あすみ小学校ビレッジ ③おおきな子どもとちいさな先生 連載恋愛小説
校舎でお泊まりする「小学校ホテル」は、大好評だ。プールを改修した大浴場、教室っぽさを残した客室。
ビレッジには給食風メニューが食べられる食堂もあり、徹底してノスタルジーを刺激する。
夏に屋上ビアガーデンが登場するのは、千種のアイデアだ。学校で飲酒するという背徳感と解放感が、オトナを引きつけてやまない。
駄菓子屋は「あすみ小学校ビレッジ」で1、2を争う人気店。
三橋瑠美は70代。ちいさい頃からの「お店やさんになる夢」を第二の人生でかなえ、毎日うきうきと店番している。
彼女の放つ癒やしオーラに惹かれ、泉は用がなくても立ち寄ってしまう。まるで縁側でひなたっぼこをしているような気分になれるのだ。
寄り添ってくれるのは、わんこ副店長。あまりにおっとりしていて置物にまちがえられる、黒柴のスミくんだ。
「で、アレが例のひとなわけだ……」
瑠美が声をひそめているのは、塩屋龍次が駄菓子えらびに没頭しているため。
食べ物だけでなく、ちいさなおもちゃも扱っている瑠美の店。それが彼の心臓をわしづかみにしたようだ。
「おい、オッサン。自制心ねーのかよ?」
通路に直立しているのは、光石善。小学2年生だ。
龍次はキョロキョロしたあと、そばにいたちいさな常識人にやっと気づいた。
専用のかごには、あふれんばかりのお菓子やおもちゃが投げ込まれ、実際にぼろぼろと落ちていた。善はそれをつめたく一瞥する。
「えっと……せめて2千円以内にしときます? いつでも来れるんで」
スミくんをなでるのをやめ、紙風船と一億万円札をあわてて拾う。泉のフォローに、龍次の表情が険しくなる。
「いえ。千円に挑みます」
あまりにキリッと宣言されたので、笑うタイミングを逸してしまった。
社交場を荒らしお恥ずかしい、と善に謝罪する彼。
「ま、わかればいーんだけど」と先輩小学生は器の大きさを見せつける。
ふたりの身長差とちぐはぐさに、とうとう瑠美は白旗を上げた。笑いすぎて呼吸困難に陥っている。
「はー、しんど。なんかいいわあ。ヨシ、おねーさんがたこ焼きおごったげる」
おねーさんってだれですか……? と龍次がきょとんとし、善は自分の唇に指をあて制止した。
(つづく)

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