あすみ小学校ビレッジ ⑤アトリエミュージアム 連載恋愛小説
「光熱費とかヤバイかな?」
「そこまで影響はないと思いますけど……」
それよりも彼の体が心配になり、1日のルーティーンを聞き出す。案の定、生活時間はめちゃくちゃ、食事を抜くこともよくあるという。
体調管理の重要性についてことこまかに説明していると、龍次はあくびをした。
「話が長くてすみませんね」
ちょっとトゲが入ってしまった。
「あ……ごめん。生理現象。いづみやさんてお人好しだよね。ルール違反の人間をしからないし。健康管理は職務外では?」
裏のない素朴な疑問。たしかに一理ある。
「ひとりで調べにくるのもどうかと思うよ? ガチ不審者だったら、どうすんの。あぶないじゃん」
花子さん御本人に注意される。
50年前の明日海市中心部を再現する。それをテーマに彼は制作中だ。
8月の夏祭りにお披露目する計画になっている。
「どうですか? 順調?」
「うーん。まあまあかな」
虫眼鏡を渡され、泉は感想を求められた。
「ん? なんか違和感が……」
そこかしこに、昔には存在しないはずの物がひそませてあるという。
2枚並んだ同じ絵柄から、ちがいを見つける遊び。「まちがいさがし」の立体版ということか。
「機転が利くとは思ってたけど、やっぱ鋭いよね」
まぐれですよ、と言ってはみたが、泉は内心にやけてしまった。
最初の1カ月、顔合わせのために泉はビレッジを案内してまわった。
行く先々で彼はヘンなものに興味を示し、店の主人に質問。たまたまそれが隠れた名品だったりして話がはずみ。
自然体でどこかとぼけたキャラは村民に受け、龍次のアトリエは差し入れでいっぱい。
差し入れといっても生ものではなく、昭和な広告やラムネの空き瓶、花柄のケトルに黒電話。「一昔前のあすみを再現する」と聞きつけて見学にきては、置き土産をする。
みんなのイチオシ・レトログッズのおかげで、ここはアトリエというよりミュージアムと化している。
(つづく)

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