にのっているのは、オリジナルの世界観があるという強みのおかげだろうか。
「おもしろいプロジェクトだよね。半年住み込むとか」
去年度のひとは、気に入って期間を延長し1年間ビレッジに滞在した。
ゆくゆくは参加者の規模を増やし、そのなかから移住者が出てくれれば、というのが狙いだ。
実際に移住しなくても、芸術家が明日海市で生活しビレッジ村民と交流すれば、なんらかの化学反応が起こるのは確実。
新しい風を吹き込んでくれる存在になる。
(つづく)

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