【中国の工場が冷え、ASEANが加速する】ASEANの工場が過去最高に熱い日、中国は2ヶ月連続で冷えていた PMI53.8が映す製造業の引っ越し #ASEAN #PMI #チャイナプラスワン #製造業 #中国経済
🔥 中国の工場が冷え、ASEANが加速する──PMI「53.8」が示す製造業の地殻変動
3月に入って、ようやくストーブの火力を一段落としました。
こんにちは、ポス鳥です。
窓の隙間から入る風に、わずかに土のにおいが混じっている。
富山の春は、こういう匂いから始まります。
今朝、味噌汁をすすりながらスマホを開いたら、こんなDMが届いていました。
📨【読者からの質問】
ASEANのPMIが過去最高って記事を見たんですけど、そもそもPMIって何ですか?
あと中国から工場が東南アジアに移ってるって聞くんですけど、日本企業にとっては良いことなんですか?
いい質問です。
そして、答えは一言では終わりません。
結論から申し上げます。
工場の引っ越しは、本当に起きています
ただし、引っ越し先にも「当たり」と「ハズレ」がある。
しかもこの「引っ越し」の背景には、中国政府が日本企業 40社 に制裁をかけたという、かなりきな臭い話がある。
さらに、いま中東で起きている戦争が、この追い風を止めてしまうリスクも見えている。
味噌汁がもう一杯分あります。
最後までお付き合いください。
🔥 第1章:PMI「53.8」──工場の体温計が過去最高を示した
⚡ そもそもPMIって何ですか
朝食の味噌汁を持つ手が、まだ温かい。
器の熱が、指先からじんわり伝わってくる。
ちょっと贅沢に豆腐を多めに入れた朝です。
でもこれから話す数字は、贅沢とは正反対の、かなりシビアな話になります。
まず、DMにあった「PMIって何ですか」にお答えします。
PMI、正式には Purchasing Managers’ Index といいます。
日本語にすると 購買担当者景気指数 ですが、この名前だけ聞いても何のことやらですよね。
ちょっと立ち止まって、生活の言葉に直します。
あなたが工場の「仕入れ係」だとします。
景気がいいときは、注文がたくさん入る。
だから材料をどんどん仕入れて、人も雇って、残業もする。
逆に景気が悪いと、注文が減って、仕入れも減らす。
人を雇うのも控えます。
PMI(購買担当者景気指数)は、この「仕入れ係」への毎月のアンケートです。
「先月より忙しくなった? 変わらない? 暇になった?」
その答えを数字にしたもの。
ここが大事です。
PMI(購買担当者景気指数)は 50が基準点 。
50を超えていたら「先月より工場が忙しくなっている」
50を下回っていたら「先月より暇になっている」
体温で言えば、50が36.5度。
50を超えたら少し熱が出ている──つまり経済が「熱を持っている」
50を下回ったら体が冷えてきている──つまり経済が「冷え込んでいる」
あなたもこの体温計、覚えておいてください。
これからずっと出てきます。
💰 ASEAN、過去最高の「53.8度」
では、その体温計で東南アジアの製造業を測ったらどうなったか。
2026年2月、ASEAN(東南アジア諸国連合)全体の製造業PMI(購買担当者景気指数)は 53.8 でした。
以下がその一次ソースです。
📰 S&P Global(2026年3月3日)
「S&P Global ASEAN Manufacturing PMI」
※ ASEANの製造業PMIが2012年の調査開始以来、過去最高の53.8を記録したと発表したレポート
📍 メディア傾向: 米国の金融データ大手。政治的には中立。PMI(景気指数)の一次データ提供元で信頼性が高い。
URL:
https://www.pmi.spglobal.com/Public/Home/PressRelease/992a834a4a394897b75a2a744cde4f30
53.8。
体温計でいえば37.8度くらいの感覚ですかね?
