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よくばりアフタヌーンティー いちご&抹茶づくしをどうぞ|連作小説⑯

1948字

 お花見弁当は、キッチンカーではなくブースで雛隊のおばちゃんたちが販売。
 お店では、一青いっせいにしかできない「アフタヌーンティープレート よくばりいちご&抹茶」を桜フェス期間中に提供する。

 いちごミルフィーユはサクサクほろり、さくらリキュール香るシフォンケーキ、マカロン、シュークリーム、いちごのフルーツサンド。ミルクわらびもちには、フレッシュいちごのソースをからめて。
 抹茶陣は、オトナのほろにがNYチーズケーキ、抹茶とホワイトチョコのロールケーキ。プリンにムース、アイスを重ねた抹茶グラススイーツ。抹茶パウダーをまぶしたなめらか食感の大福。桜花を閉じ込めた寒天の下段は、苔むす抹茶の濃厚テリーヌ。

 セイボリー(軽食)は、ロールキャベツ、ほうれん草とリコッタチーズのキッシュ、若鶏のグリル・ハニーマスタードソース。
 切り株デザインのお皿にずらりと勢ぞろい。それぞれ小ぶりなのがときめく。ポットサービスの春摘みダージリン紅茶 or コーヒー付きで3500円也。
 この極上スイーツプレートは、幸福と同義だと断言できる。

 幻想的な夜桜をバックに、ゆらめく泡が飛んでははじける。
 シャボン玉大道芸人と交渉した、ありさのお手柄だ。推し活のアイスショー(フィギュアスケート)でバブルパフォーマンスに遭遇し、ロックオン。「ぜってーオトす」と決意したそう。
 春先は依頼が立て込むとの情報を入手し、何カ月も前からしつこく、もとい熱心に口説いた努力の賜物たまもの
 駐車場を使ったひろびろとした会場には、地酒などの飲食物販ブース、ワークショップコーナー。ステージでは和太鼓演奏やライブがおこなわれている。
 プリンセス衣装に着替え写真撮影ができる「縁日プリンセス」には、はしゃぐ樹里とげっそりモードの美絵みえがいた。

花歩かほちゃん、おつかれさま~」
 声をかけてきたのは、一青の母・雪野だった。
 レトロバス内でアクセサリーづくり体験ができる。ピンクとグレイのかわいいツートン塗装に引き寄せられ、家族連れがわいわい参加していた。
 車内も編み物作品やカラフルな毛糸玉にあふれ、心躍る隠れ家の雰囲気。
「おじゃまします。雪野さんのブースですか?」
 ハンドメイドサークルでグループ出店をすると、ちらっと聞いていた。

 雪野の隣にいる人物と花歩は見つめあい、固まった。
「え? なんで……」
 自分の母親と予想外のところで会うと、後ろめたくもないのにヘンに動揺してしまう。
「花歩こそ、なんで? ゆきのんさんと知り合い?」
「ゆきのんさん……?」
 両手で口を覆い、雪野が歓声をあげる。
「もしかして、ハナちゃんの娘さん? すごっ! 鳥肌立ったあ」
 話を整理しよう。ゆきのんこと雪野と、ハナこと律子(花歩の母)はSNSで知り合い、意気投合。リアルで会うのも7回目らしい。

 そういえば、毎日やりとりをしている友達がいたんだっけ。
「花歩ちゃんのセンスのよさは、ハナちゃん譲りかあ。ナットクナットク~」
 いまだ呑み込めない花歩とは対照的に、雪野は満面の笑み。
「なんだか縁があるねえ」
 ウチの次男が正式におつきあいさせてもらっています。立ち上がり、雪野は改まった表情になる。
「ふつつかな息子ですが、なにとぞよろしくお願い申し上げます」
 冷や汗をかいている花歩よりも大げさに、ペコペコお辞儀しあうふたり。今度、みんなで一緒に食事をしようと盛り上がっている。

「料理にしか興味ないからねえ、ほかはさっぱり。それより、娘ができたみたいでめちゃくちゃうれしいんだ、ハナちゃんありがとね。花歩さんは着せ替え人形じゃないからなんて、いっちゃんに釘刺されてさ。あ、これ似合いそう~って色違いを買ってドン引きされたりね」
 暴走ぎみの雪野に目をぱちくりさせつつ、花歩は母と笑った。
 つきあっている人がいると、ひとこともつたえていなかったのに。
「ようすみてればわかります、私も女ですから。ついでにゆっとくけど。おかあさん、ここで働くことにしたから」
 今夜は情報量が多すぎる。

 ヒナタボコの駐車場にバスを停め、週イチで共同ハンドメイドカフェをひらく。雪野と母がそこまでの関係を築いていたとは。
 イチオシは、毛糸のかわりにワイヤーを使うかぎ針編みアクセ。形成しやすく、初心者でも短時間で作品が仕上がるとのこと。
「ハンドメイド体験とスイーツ&ドリンクをセットで。いいアイデアでしょ?」と母の目はキラキラしている。
 当然ながら、一青が腕を振るい、徒歩0分デリバリーをすることになるのだろう。
 以前はくすんだ色味の服装だった母。今日はTシャツと花柄スカートにビスチェ風手編みニットを合わせ、レトロブームの最先端を走っている。 
 母の今は、確実に動きだしている。うれしいような寂しいような、あたたかな風の夜だった。

(つづく)

▽つづき:第17話

▽前回のお話:第15話

▽目次:第1話~

スイーツのお届けでーす( ´∀`)

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