あすみ小学校ビレッジ ⑰休む勇気 連載恋愛小説
「いづみやさんに甘えすぎじゃないでしょうか」
とある会議の日。いつになく硬い声の龍次を泉は思い返していた。風邪ぎみで鼻声の泉が必死に進行しているさなか、関係のない話で数人が笑い声をたてたタイミング。
チームに連帯感が生まれ仲良くなったはいいものの、緊張感に欠けるという副産物も目立っていたころだ。
花火を扱うイベントは、一瞬の油断で突発的な事故が起こりかねない。その日は、安全対策を再確認する議題だった。
「あのときは、ありがとう。ふっと力が抜けた」
「思ったことを言っただけ。むしろ言わないと気が変になる」
千種の抜けた穴をなんとかしようと、容量以上の仕事をしようとしていた。
「自分に厳しくしすぎず、ゆるくていいんじゃないかな」
まわりを観察して全体を把握する。頼るのも仕事のうちだと、あの日、彼にさとされた。
体調が悪いときは休む。シンプル極まりないはずなのにハードルが高い。休める空気をつくっていない僕らも悪い。「がんばるのと無理するのは、別物だよ」と。
いつだったか、彼に説教したことがあった。寝ずに仕事するのはどうかと思う、とエラそうに。
「歴史はくり返す、だね」
「ちょっとちがうと思う」
龍次は、ふふっと息をもらす。そのほほえみがなんともやさしくて、心に焼きつけようと泉は思った。
ずっと走り続けていないとだめだと、思い込んでいた。そうでないと認められない。存在意義がないと。
「切り株に腰を下ろすのも粋だよ」
彼はベンチの表面をポンとたたく。
言動に説得力がある理由もわかった。年にいちど仲間と「クラフト市」を開催している関係で、オーガナイズする側の大変さがわかるという。
葛粉入り「溶けないアイスキャンデー」を並んで味わう、祭りの夜。ここまで凪いだ心持ちでこの日を迎えることができようとは、思いも寄らなかった。
ラムネ味を食べていた龍次が泉の桃アイスに興味を示し、サクッとひとくち強奪する。
「花火の前におばけ屋敷でも行く?」
花子さん騒動を思い出し、息を呑む。
「もう肝試しは、こりごり?」
うんうんと二度うなずく泉に、龍次はおなかを抱えて笑った。
(つづく)

「あすみ小学校ビレッジ」広報部長兼村長
スミ氏近影
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