デリコちゃんは愛さない 第1話 「まだ登場しないのよね」
あらすじ
「ラブスキル」
それは恋を叶えるための力。
世のすべての女の子が持つ特殊能力。
「不思議とモテる子」
「妙に勘のいい子」
「突然キレイになる子」
それらすべては、ラブスキルのなせる技!
ただし、持てるのは 1人1能力まで。
それぞれの能力を駆使して、秘めたる欲求を掴み取れ!
……欲求がかぶったら?
ラブスキル同士の戦い
「ラブバトル」に発展する!
ストレスをぶつけ
ヒステリーを撒き散らし
血で血を洗う決闘が今!幕をーー
「…私の平穏乱さないでくんない?」
暴走したラブスキルを(しぶしぶ)止めるため、「スキルの強制解除」能力者。
デリコちゃん(主人公)は今日も行く!
……
「あ、あのすいません…本文に僕の説明が無いような…あ、僕、一応メインキャラの空野とおーー」
【あらすじ以上 以下本文です】
自分が平々凡々な人生を送っているという自負があった。
「ふざけんなぁぁ!」
そしてそれはおごりだったと今気づいた。
「こっちのセリフなんだけどぉぉ!」
目の前で突然始まった派手な口喧嘩に、僕は呆然と立ち尽くした。
放課後夕暮れ。一人で居残り掃除をしていた倉庫の扉が乱暴に開き、二人の女生徒がほとんど掴み合いをするような勢いで乗り込んできた。彼女たちは呆気にとられる僕を尻目に、真っ向から言い争いを始めたのだ。
「自分が悠馬君に誘われといて"美香も一緒に行く?"じゃねえんだわ!なにあれマウントとってるわけ!?」
「マウントぉ?あれのどこが!?そういうあんたは"今日も木下君からメール来たよ”報告。まじでいらんからぁ!」
どうやら、恋愛のトラブルらしい(もちろん僕は当事者では無い)。女の子の喧嘩を見たのは初めてだったが、ここまで激しいものかと気圧される。
そこでふと、言い争いを続ける二人に見覚えがある事に気づいた。彼女達は同じ学年、それもかなり仲の良い者同士だったはずだ。
快活な長身ショートヘアの子と、それに反して小さくおとなしそうな女の子が、寄り添って楽しそうに話しているのを廊下でよく見かけた。
その二人が今や仇敵に出会ったかのように罵り合っている。その声は狭い倉庫に反響し、ぐわんぐわんとまるで獣の鳴き声のように響き、妖しさを増していく。
「自分から話しかけて親友みたいニできるノ羨ましいし木下君はスゴク楽しそうダシそれなのにワタシの事まで気にかけチャってサナニサマナノヨ――」
「ナニヨできないフリして悠馬くんに助けラレちゃってさ女の子扱いサレテうれしいネわたしはワタシハソンなのデキナイノニ――」
(お、おかしい。これ、ただの喧嘩……じゃない!?)
もはやろれつも回らず、会話にもなっていないが、それでも口だけがせわしなく動き続け、しゃべり続けている。
常識すらも打ち壊してしまうのが恋愛なのかもしれないが、この状況はあまりに常軌を逸している。
「ナニヨ!美香なんて、美香なんて……」
「私だって最初っカラ、根暗なアンタナンカ……」
二人は今から自分から放たれる言葉に一瞬ためらう仕草を見せた後、同時に言い放った。
「大っ嫌い!!」
変化は突然だった。
さっきまで間断なく動き続けていた彼女達の唇の動きが止まり、互いを睨み合ったまま制止する。
だが、言い合いはそのまま継続している。いや、むしろさらに大きく激しく室内に響き渡る。
訳がわからずに向けた視線の先、奇妙な物が目に入った。
彼女達頭上ー―何かがいる!