病気の熱ではなく、全力で走ったあとの「いい汗」の体温。
……どうですか、この数字だけでもう「ただごとじゃない」と感じませんか。
S&P Global(※金融データの世界大手。株価指数のS&P500を作っている会社です)のエコノミスト、マリヤム・バルーク氏はこう言っています。
「新規受注が過去最高の伸びを記録し、生産も同等のペースで拡大した」
ようするに、 注文が殺到して、工場がフル稼働している という状態です。
しかもこれは
2012年に調査が始まって以来、一度も見たことのない高さ 。
過去最高記録です。
ここで1つ、この章で持ち帰ってほしい数字があります。
「新規輸出受注」
4ヶ月ぶりに上昇に転じて、 4年ぶりの伸び率 でした。
4年前の2022年は、コロナ後のサプライチェーン混乱がピークだった時期です。
あの頃は「モノを作っても船が来ない」「港にコンテナが詰まって動かない」という異常事態でした。
それ以来、輸出の新規受注はずっと低調だった。
それが今回、ようやく2022年のピーク並みに戻った。
これ、平たく言うとこうなります。
外国からの「うちの国で作ってくれ」という注文が、コロナ混乱以来で最も勢いよく増えた ということ。
主な注文元は米国と欧州です。
米国は中国製品への関税を引き上げ続けており、その代替としてASEAN製品の需要が増えている。
欧州もサプライチェーンの見直しを進め、中国以外の調達先を拡大している最中です。
要するに、注文が増えた理由は「ASEANが急に上手くなった」からではない。
中国に注文しづらくなったから なのです。
あなたの町のラーメン屋に、急に隣町から出前の電話が殺到した感覚に近い。
嬉しい悲鳴です。
でもなぜ急に?
隣町の大きな中華料理店が、最近ずっと休業しているからです。
お客さんは「ラーメンが食べたい」のであって、「この店じゃなきゃダメ」とは思っていない。
作ってくれる店があるなら、そっちに電話する。
その「隣町の中華料理店」が何を指すかは、第3章でもう少し奥まで踏み込みます。
🎯 同じ日、中国は「49度」だった
素晴らしい数字です。
では。
同じタイミングで、中国はどうだったか。
中国の公式PMI(NBS=中国国家統計局の調査)は 49.0 でした。
📰 CNBC(2026年3月4日)
「China’s factory activity slumps more than expected in February」
※ 中国の公式製造業PMIが2ヶ月連続で50を下回り、予想も下回ったと報じたニュース
📍 メディア傾向: 米国のビジネスニュース大手。やや中道左寄り。経済・マーケット報道に強い。
URL:
49.0。
繁盛していた食堂のランチタイムに、いつもの行列がすこし短くなった感覚です。
しかも 2ヶ月連続で50を割っている 。
……ASEANが53.8で「過去最高」を記録しているとき、中国は49.0で 2ヶ月連続の冷え込み 。
あなたの通勤路で考えてみてください。
いつも混んでいた大きな駅の乗降客が減っている。
そのかわり、隣の小さな駅が急に混み始めている。
人の流れが「乗り換わっている」感覚。
工場の体温が、中国からASEANへ移動している 。
ただし、ここで「中国はもうダメだ」と言い切るのは早すぎます。
実はもうひとつ、民間の調査があるのです。
S&P Globalが実施した「Caixin(財新)中国製造業PMI」は 52.1 。
Caixin(財新)というのは中国の民間経済メディアで、独自に購買担当者調査を行っています。
日本でいえば、日経新聞が独自に企業にアンケートを取って景気判断を出しているようなイメージです。
この52.1は2020年12月以来、 5年2ヶ月ぶりの高水準 です。
何が起きているかと言うと、こういうことです。
中国政府の調査(NBS=中国国家統計局)は大企業3,000社以上を対象に月末に実施します。
2月は旧正月(春節)の休みが最長の9連休だったため、工場が止まっていた時期とモロに重なった。
