あすみ小学校ビレッジ ⑮夏祭り実行委員会 連載恋愛小説
「あすみ小学校ビレッジ夏祭り」は年々規模が拡大し、ビレッジ外の市民も参加している。実行委員会の会議は、半年前から定期開催されていた。
祭りまであとひと月となったころ、ちょっとしたあつれきが発生する。
会社員とそうでない者の出席率があきらかに異なり、自営業組に負担が偏ってきたのだ。
「仕事だから~って免罪符にされてもな。こっちもヒマじゃないっつうの」
「そーそー。なーんかモヤモヤするわあ」
日程調整に明け暮れていた泉は板挟みになり、落ち着かない。
オブザーバーとして出席していた龍次が「二部制にしては?」とつぶやいた。
同じ内容の会議を2日設定し、行けるほうをえらぶというもの。進行役はその都度変更し、議事録を共有する。
具体的かつ理にかなった提案に、部屋がしんと静まりかえる。
「あ……部外者が発言するのマズイっすかね?」
注目を浴び、居心地悪そうに座り直す彼。
感情論になりそうなところに、冷静な判断。一歩引いた立ち位置の彼だからこその妙案だった。
「すいません。スルーしてください。ひとりごとと寝言は、はっきり言うタイプです」
「訊いてませんけど」
こちらに顔を向け言うもんだから、泉はいつもの調子でツッコミを入れてしまった。
委員のひとりがガハガハ笑いだし、場の緊張感が解ける。
「にーちゃん、ぽやーっとしてるかと思ったら、頭いいな」
「それ採用!」
龍次は困ったように左右の席にお辞儀をした。
オサムがコホンと咳払いする。
「こちら、にーちゃん改め塩屋龍次さんです」
「お、おお。塩屋さん、あんがとな!」
ウソみたいに空気がゆるみ、泉はほっと息をついた。
夏祭り最大の花形は「オヤジの青春花火大会」
市販の玩具花火を用いてお父さんたちが花火師を務める、手づくり花火大会だ。この準備の大変なこと。
市の環境局に開催の申請をし、消防局に協力要請。当日、消防車を待機してもらう手はずをととのえる。地元消防団とも連携が必要だ。
日程が決まれば、チラシのデザイン、印刷、配布etc. 全方位でやらなければならないことだらけ。
花火大会の運営費は、おもに地元企業団体の協賛金でまかなう。NPO法人「アスミライ」(森下オサム代表)が、市からの助成金確保もしている。
老舗の卸売店が花火を安く提供してくれることもあり、一般的な大会とちがって予算は低く抑えられている。
その花火屋さんの技術指導のもと、練習も必須。演目の相談、導線確認、安全面の配慮。
祭りが迫ってくれば、通し稽古のようなシミュレーションをする。
花火の練習は、どうしても日が暮れてからの集合になる。1日じゅうビレッジにいるんじゃないかと錯覚すら覚える。
もれがないか考えすぎて泉は頭が沸騰し、ここ数日は浅い眠りしかとれていない。今までいかに千種に頼っていたかを思い知らされる。
(つづく)

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