レーザーカッターDIY|風呂敷パッチン作ってみた
既製品のふろしきパッチン、ちょっと大きい。
この「ちょっと」が、毎回イラっとする。
なのでレーザーカッターで自作した。
布の正体
これまで弁当の記事をいくつか上げてきたが、
見てくれた読者の方は、
写真のたびに同じ疑問を抱いているはずだ。
「弁当の下に敷いてあるやたら派手な柄の布、あれは一体なんなんだ」と。

答えはブロックプリントである。
手彫りの木版(ブロック)を使って、染料を押し重ねながら柄を作っていくインドの伝統的な染色技法だ。
仕組みとしては日本画などの木版画と同じだが、連続した模様を一個一個手作業でスタンプのように押していくので、当然印刷のバラつきが大きい。
普段、仕事で工業製品を扱っている私には、この不均一さこそが、独特の味であり最大の魅力だと感じてしまうのだ。
私はこの柄の布が好きで、集めては弁当のランチョンマットや風呂敷として使っている。
風呂敷バッグを作りたい
そして当然のように、一時期流行った「風呂敷バッグ」もやってみたくなる。
……が、これが意外とうまくいかない。
持ち手がよじれる、風呂敷が小さいので中身が飛び出す。

何より私が使っているブロックプリント布は少々小さめなので、結び方の自由度が足りず、バッグとして成立しにくい。
道具に頼ろう
そこで「ふろしきパッチン」という便利グッズを買おうとした。風呂敷に取り付けるだけでバッグにできるアレである。
だがここでも問題が起きる。市販品はサイズが決まっていて、私の布の寸法感にちょうど合わない。
少し大きい、少し穴の位置が違う、“少し”がジャブのように積み重なって
「買うほどではない不満」になっていく。
何か良い方法がないかなぁと思った時にひらめいた。
これだけシンプルなら 自分で作れるんじゃないか? と。
プロフィールにも書いてある通り、私の職業は機械設計である。こういう「寸法と構造で成立させる道具」は得意分野だ。
さらに趣味で家のDIYなどもやっているので、
工作機械や材料も揃っている。
早速作ってみよう!となった。
1.まずはゴールを決める
今回作るのは、いわゆる「ふろしきパッチン」を自分の布サイズに合わせて最適化したものだ。
満たしたい条件は以下。
- 小さめの布でもバッグになるサイズと穴配置
- ワンタッチで着脱できる
- 家庭用レーザーで加工できる材料・厚み
- 手作りでも見た目は安っぽさを出したくない。
市販品の機能を踏襲しつつ、サイズだけ「自分仕様」にする。
2. 使う加工機:家庭用レーザーカッター xTool D1 PRO(10W)
使う加工機は家庭用レーザーカッター xTool D1 PRO
家庭用でアマゾンでも比較的安価に手に入るのだが、
海外製でサポートは充実していないので、
ある程度DIY経験がないと、いきなり安全運用するのは難しいかもしれない。
実際、自分も以下を別途後付け・制作して、
やっと安定して安全に使える状態になった。

