居眠り猫と主治医 ⑤野鳥観察ハイク 連載恋愛小説
「登山……ですか。私、運動はあんまり……」
この頃、クリニック交流会はバージョンアップしており、海へ山へと活動の幅を広げていた。
里佳子が文乃のためらいを一笑に付する。
「だいじょぶだいじょぶー。初心者もヨユーのハイキングコースだから」
野鳥観察というフレーズにつられて来てみれば、圧倒的な新録の美しさに言葉を失う。あこがれの青い鳥御三家の一角・オオルリをちらりとだが目にできて、否が応にもテンションが上がる。
「夏目センセのカメラ、ガチだー。ウケるー」
人だかりができているのでのぞいてみると、でっかいカメラをたずさえた夏目祐がメンバーにいじられていた。
「人間撮る気ゼロですよね」
皆は山小屋カフェ弁当に夢中になっている。照り焼きチキンのホットサンドか、チーズたっぷりタコスの二択だ。
求められるまま集合写真を撮影していた彼は、イヤそうな顔ひとつしなかった。切り替えがすごいなと文乃は感服する。
「鳥で容量オーバーですとか、言えばいいのに」
こちらをちらりと見たあと、反応しない。あれ以来、文乃には営業スマイルを封印したらしい。
「そっちこそ、無理して来なくてもいいのでは」
幹事がふたり一組の輪番制なことを教えてあげた。
「里佳子さんにおんぶに抱っこですけど」
汗ばんだ首筋をなでる、ひんやりとした風がなんとも気持ちいい。
山上付近は、体感温度がだいぶ異なる気がする。運動はメンタルに効くんだなと実感する。
「鉄分サプリ、サボってない?」
「サボる前提ですか」
なんだかんだと健康を気づかってくれるのは、一種の職業病なんだろう。
言われたとおり、オススメのメーカー商品をゲットしていた。毎日飲む習慣がちゃんとつくか、あやしいけど。
(つづく)

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