帰国した父は、日本のワイン売り場に驚いた
※この記事は「銀座ワイナックス創業ストーリー」第2話です。
第1話はこちら → 一人の留学生がドイツワインに人生を捧げるまで
前回の記事では、父がドイツ留学中に出会った一本の古いミュラー・トゥルガウについて書きました。
そのワインは父に、
「ドイツワインは熟成する」
ということを教えてくれました。
しかし、8年間のドイツ生活を終えて日本へ帰国した父は、ワイン売り場を見て驚きました。
そこに並んでいたドイツワインの多くは、リープフラウミルヒに代表される安価な甘口ワインや、一部のリースリングのみだったのです。
けれど父がドイツで出会ったワインは、それだけではありませんでした。
辛口のグラウブルグンダーやヴァイスブルグンダー、華やかなゲヴュルツトラミナー。
そして何十年もの熟成を経て、美しく変化するワイン。
ドイツには、日本で知られていた以上に豊かなワイン文化がありました。
「本物のドイツワインを日本へ伝えたい。」
そう考えた父は、まずドイツワイン専門書の翻訳に取り組みます。
ですが、やがて気づきました。
ワインは、本を読むだけでは伝わらない。
飲んでこそ分かるものだ、と。
「それなら自分で輸入しよう。」
こうして1984年、株式会社ワイナックスが誕生しました。
創業以来、父が変わらず続けてきたことがあります。
生産者を訪ね、自ら試飲し、本当に心を動かされたワインだけを選ぶこと。評価点や流行ではなく、自分の舌で納得したものを届ける。
その姿勢は42年経った今も変わりません。
そして、もう一つ。
父には譲れない考えがありました。
それが「熟成」という価値です。
当時でも、高級甘口ワインの長期熟成は知られていました。
けれど父が興味を持ったのは、カビネットやシュペートレーゼのような、一般的には若いうちに楽しまれるワインでした。
「今でも美味しい。でも、もっと美味しくなるかもしれない。」
留学時代に出会った熟成ワインの記憶を信じ、父は低温定湿の自社倉庫を建て、実験的な熟成を始めました。
ーーそれから30年以上。
現在も倉庫には、1980年代から眠り続けるワインが数多くあります。
お客様から
「こんな古いドイツワインは初めて見た」
と驚かれることも少なくありません。
ですが、それらは最初からヴィンテージワインとして仕入れたものではありません。若い頃から見守り続けてきたワインたちです。
あの時の小さな実験の結果はどうだったのか。
その答えは、今もグラスの中にあります。
***
新橋店では、自社倉庫で長期熟成させたワインをグラス提供しています。ご興味がありましたら、その続きを味わいにいらしてください。
ヴィンテージワインが楽しめる立ち飲みワインバー
【第1話】一人の留学生がドイツワインに人生を捧げるまで
【第2話】帰国した父は、日本のワイン売り場に驚いた
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