一方、民間のCaixin(財新)調査は輸出志向の中小企業を中心に月の半ばに実施される。
こちらは春節前の「駆け込み生産」を拾っているので、高く出た。
ひと言で言えばこういう意味です。
中国経済は「全体が沈んでいる」のではなく、 休み明けの大企業は寝ぼけているが、輸出系の中小企業は元気 という、まだら模様。
元気な部門もあれば、寝ぼけている部門もある。
ただし、どちらの数字を見ても、ASEANの53.8には及ばない。
この差が、いま世界の製造業で起きている「地殻変動」を映しています 。
✅ 第1章の小まとめ
🌡️ PMIは工場の体温計 ──50が平熱、それより高ければ好調、低ければ冷え込み
🏭 ASEANの製造業PMIは53.8で過去最高 ──新規受注もコロナ混乱以来で最大の伸び。注文増の主因は「中国に注文しづらくなった」こと
🇨🇳 中国公式PMIは49.0で2ヶ月連続の冷え込み ──ただし民間Caixin調査は52.1と好調で「まだら模様」の実態
🔄 工場の体温が中国からASEANへ移動 ──この構図が数字で裏付けられた
この「体温差」の中身を、次の章で国ごとに開けていきます。
⚔️ 第2章:勝ち組と負け組──7カ国のPMIを並べてわかること
🏰 国ごとの体温を測ってみる
ストーブを完全に消しました。
燃焼音がなくなると、部屋が急に静かになる。
この「音が消える感覚」──実はASEAN(東南アジア諸国連合)の中にも、工場のラインが止まりかけている国があるのです。
ASEAN全体のPMI(購買担当者景気指数)は53.8。
でもこれは7カ国の加重平均です。
国ごとに見ると、景色がまったく違う。
先に比喩で構造を見せます。
同じ商店街でも、行列ができている店と、シャッターを半分閉めかけている店があったりもしますよね?
ASEANの製造業も、いまそういう状態です。
……想像してみてください。
あなたが商店街の組合長だとして、「うちの商店街、売上過去最高です」と発表する。
でも実際には5軒が大繁盛で、1軒が赤字に転落している。
平均は最高でも、全員が幸せなわけではない 。
整理するとこうなります。
【筆者コメント】
この記事を書くのに、一次ソース突き合わせた。中国の制裁リスト、ASEANの国別PMI、中東戦争の原油インパクト、仕送り経済の脆弱性──これらが「1本の糸」で繋がっている構造です。
後半では、見出しだけ読んでも絶対に見えない。コーヒー1杯分の時間で、全部使える話をお渡しする形です。それでは続きをどうぞ。
【ここから先は、有料会員限定のコンテンツです】
【こんな人におすすめ】
自分の持ち株が中国リスクにどれだけ晒されているか、具体的に確認したい投資家
「チャイナ・プラスワン」を聞いたことはあるが、どの国が"当たり"でどの国が"ハズレ"かの判断基準を持っていない人
日経新聞やNHKの経済ニュースを見ても「で、自分はどうすればいいの?」が分からないビジネスパーソン
ASEAN関連の投資信託やETFを検討しているが、国別のリスク差が見えていない人
中東戦争の影響が自分の生活コストにどう跳ね返るか、数字で把握したい人
【本文予告】
ASEAN7カ国のPMIを並べた「残酷な通信簿」──フィリピン8年ぶり高水準の裏側と、マレーシアが「200円皿」に転落した構造
中国の日本企業40社制裁から始まる「チャイナ・プラスワン」の実態──年間48兆円の日中貿易を切れない理由と、それでも工場が動く力学
原油82ドルとフィリピンGDPの9.3%を支える仕送り経済──PMI53.8の「足元」に忍び寄る2つの逆風
私たちを応援していただけませんか?



私たちのメンバーシップに加入していただけないでしょうか?ご興味ある方は、ぜひ以下ボタンからどうぞ。
月500円と、月980円の2コースあり。読み放題!初月無料・解約縛りなし!かなりお買い得だと思います!

ここから先は
この記事は noteマネー にピックアップされました

