【中学受験小5】父子バトル、からの父と息子の温度差
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その日の朝、珍しく息子と夫が険悪になっていた。
事の発端は、玄関に置きっぱなしのリュック。
「片付けろ!」
夫の一言に、息子がへそを曲げた。
片付けろ、片付けないの押し問答が始まった。
私と息子が揉めるのは、ある意味いつものことだ。
揉める内容も落とし所も、コントのように先が読める。
しかし、夫と息子のケンカは、流れが見えない。
夫が「片付けろ!」と言うたび、息子はますます頑なになり、返事すらしなくなっていく。
見ている私が苛立ってくるほどの頑固ぶりだった。
夫の血圧も、明らかに上がっていくのがわかった。
結局、夫は「帰ってくるまでに片付けておくように」と言い捨てて、出かけて行った。
いつもこうだ。
へそを曲げた息子の頑なさに、私もほとほと困っていた。
とはいえ、ここまで意固地になるからには、息子なりの言い分はあるはずだ。
それが正しいかどうかは別の話で、だからこそ厄介なのだが…。
取り残された部屋で、私は息子の様子をうかがった。
耳まで真っ赤になりながらも、机には向かっている。勉強している姿勢だけは、崩さない。
「……終わったらご飯にしようか」
静かに声をかけると、息子がこくりと頷いた。
これはいけるかもしれない。
「リュックも片付けるもんね」
優しく重ねると、今度は大きく頷いた。
片付けなければいけないことは、本人が一番わかっている。
ただ、頭ごなしに言われて反発した手前、後には引けなくなっていただけなのだろう。
リュックのせいでケンカしているように見えて、息子にとっては、男と男のプライドがかかった一戦だったのかもしれない。
一方、仕事先の夫からは「もうあいつは知らん」とLINEが届いた。
言葉とは裏腹に、どこか自己嫌悪の匂いがした。
その日は、帰りの遅い夫と息子が顔を合わせることはなく、そのまま翌朝になった。
起きてきた息子は、何事もなかったように夫に言った。
「お父さん、今日はお休みなんだよね?」
「……今日も仕事なんだよ」
そこまでは、いつも通りだった。
しかし、夫はそのあとに続けた。
「お父さんと一緒にいるのは嫌なんだろ……」
引きずっていたのは、息子ではなく夫の方だった。
私と息子なら、ケンカして落ち込んでも、最後はハグをして終わる。
何度繰り返しても、だいたいは同じ手順で仲直りしてきた。
しかし、夫と息子のケンカは一筋縄では行かない。
ハグひとつで済ませられない年頃の息子と、それを持ちかけることもできない夫。
男同士は、どうやらそう簡単にはいかないらしい…。
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