障害者雇用の一歩目は、求人を出すことではありません
この記事は、障害のある当事者の方をはじめ、障害者雇用に取り組む企業の経営者、人事・総務担当者様、そして障害者雇用にかかわるすべての方に向けて書いています。
◆「まず求人を出す」前に、考えてほしいこと
障害者雇用を始めようとすると、多くの企業は最初にこう考えます。
「ハローワークに求人を出せばよいのか」
「どんな人を採用すればよいのだろうか」
「どの仕事を任せればよいのか考えなければ」
「うちには、そのような仕事はあるのか」
もちろん、求人や採用は大切です。
しかし私は、障害者雇用を考えた時の一歩目は、求人を出すことではないと考えています。
本当に最初に見るべきなのは、職場の中です。
・自社の中に、任せられる仕事があるとすれば何だろう。
・短時間から始められる業務はあるのか。
・誰が日々の対応を行なうのか。
・本人が困ったとき、誰に相談できるのか。
・職場に担当者を置けば、それで大丈夫なのか。
このような準備をしないまま採用に進むと、本人も企業も苦しくなります。
◆「うちには難しい」は、諦めではなく出発点
最近、経営者や社労士の方と話していて、よく聞く言葉があります。
「障害者雇用は必要だと思います。でも、うちの会社では難しいでしょう」
以前なら、私はこの言葉に対して、何とか前向きに考えてもらおうとしていたかもしれません。
しかし今は、少し違う受け止め方をしています。
「うちには難しい」という言葉は、必ずしも後ろ向きな言葉ではないと思うようになっています。
・現場に負担をかけたくない。
・本人が活躍できる仕事があるかの不安。
・職場内で問題が起きたときに、きちんと対応できるか不安。
・管理者や担当者に負担が集中するのではないか。
そうした現実的な心配があるからこそ、簡単に「雇用しよう」と言えないのだと思います。
だからこそ、私は思います。
障害者雇用は、いきなり採用から始めなくてもいい。
まずは、自社が受け入れられる状態にあるのかを見直す(確認する)ことから始めればよいのです。
◆採用前に見るべき5つのこと
障害者雇用を始める前に、企業が確認すべきことがあります。
1つ目は、任せられる仕事があるかどうかです。
ただし、「一人分の仕事」を探す必要はありません。
まずは、今いる社員が少しずつ抱えている小さな業務を見つけることです。
清掃、整理、補助作業、入力、確認、準備、片づけ。など
それ単体では小さく見える仕事でも、集めれば一つの役割になることがあります。
2つ目は、その仕事が雇用する障害のある方の特性に合うかどうかです。
障害名だけで判断するのではなく、どのような環境なら能力が発揮できるのか。
人との関わりが多い方がよいのか、少ない方がよいのか。
一度に複数の指示を受けると混乱しやすいのか。
見通しがあると安心して働けるのか。
このようなことを見なければ、採用してから「思っていたのと違う」ということが起きやすくなります。
3つ目は、現場の担当者を決めることです。
障害者雇用は、人事や社長だけで完結しません。
毎日関わるのは、現場の社員です。もし担当者が不在でも、サブでは誰が担当するのか。そこまで決めておくとよいと思います
・誰が声をかけるのか。
・誰が仕事を伝えるのか。
・誰が小さな変化に気づくのか。等々
ここが曖昧なまま始めると、結局、親切な社員や責任感の強い担当者だけに負担が偏ります。
4つ目は、困ったときの相談先のルートを決めておくことです。
本人が困ったとき、会社に直接言えるとは限りません。
「迷惑をかけたくない」と思い、黙ってしまうこともあります。
一方で、会社側も困ります。
どこまで聞いてよいのか。
何を配慮すればよいのか。
生活面や体調面にどこまで関わってよいのか。
このとき、社内だけで抱え込むと、本人も会社も疲れていきます。
5つ目は、採用後の見守りです。
障害者雇用は、採用した日がゴールではありません。
むしろ、採用後の30日、60日、90日に何が起きるかが大切です。
最初は頑張れていても、少しずつ疲れが出ることがあります。
仕事に慣れた頃に、人間関係の悩みが出ることもあります。
本人は大丈夫と言っていても、表情や勤怠に変化が出ることもあります。
そこを早めに見つけられるかどうかで、定着は大きく変わります。
◆働くことは、本人にとって「役割」を持つこと
障害者雇用を考えるとき、企業側はどうしても「対応できるか」「職場に負担が増えないか」に目が向きます。
それは当然です。
しかし、本人にとって働くことは、単に賃金を得ることだけではありません。
・働くことで、自分が社会の中にいると感じる。
・誰かの役に立っていると感じる。
・自分にも役割があると感じる。
これは、福祉の現場で多くの方と関わってきた私自身も、何度も感じてきたことです。
だからこそ、企業にお願いしたいのは、特別なことをしてください、ということではありません。
当事者本人が会社の中で、どのような役割を持てるのか。
どの仕事なら力を発揮しやすいのか。
どのような関わり方なら、本人も現場も無理なく続けられるのか。
そこを一緒に考えることです。
◆安心雇用パートナーズ(AEP)は、採用前から一緒に考える外部パートナーでもあります
AEPは、障害者雇用を「採用して終わり」にしないための外部パートナーです。
ただし、本人の代理人として企業と交渉する立場ではありません。
企業の代わりに本人を説得する立場でもありません。
雇用判断や労務判断を代行するものでもありません。
役割は、もっと現実的です。
会社の中にどのような業務があるのか。
どの仕事なら切り出せる可能性があるのか。
職場の負担はどこに生まれそうか。
本人が困ったとき、誰がどう受け止めるのか。
就労支援機関や専門職と、どのように連携していけばよいのか。
こうした採用前後の不安を、企業と一緒に言葉にしていきます。
障害者雇用に必要なのは、完璧な準備ではありません。
大切なのは、わからないことをわからないままにせず、早い段階で相談できる相手を持つことです。
◆パートナーシップとしての障害者雇用
私は、AEPを単なる外部サービスとして使ってほしいとは考えていません。
目指したいのは、企業とのパートナーシップです。
企業は、働く場を持っています。
仕事があります。
地域の中で人を雇い、育て、事業を続けています。
そして、利益を上げていかなければなりません。
一方で、AEPには、福祉現場で人の生活や意思決定、働きづらさに関わってきた経験があります。
この二つをつなげることで、障害者雇用は「義務への対応」だけではなくなると考えています。
もちろん、すべてが簡単に進むわけではありません。
採用してみなければわからないこともあります。
職場に入ってから見えてくる課題もあるでしょう。
だからこそ、一社で抱え込まないことが大切です。
経営者が一人で悩まなくていい。
現場の担当者が一人で背負わなくていい。
本人が一人で我慢しなくていい。
そのために、外部の視点を入れる。
それが、AEPが提供したい価値です。
◆最後に
障害者雇用の一歩目は、求人を出すことではありません。
まずは、自社の中に、受け入れられる可能性があるかを見直す(確認する)ことです。
任せられる仕事はあるか。
短時間から始められる業務はあるか。
現場の担当者は決まっているか。
困ったときの相談先はあるか。
採用後に見守る仕組みはあるか。
これらを確認するだけでも、障害者雇用は少し現実的になります。
「うちにはまだ難しい」
そう感じる企業ほど、いきなり採用に進む必要はありません。
まずは、何が不安なのか。
どのようなことならできそうなのか。
どこに外部の力が必要なのか。
そこから一緒に考えていく。
AEPは、障害者雇用を始めたい企業、若しくは増員を考えている企業にとって、採用前から相談できるパートナーでありたいと考えています。
