ファンダム太郎と友達の推し活
世の中には、わざわざ本名を隠してまで
やりたい善行がある。
私の場合、それが「推し活」だった。
今日の弁当

- 魯肉飯
- インゲンの涼拌
- 人参とナッツのコーサンバリ
魯肉飯とか涼拌とか、正式名称で書くと一気に本格的な雰囲気になるがやっていることは全部せいろに放り込んで、味付けを変えただけ。
名前の大切さを実感する。
ファンダム太郎と友達の推し活
前回は、私のサムネについて話した。
今回は、私の表示名「小麦粉舐め太郎」
について話そうと思う。
—と書くと、いかにも何か深い意味が隠されていそうな雰囲気が出るが、実態は逆である。
全然思い入れはない。
ただ、一度“ある出来事”が起きてしまったせいで、この名前を妙に覚えてしまい、
noteを始めるにあたり、他に良い名前が思い浮かばずにひとまず採用されてしまった。
その出来事は、私が人生で初めて“推し活"というものに挑戦した時の話である。
推しは友達
推しは、ジャズピアニストのhikaruさん。私の昔からの友人の一人である。
彼女の経歴を簡単に言うと、
「3年にわたり船上のピアニストとして世界中を飛び回って活動しており、現在は日本人初のバンドリーダーにまで昇格した人」
だ。文字にすると強い。
プロフィールの時点で既に物語がある。
で、ここで普通の読者はこう思うはずだ。
「なんでそんな世界中で活躍してる人が、こんな捻くれた陰キャみたいなやつと友人なの?」と、
しかし、真の陽キャというのは、どんな陰キャとでも“自然体”で仲良くなれる輝きを放っている。
しかも彼女、名前も光(hikaru)だし。
名は体を表すとはこのことだ。
ただ、彼女の道がずっと順風満帆だったわけではない。コロナ禍の頃、彼女のようなライブを主戦場にしていた人は一気に足場を失った。
ライブハウスの閉店や縮小、予定の白紙。音楽が“密”として扱われる世界で、それでも音楽を続けるのは、呼吸を止めたまま走るみたいなものだっただろう。そんな中でも前向きに、配信という形で活路を探している、と聞いた。
そこで私は考えた。
「何とか少しでも元気づけられないか」と。
そして辿り着いた結論が、推し活である。
だた一つ問題がある。
私は推し活をしたことがなかった。
推し活とはタイガーマスク
そもそも、昨今叫ばれている推し活って何なんだ?
調べるとだいたいこう書いてある。
“推し活とは、自分の「推し」(応援したい存在)を、ライブに行ったり、グッズを買ったりSNSで発信したり、いろんな形で応援して楽しむ活動全般である"
“活動全般” って便利な言葉だ。
便利すぎて、もう宗教法人の定款みたいだ。
じゃあ、物販やライブに行けば推し活なのか?
課金したら推し活なのか?
見守るだけでも推し活なのか?
私の中の推し活イメージは、
もっと人知れず、陰からサポートしてる感じだった。
なんかこう、ランドセルを寄付するタイガーマスク
みたいな…
拗らせた結果、推し活のロールモデルが
タイガーマスクになってしまった。
その為、推し活をするにあたり、私が最初に重視したのは「応援」ではなく「身バレ防止」だった。
この時点で、目的と手段が逆転している。
そして「まさか私だとバレないだろう」というペンネームを模索していたが、そもそもペンネームなんてもの付けたことが無く苦戦していた所、たまたまX(旧Twitter)で流れてきた投稿が目に入った。
「小麦粉を加熱せずに食べると食中毒になる」
という、豆知識なのか注意喚起なのか分からないもの。私はそこからこう結論した。
「もうこれでいいや!」
全く脈絡がない、逆にここまで脈絡のないものから私個人を特定するのは、どんな特定班でも難しいのではないだろうか? この匿名性は鉄壁だ。
その結果生まれたのがこのペンネームである。
「小麦粉舐め太郎」
改めて振り返ると、そこはシンプルに
”タイガーマスク”で良かっただろうと思う。
配信とは法事
彼女が挑戦していた配信の場に、私も参加することにした。配信アプリに登録して、投げ銭の仕組みをざっくり覚える。
そして配信当日。
初めて参加した配信は、遠い親戚の法事に来ている気分だった。予習したはずなのにいざ実践してみるとなると”作法”が分からない。
初めて来た時には何とコメントを打ったらよい?
どのタイミングでスタンプ(投げ銭)を投げるのが良いのか分からない。
このアプリは投げ銭を送ると画面上にエフェクトが出るタイプのようだが、
変な所で投げて配信者が隠れてしまうと迷惑が掛からないだろうか?
お焼香の如くひたすら周りの出方を伺う。
そして、スタンプのランクがある。金額がある。
私の悩みは、完全にご祝儀のそれになる。
少なすぎたら失礼では?
多すぎたら引かれるのでは?
推し活のはずが、マナー講座に迷い込んでいる。
気弱なタイガーマスクである。
ファンダム太郎
そんな中、彼女がコメントでふとこう言った。
「なんか今日、太郎っていう名前の人多いね」
その時はまだ配信の序盤で、同接数も一桁くらいだったはずなのに、なんと私みたいな「◯◯太郎」形式
が、私含め3人くらいいるのだ。
奇跡の被り方である。
もちろん他の太郎たちとは知り合いではない。
そういえば、以前聞いたことがある。
推し活には“ファンダム名”という文化があるらしい。
熱心なファンの集まりを総称する名前だ。
BTSなら「ARMY」
King & Princeなら「ティアラ」
サカナクションなら「魚民」
このままではhikaruさんのファンの総称が、
「太郎」になってしまうのでは?
まずい、流石にダサすぎる。
そんなラーメン屋みたいな呼称。
ごめんよhikaruさん。
私はただこっそり陰から応援したかっただけで、
まさかこんなイカれたファンダムを爆誕させるつもりはなかったんだ。
しかも”太郎”は私が適当に後付した部分である。
ツイート主の責任には出来ない。
10:0で私の過失だ。
肝心な所で自分の適当さが仇になり、
図らずとも名が体を表してしまった。
……と、ここまで大騒ぎしたが、
私の心配はだいたい杞憂に終わった。
彼女はコロナ明けのタイミングで海外へ旅立ち、
今も船で世界を回り、そして先日、ついに自身がメインとなったショーを見事大成功させている。
ただ、たまに思う。
あの時、同じ配信にいた太郎たちは、
今どうしているのだろう?
きっと私と同じように、ひっそり陰ながら彼女の活躍を喜んでいると思いたい。