設置用の台座
排気用に窓際近くに設置したいので、移動できるようキャスター付きのもの。

本体を囲むカバー/排気用のダクト&ファン
煙と匂いの対策。これがないと部屋中が「焼き木の香り」になり喉がやられる。

冷却用のエアコンプレッサ
エアアシスト相当。切断品質が格段に上がるし、焦げが減る。
ただ、性能は素晴らしい。
このクラスの出力と精度を持つ国内の業務用モデルは、実際市場だと2〜3倍の価格で売られていたりする。それを考えるとコスパは抜群だ。
初めてレーザーカッターを購入して使いたい方は、以下のようなフリーのCADソフトを入手して使えるようにしておくことをお勧めする。
https://www.autodesk.com/jp/products/fusion-360/free-trial
3. 材料選び~設計:家庭用レーザーは“薄板積層”がいちばん強い
材料
- 木板 ×1 (300×200mm 厚み2mm)
- ネオジム磁石 ×4 (今回は100均のφ13×2.5mm)
- 木工用ボンド ×1
- 仕上げ用オイル(ワトコオイル等
- 紙やすり ×1 (#240〜#400あたりがあると楽)
- クランプ or 重し(接着時の圧着用)
家庭用のレーザーカッターは基本的に安全性を考慮して出力が弱めで、厚い素材を着るには何度も同じ箇所をレーザーが往復しなければならないので、
往復回数が増えるたびに単純に加工時間が倍になる。
それに何度も往復することによって切断面の精度も下がり切り口も焦げて見栄えも悪くなる。
今回みたいに「道具として剛性が欲しいパーツ」
を作るなら、薄板を切って貼り合わせるのが簡単で確実。
今回作る厚みは約10mm、2mmの工作用木板 を貼り合わせて使う。(ホームセンターで売っているやつで十分)
2㎜程度の木板であれば家庭用でも、2往復程度で切断する事が出来る。
構想設計
市販品と違って、自作の一番のメリットはここだ。サイズ感を布に合わせられる。やることは超簡単で
1. 使いたい布でお弁当箱を包んだ状態を作る
2. 「ここを通したい」という4点を見つける
3. その位置関係で穴配置を決める
まずはいきなり本番を作るのでは無く、厚紙で大まかな形を切って作り、現物で位置を合わせるなどで簡単に検証しておくことが一番大切。
デザイン
せっかく自作するなら、何かワンポイントが欲しい。
そこで今回は表面に、八角のイラスト を描いて彫刻することにした。レーザーの強みは、
こういう「好きなデザインを彫れる」ことだ。
アウトラインだけだと花なのか八角なのかわからなくない?と思うかもしれないが、それは私の絵心の問題である。
詳細設計

以上の材料を踏まえた上で、構造はこんな感じだ。
- 風呂敷に合わせたサイズと穴配置
- 厚み方向は、複数枚を積層して稼ぐ
- 複数の部品を貼り合わせる為の位置決めを設計する
- 中に 磁石 が入るポケット(凹み)を設計する
- 最後に表面彫刻の入った板を貼って顔を作る
4. 組み立て:組立は“位置決め”が9割

加工時間:彫刻〜切断合わせて約20分
実際にレーザーで出力した部品がこちらだ、
という気分で並べたら組み立てに入る。
手順は以下。

両端にある切り欠きに小さいかけら部品を差し込む これが位置決めである。
単純だが貼り合わせたときにズレないようにする“治具”みたいな役目。

位置決めに合わせて順々に、上から重ねて貼り合わせていき、木工用ボンドで貼る。
塗りすぎるとはみ出るし、乾燥も遅い。薄く均一にが正解。

両端の凹みにネオジム磁石を入れる。100均のネオジム磁石で十分。
ここは極性に注意。適当に入れると、完成したときに“反発して閉じないパッチン"が爆誕する。
おすすめは、片側を固定→もう片側は実物を近づけて吸着する向きで入れること。

最後に彫刻のある面を貼り付けて形は完成。これを2つ作る。

仕上げにワトコオイル(ダークウォールナット)を塗って完成。
ワトコオイルを塗っただけで、安い工作用木材も木目の風合いが出て一気に“製品っぽく”なる。
木工のDIYの世界では、だいたいオイルフィニッシュで全部解決する。
実際に使ってみる
では早速、風呂敷パッチンとして使ってみよう。手順はこうだ。

弁当箱を風呂敷で包みパッチンの4つの穴に、それぞれ風呂敷の端を通す

穴から出た風呂敷の端を結んで完成。
使ってみると思ってた以上に使いやすい。

最大のメリットは、弁当を出すとき・しまうときにいちいち縛ったり解いたりしなくていいことだ。
これが地味にありがたい。風呂敷の毎回結び直す手間も無いし、マグネットで着脱できるので小さな風呂敷でも中身が飛び出ない。
そして、自分の好きな柄の風呂敷をバッグにできるのが嬉しい。私のブロックプリント布はちょうどリバーシブルなので、裏返せば違う柄のバッグになる。
他の風呂敷も表裏合わせると、これだけいろいろなバリエーションのバッグが出来てしまう。

日によって毎日違うバッグにすることも出来そうだ。
このDIYの勘所:家庭用レーザーで“それっぽいプロダクト”を作るコツ
今回のポイントをまとめると、だいたいこの3つ。
- 厚みは積層で作る(家庭用レーザーの基本)
- ズレない仕組みを設計に入れる(位置決めパーツ)
- 仕上げで一気に格上げする(オイルは正義)
唯一の問題
唯一の問題は、こんな派手な柄のバッグを
30代のスーツ着たサラリーマンが持ち歩いている
というミスマッチさだが、
この達成感の前には、そんなことどうでも良くなってしまうのである。
