娘の考えたオリンピック競技、こんなの大人には思いつかない
「ママ、見て!オリンピックの新しい競技を考えたんだ!」
娘がそう言って、かばんから一枚のプリントを差し出した。
毎週水曜日、子どもたちは学校で使ったプリント類をごっそりと持ち帰ってくる。アメリカの小学校は教科書をあまり使わず、小冊子や配布プリントで授業が進むことが多いから、一週間分でもなかなかの量になる。
正直、全部を丁寧にチェックしているわけではない。けれど、おもしろいものがあれば、たいてい子どもたちのほうから見せてくれる。
今回も、そのパターンだった。
「どんな競技なの?」
そう聞いたわたしに、娘は満面の笑みで答えた
「どんぐり拾い!」
その瞬間、わたしの頭の中には、よーいドンでどんぐりを高速で拾い集める、プロフェッショナル選手たちの姿がぱっと浮かんだ。
事前にどんぐりの分布を徹底的に分析し、最適ルートを割り出す。AIを使ってシミュレーションを重ね、チームで戦略を練る。コーチ陣の中には、やはりリスが一匹くらいはいるのかもしれない。
「今年の日本代表は、かなり仕上がっていますね」
解説者が真剣な顔でそう語る。
そんな、無駄に本格的な世界大会を想像していた。
ところが、娘が読み上げたルールは、わたしの想像とは少し違っていた。
「競技時間は二時間で、その間に最も多くのどんぐりを拾い集めたチームが勝ちです」
に、二時間。
完全にスピード勝負だと思っていた。まさか長期戦だったとは。もはやどんぐり拾いというより、どんぐり耐久レースである。
テレビ中継はどうなるんだろう。開始10分くらいで、画面の変化がほとんどなくなりそうな気もする。観戦者が途中で飽きて帰ってしまわないか心配だ。
「どんぐりが20個以下の場合は銅メダル、50個以上は金メダルがもらえます」
二時間で50個。
たぶん、わたしでも金メダルが取れる。しかも個人戦で。
ただ、そのために二時間どんぐりを拾い続ける覚悟があるかというと、
正直あまり自信がない。
(おわり)
