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居眠り猫と主治医 ⑱合鍵のゆくえ 連載恋愛小説

 まさかのブツがテーブルに現れ、文乃は目を疑う。
「なんですか、これ」
「見てのとおり、カギ」
「どこの」
「ここの」
 合鍵といつまでもにらめっこしている文乃の手をひらかせ、祐はしっかりと握らせた。

「体調悪かったり、気が乗らなかったら、拒んでいいから」
 会うたび関係していたら、品性を疑われると彼は主張する。
 その手が文乃の髪をほどいている自覚はないらしい。おかげで、まとめ髪はラフにしておくのが習慣になりつつあった。
「片方が欲求を通してるだけだと、長続きしない」
「長続き……」
「なにがしたい?」
 くっついて眠りたいという文乃の希望は、結局後回しにされた。
「きれいさっぱりなくなっても、知らないよ?」
「なにが」
「金目の物?」
 ふっと笑ったあと、きつく抱きしめてくるので文乃の心までぎゅっとなった。

 毎日ひとりで眠っているベッドに他人がいれば、寝づらくてしょうがないと思うのだが、彼は気に留めるようすはない。
「ずっと同じ姿勢だと肩が凝るから、私のこところがしてでも寝返り打っていいから」
 反応がないので、蹴とばしてもいいと付け加えてみる。
「……え、うそ。もしかして、私が蹴とばしたり暴れたりしてる?」
 なんでそうなる、と頭をコッツンされた。
「抱き枕に申し分ない、寝相の良さですよ」

 安心してその胸に顔をうずめ、おさまりのいいポジションを探す。
「落ち着いた?」
「……うん」
「は、マジで猫みてー」
 そのあたりで強烈な睡魔に襲われ、おやすみを言えたかどうかさだかではない。
 使うつもりのなかった鍵は即刻返却され、家主の不興を買ったのだった。

(つづく)

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