4歳の娘の悩み
ある夜。いつものように娘と一緒にベッドに入り、寝かしつけをしていると、隣で寝ている娘が、
「ママ。」
と、私を呼んだ。暗闇の中でもその表情がありありと見えそうなくらい、声が深刻だった。私は返事をしながら、内心なんだろうと身構えた。
「今日、メロディ(友達の名前)は私とも遊んだけど、ほとんどの時間はケリーと遊んだ。」
ぽつりぽつりと話す娘。その声は、悲しそうに沈んでいる。
メロディというのは、娘のプリスクールのクラスメイトで、ほぼ毎日一緒に遊んでいるらしい。プリンセスものや、ごっこ遊びが好きなところが似ていて、気が合うのだと思う。
この日、娘が私に打ち明けたことは、自分の友達であるメロディが、他の友達と遊ぶことが受け入れられないという、彼女の率直な気持ちである。
娘は、友達が多い方ではない。新しい友達ができるまでには比較的時間がかかるし、クラスでも口数は多くない(家に帰ってくると、ちょっと静かにして、と言いたくなるくらいしゃべるのだが)。グループでわいわい遊ぶより、少人数、もっというと1対1の深く濃い関係の方が心地良いタイプである。
普段、学校から帰ってきた娘に、「今日は誰と遊んだの?」と聞くと、ほぼ毎回答えは「メロディ」である。ときどき、違う友達の名前も出てくるが、それも大抵決まった数人のうちの誰かである。それは彼女の性格なので、それ自体はどうということはない。
「そうか。メロディがケリーと遊んでいるとき、君も一緒に遊んだの?」
「・・・ううん。」
「どうして?」
「・・・。」
「メロディがケリーと遊んでいるのを見て、君はどう思ったの?」
「・・・。」
おそらく、自分の沈んだ気持ちの正体を、自分でもよくわからずにいるのだろうと思って、娘に自分の気持ちを言葉に置き換えてみるよう促してみたが、娘からは思うように言葉が返ってこない。
「きっと君は、メロディに君とだけ遊んでほしいって思っているのかな。でも、メロディも君も、他のお友達とも遊んでいいのよ。他のお友達と遊んでも、メロディと君は仲良しのままなんだよ。」
暗闇の中で、娘はじっと私の言葉に耳を傾けている。表情は見えなくても、気配でそれがよくわかった。
「今度、メロディが他のお友達と遊んでいるときは、君も一緒に遊んでみたらいいと思うよ。」
と言うと、娘は小さな声で、「うん」とだけ答えた。
幼い娘にも、4歳なりの悩みがあるんだなあと妙にしみじみした気持ちで、娘が眠りにつくまで隣で横になっていた。小さな心を痛めている様子を見るのは、親としては切ない気持ちになってしまう。
でも、このプロセスこそが子どもをプリスクールへ通わせる意義であるように思う。家族という小さな社会を出て、学校というより大きな社会での立ち居振る舞いを学ぶこと。人間関係を築いて、相互のやりとりを積み重ねながら、いろんな感情を知り、その対処法を学んでいくこと。アルファベットや数の認識よりも、もっと大切なことだ。
この日の私の対応が、これで良かったのかはよくわからないけれど。
娘よ、ママはいつでも君を応援してるよ。
